回想録1:緑と白の憎いヤツ
勇者が異世界で暮らしていた1年間のエピソードを思いつくまま。
本編よりさらに短いですが許してね。
タイトルロゴできました。
「私の声を録音、ですか?」
基本的にいつもは勇者様の作る魔道器の試運転に付き合わされる程度の私ですが、
今回は珍しいことに完成前から声をかけられました。
なにやら、唄う楽器がテーマとのことです。
「いやあ、最初は自分の声入れてテストしてみたんだけど、
やっぱ可愛い女の子の声の方がモチベ上がるじゃない?」
「え、かわっ、可愛い?」
直球で褒められると照れるじゃないですか。
「・・・あ、うん、声は可愛いから」
あまり褒められていませんでした。
その余計な一言は心の中で止めておいて欲しかったです。
せっかく喜んだのに台無しだわ。
異世界では自分の好きなように歌声を出してくれる
仮想世界の女の子(少ないですが男の子も)がいるそうです。
さすが勇者様のいた世界。
おかしなことを考える人たちばかりのようです。
その日、私の声の録音作業は夜遅くまで続きました。
これも彼が作った外に声を漏らさない魔道器らしいんですけど、
箱の中に顔を突っ込んで1人でしゃべるのって
外から見たらかなり異様よね・・・。
翌日。
「じゃじゃーん、そして完成したものがこちらになります」
え?どう見ても楽器には見えないものが出てきましたが。
枝?草ですか?緑と白のツートンカラーで細長い筒のような。
「あ、ネギってこっちの世界にはないのかな?」
ねぎ?なんですかそれが楽器の名前なんでしょうか?
「ネギっていうのはあっちの世界の野菜の名前なんだけど」
野菜ですか。なんでそれが楽器になるんですか。
「食べるだけじゃなくて振る人もいるよ。
でも今回は楽器なので笛にしてみた」
説明されてもさっぱり意味が分かりません。
今に始まったことではないですけどね・・・。
ねぎ、の緑色側を口元にはこび、すう、と息を吸い込む彼。
そして流れるのは確かに私の声・・・だ、けど?
「すみません勇者様、
確かに音楽が私の声で演奏されているみたいなんですけど
さっぱり歌詞がわからないんですが何語ですかこれ?」
「この音楽データは日本語、
つまり俺が元いた世界の言葉で作った、けど・・・。
あ、そうかこれ翻訳されないのか!しまった!」
翻訳魔道器、あくまでも勇者とその会話対象にしか効果がありません。
つまり、勇者様が作ったものから出た元の世界の言葉は
翻訳されず、その音のまま伝わるということですね。
「別に声じゃなくて普通に笛の音出せばいいじゃないですか」
「いやですよ、そんな普通のもの作ってどうするんですか」
ううん、「ねぎ」という野菜の笛である時点で普通じゃないと思うわ・・・。
書いてる自分でも意味が分からない話になってしまった。
実際に友人が作った作品をネタに組み込んでみよう、という企画。
ちょっと、いやだいぶ失敗!