表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

明日死んで異世界に転生するとして、今日俺は最期に何をする?

作者: 白雲糸

母親は俺が3歳の時に出ていった。父親の事は何も知らない。

15の夜、高校受験を目前にたった一人の家族だった祖母が死んだ。

突然の事だった。俺がいつも通り普通に帰って、いつものように言った、ばあちゃん、今日の晩飯何?っていういつもの問い掛けに、返ってくる言葉は無かった。

葬式とかそういった事は、俺には分からないから、親戚が全部やってくれた。

俺の今後について、式の後に話し合われたらしい。

とりあえず話がまとまるまで、俺は、祖母と暮らしていた部屋に帰る事になった。

12年祖母と過ごした、1Kの小さい部屋だった。

俺は覚えて無いけど、ここに来たときは、ママ、ママと言ってよく泣いていたらしい。

忘却に支配された部屋で、不意に一筋、涙が流れた。

突然の事で、次々に事が運んでいき、疲れきって帰ってきて、葬式の間は一度も泣けなかったのに、涙が止まる事がなかった。

いつの間に寝てしまったのか、その晩、ばあちゃんが夢に出てきた。

ばあちゃんが言うには、俺は明日事故で死ぬらしい。

ばあちゃんは、あの世でその事を知って、俺になんとか伝えたくて夢枕に立ったらしい。

ばあちゃんは、俺に何度も謝ってきた。

高校に行かせてあげられなくてごめんね。

一人にしてしまってごめんね。

贅沢させてあげられなくてごめんね。

何も言えずに逝ってしまってごめんね。

助けてあげられなくてごめんね。

俺の方こそ、ばあちゃんが苦しんでいるのに、間に合わなかった。

遊んでないで、もっと早く帰れば助けられたかもしれない。

もっと、ばあちゃんの事大切にしていたら、こんな事にならなかったかもしれない。

俺が生まれなければ、ばあちゃんはもっと長生き出来たかもしれない。

それでも、俺が居て幸せだった、そう言ってくれる、ばあちゃんがいて、俺は幸せだった。

明日、俺は死んでしまう。

それは変えられない運命だと言う。

それでも俺は、ばあちゃんに愛されて、最高の人生だったと言える。

また、いつか会えたら良いね。

そう言った俺に、優しく笑ってくれるばあちゃんに、手をのばした所で目が覚めた。

俺は、明日死ぬかもしれない。

夢の事だから、明日になってみないと本当の事は分からない。

死んだとして、もしかしたら、今流行の、異世界に転生してハーレムライフ、なんて事もあるかもしれない。

明日にならないと分からないけど、神様、どうせなら、俺がばあちゃんを幸せにする世界の主人公にして下さい。



俺は、その日の内に、ばあちゃんとの想いでの部屋を片付け、次の日に、葬式で初めて会った親戚に引き取られた。

ばあちゃんや、俺の母親の悪口ばかりを言う、その家を飛び出し、異世界転生を夢見て、踏み切りを越え電車に飛び込んだ。

こんな俺の事を世間は何と言うだろう。

若くして自ら命を絶った、バカな若者と哀れむのだろうか。

電車のダイアを乱した迷惑な奴と蔑むのだろうか。

何と言われようと、ただ、俺は、もう一度ばあちゃんに会いたかったんだ。

もっと一緒に居たかったんだ。


異世界転生なんて、そん事、あるわけ無いと分かっていても。


-END-


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ