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3/3

彼女の為に自爆してみた

続編です、読んでみてください

プロローグ一部文章をかえました

冒険者ギルドを後にした俺は、実の処それ程落ち込んでいなかった。

その理由は、あの後の司祭から聞いた話のせいなのだ。





案内人が大笑いしながら立去った後、俺は司祭に声を掛けられた。


「司祭様……、俺は何の為に生きて来たのでしょうか?。この日を子供の頃から待ち()びていたのに、病魔を克服する能力(スキル)処か、俺についた仇名その物ではありませんか。もう生きる活力が……」


俺の止め処ない愚痴を聞いた司祭は、優しくそれを否定してきた。


「そう落ち込む必要は無い、(むし)ろ喜ぶべき能力(スキル)なのだから」


俺は司祭の言っている言葉の意味を解せないでいた。

彼は喜ぶべき能力(スキル)と言ったが、『薬物依存』とは俺の生きて来た人生その物を刺している。それの何処をどう喜べと言うのだろう?。


「スキル『薬物依存』とは、飲んだ薬の効果を一時的に数百倍に跳ね上げる物で、過去に只の一人しか例がない。しかもその者は、あそこの銅像にも成っている伝説の英雄なのだからなあ」


そう言って示した先には、この国を魔から救ったとされる伝説の英雄の銅像が在った。


「俺のスキルが伝説の英雄と同じ物?」


「うむ、喜ぶべきではないかな?」





司祭の言った言葉を思い返していた。


  もし本当なら間違い無く大当たりたけど

  ひょっとしたら、司祭様が俺を励ます為にに大げさに言ったのかもしれない


そうとも取れる内様なだけに、手放しで喜んでも居られなかったのは事実だ。

まあ、司祭様が大げさ伝えただけで、嘘っパチとも思えない。

薬の効果が上昇するのなら、十分に使えるじゃないか!。



そう思い出したら何だか気持ちが晴れて行った。

冒険者の登録も済んで、能力(スキル)も無事に付与された事をアロマ達に報告に行かないと、きっと今頃はヤキモキして待っているかもしれない。





彼女の家に到着して、扉の前に立ったら中から扉が開いてアロマが出迎えてくれた。どうやら彼女は外の様子を窺っていたらしく、俺が来た事が直ぐに分かって扉を開けてくれたのだ。


「うん、その様子では能力(スキル)は良い物が付いた様ね。おめでとう」


「うん、派手な物じゃなかったけど十分に使えそうだよ」


俺の言葉を聞いてアロマは微笑んで本当に喜んでくれている。

だが、何か変な感じが彼女から伝わって来た気がして、気に成り始めた。

アロマの両親も俺の能力(スキル)が有用な物と聞いて、心から喜んでくれた。


「はい、ハリアのお祝いだからね」


小母さんは、結構な料理を卓上に並べ。

一家揃って俺の事を自分の息子の様に、祝ってくれて本当に涙が出るほど嬉しい気持ちに成れた。これで俺は、これまで受けてきた恩の少しでも返せればと、明るい展望が開けた様に感じていた。


だが、何処と無くかげりのある笑いに気に成ってはいたのだ。

その不安は、翌日に思わぬ所で耳にする事になった。




俺が何時もの様に、薬剤師から薬を貰いに行った帰り。

少々疲れたので、傍に在ったベンチに座って休憩してた時にそれは聞こえてきた。


「ねぇ、知ってる?。アロマのお父さんが金貸しに騙されて多額の借金した事」


  なに?、アロマのお父さんが借金?、そんな馬鹿な


「うん知ってる、悪徳な金貸しだったみたいね。何でも、とても普通に返せる額じゃなくてさ、アロマがその借金の肩代わりに成るとか、それってアレだよね?」

 

  借金肩に、アロマが……、馬鹿な


だがそれを聞いて納得した事がある。

昨日のアロマ一家の、得体の知れないかげりの正体は多額の借金のせいで、彼女がその肩代わりで悪徳な金貸しに身売りされる事を意味していたのだ。


露骨に人身売買は、やれる筈も無いが合法的な手段を表向きに用意しているに違いない。俺は気が動転し、居てもたっても居られなくなってアロマに逢いに行った。

丁度アロマは自宅にいて、話を聞く事ができた。


「ふぅ、聞いちゃったのね。ハリアには知られたくなかったなぁ」


「じゃ、借金の肩にされるって本当なのか?」


「ええ、本当よ。明後日にはあの嫌な金貸しの物に……」


彼女はそこで涙をこぼし、言葉を続ける事が出来なくなってしまう。


  そんなぁ、アロマが金貸しに身売りされる?

  

「アロマ、どうにかならないのかよ?」


「無理よ……、両親がギリギリまで他に借りれそうな所を当ってるけど、とても連中の要求する様な額には届かないのよ」


そこへ丁度、アロマの両親が帰ってきたが、その顔は焦燥しきった酷い顔だ。


「アロマ、済まない。心当たりを全て廻ったがとても……、私の為に本当にすま


「ごめんなさいアロマ。お父さんを許して……


そう言うと、二人とも倒れてしまい俺とアロマで両親をベッドに運ぶ事になった。

二人を運んだ後、アロマと二人きりに成ったが何て言葉を掛けたら良いのか、おれは良い言葉を見つけられずに、呆然と二人きりの時間を過ごしていた。



だがこの時に、ただ呆然としていただけじゃなく、一つの案が浮かんでいた。

長い間、俺を守り続けてくれたこの家族を汚い金貸しから解放するには。

今の俺には、思いつく物が無かった。



その方法とは爆弾を抱えた俺が、金貸しの屋敷ごと悪徳な奴和らを吹き飛ばす!。

司祭様が言った通りなら死なずに済むかもしれない。いや、仮にあれが大袈裟な事だったとしても、これ以外にアロマの家族を救う手段を俺は持っていない。


例え俺が死んだとしても、彼女達が救われるなら本望と言う物だ。

随分と過激でデタラメな方法だけど、他にやれる事も無い。


俺が無言でそんな計画をしているのをアロマは、思ってもいないだろうが。

二人で黙ってテーブルに座ったまま、朝まで一緒に居た。


途中で彼女は、睡魔に襲われて眠ってしまったが俺の方は、計画を遂行するのに必要な事を眠らずに考え、朝方早くに眠ったアロマに最期に成るかも知れないお別れのキスを頬にして、彼女の家を出た。




用意する物は簡単に手に入った。

何時もの薬剤師に頼み、一番耐久防御の上昇する薬を調合して貰い。


「ハリア君、これをどう使うか知らないけど、五割り増しの効果だからね」


「はい、それで十分です」


実際の処、『薬物依存』の効果が司祭様の言う通りとは思っていない。

肝心なのは、俺が生き残る事じゃなくて連中がこの世から消えればそれで良い。


そして爆弾の方は、闇のマーケットで簡単に手に入った。


「この起爆用の小型魔法陣に、お前さんの気を送ればドカンよっ。何を吹き飛ばすつもりかシラネェがな、距離を間違うとてめぇもおっちぬ事になるからな、精々気をつけることだ」


距離なんてどうでも良かった。

至近距離で爆発させるのに、距離もへったくれも無いのだから。




最期は最も簡単な作業が二つ残っていた。

一つは、悪徳な金貸しの屋敷を訪ねること。


「何だ貴様っ! 、何の用でこの屋敷へ来た?」


「えっと、アロマの家族が借りて要る物を返しに来ました。頭目さんに会いたいのですが?」


本来そんな用事で来る奴を警戒しないはずがないが、ここで俺の通り名が役に立った。若干の前屈(まえかが)みでやって来た薬物中毒(ジャンキー)の名は、かれら用心棒の警戒心を無い物にするのに十分な効果を発揮して、悠々と頭目に会いにいけた。


「えっとアロマの家族の借りた物を返しに来ました」


「おっ、金が出来たのか?、俺はあの穣ちゃんが良かったが。まぁ良かろう、借金を全額返して貰えるならそれも良しだ。わはははははは!」


この男が間違い無く金貸しと確認が取れた。

あとは、最も簡単な最期の作業が残るだけになった。


  アロマ……、さようなら




その数秒後━━。


大音響と供に、金貸しの屋敷は跡形も無く消し飛んだ。その轟音と、土煙は遥か遠くの街外れからも見えたらしい。







   ハ……リ……ア!



何か、遠くで声が聞こえる気がするが、あの世で誰かが俺を呼んでいる?。


   起きて……ハリ……ア!



又、声が聞こえる?、一体誰が俺を呼んでいる?。



ハリアっ!起きなさいっ━━!



むむ、今度はハッキリと声が聞こえたぞ、しかもこの声はアロマの物だ。俺が彼女の声を聞き間違う筈がないが、だけどどうして彼女の声が聞こえてくる?。


  まさかっ、彼女までが死んだ?


そう思った俺は、自分の目を開くとそこには涙を一杯に浮かべたアロマと、彼女の両親が揃って俺の傍に立っていた。



 「良かったあぁー、ハリアが生きてたぁ。うわあぁ」


彼女も両親も、ゆうれいな筈も無い。

っという事は、つまり俺も死なずにあの爆発から生き延びた。


  司祭様が俺に告げた能力(スキル)『薬物依存』の効果は本当だったのだ。


ありがとうございました

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