プロローグ
またも、怪しげな物をかきはじめてしまいました。
よろしくお願いします。
俺は今、爆弾を体に纏っている。
これからある悪徳金融会社に乗り込み自爆する為に。
俺が世話になった人達にしてやれる事は、自爆しかない。
これしか方法が浮かばないから、失敗しても人を救って死んでやろうと思った。
俺に最期迄、優しくしてくれた彼女の為に。
俺の体は先天的な超虚弱体質に生まれ付いている。
骨の許容を超えた重い物を持つと骨がポキリと折れる。
普通に歩いていても、転ぶと複雑骨折さえ負ってしまう様な異常な体質。
普通の人間では害に為りえない細菌も、致命的な症状を惹き起こしたりもする。
当然、固い食べ物は顎の骨が折れてしまう為に絶対に口に入れる事は無い。
そういう理由で俺の食事は全て流動食になる。
唯一の固い物と言えば『各種強化薬』だが、別に噛むわけではなく飲み込むだけなので、障害にならないから口にすることが可能になる。
そして致命的な事に。
原因不明のこの体質は、死ぬまで改善されない不治の病になる。
常時、各種薬を飲んで耐性を付けて措く必要があり、俺はそうしなければ生きて行けない身体に生まれてしまった。
俺の両親とも、若い時から有能な冒険者として活躍し名を馳せていた。
そんな二人の息子が生まれて、最初は周囲の期待を一心に背負っていたと聞いた。
「お前達二人の子供だぞ、勇者も夢じゃないかも知れないぞっ」
将来を期待された我が子が。
実は生きて行くことですら至難の運命を背負うと知り。
「大変申し上げ難いのですが、息子さんは超虚弱体質と診断されました。お気の毒ですが、息子さんは普通の生活を送る事は不可能になります」
「先生っ!、この子は治療すれば普通に成れますよね?」
「残念ですが、今の知識では治す事は不可能なんです。一生、薬を飲み続けて耐性を上げて措く必要があり、そうしないと生きていけないのです」
「そんな……、わあぁぁぁっ!」
俺の体質を知ると俺を連れて自殺しようとしたらしい。
深い谷へ飛び込み掛けたのを、父に取り押えられたそうだ。
「放してあなたぁ! 、この子を連れて私は死ぬんだからぁっ!」
「馬鹿っ、止めないか」
結局、その心労が祟ったせいで母は若くしてこの世を去り、父親も一人で子育てと冒険者の二つをこなしている内に、らしからぬミスから魔物との戦闘中に傷を負う。それが元で、父親も俺が年端も行かぬ時に病原菌が元で死んでしまった。
幸いにも優秀な冒険者だった両親は、俺にかなりの財産を残してくれていた。
それを目当てに近寄って来る連中も居た様だが、父親の友人がそういう輩を排除して、不埒者から俺を守ってくれていた。父の友人には一人の娘が居て幼い頃から、何時も俺の世話を焼いてくれてくれた優しい娘。
その娘の名前は、『アロマ』。
十二年の時が過ぎ、俺はこの病魔と戦って来たが一つの希望を抱いた。
それは、冒険者キルドで冒険者の登録を済ませる事だ。
冒険者に成れば、ギルドの司祭が『洗礼の儀式』を執り行ってくれる。
その儀式によって天界より一つの能力を与えられ、それに見合った初期の力が付与されるのだ。つまり与えられた能力次第では、俺の厄介窮まる不治の病を克服する事も可能かもしれない。
俺はそれに一縷の希望を託している。
有難う御座います。