58/64
第九章 慎太郎暗殺 五
「じょんならん」
様々な思いが去来する。
気を紛らわせるために、見回りをし緊張感をたもとうとしたが。なかなかうまくいかない。
「中岡慎太郎は、おれが斬るはずやったんや」
どうにか見回りを終えて、自室に戻った勘吾だが。見回りを終えた安堵感からか気が抜け。大声を出したい衝動抑えきれず。
「じょんならんッ!」
天井に向かい、あらん限りの声で故郷の讃岐言葉でしゃれにならないという旨の言葉を吐き出した。
それから、伊藤甲子太郎を局中法度にのっとって成敗して(油小路の戦い)。
またそれから、龍馬とひと悶着あったということで紀州藩が疑われて。陸奥宗光をはじめとする龍馬の同志たちが紀州藩の要人を襲撃した事件があった(天満屋事件)。
そこで、勘吾も仲間たちとともに紀州藩の要人の護衛についていた。
(中岡慎太郎を、なんで守れんかったんや!)
襲撃は失敗に終わり、陸奥宗光らは逃げて。勘吾はその背中に向かって、そう吠えたい気持ちで胸がいっぱいだった。




