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第九章 慎太郎暗殺 二

 幕府が解体されれば新選組も解散であろう。蟻通勘吾は、どうするのだろうか。

 幕府に殉じるかもしれんが、その前に、決着をつけさせてくれよと、慎太郎は祈るように心で勘吾に語った。

 ともあれ、時代が大きく変わろうとしていた。

 三百年近く続いた徳川幕府の歴史に終止符が打たれたのである。

 大政奉還は民衆も知るところとなり、一旦は惰性になりつつあったええじゃないか踊りはまた盛り上がりを見せた。

「双藤六九郎は、ようやった」

 寺田屋事件の時、龍馬は六九郎と会ってはいたが。いつの間にか姿を消していた。

 それからしばらくして、突然姿を現し。考えがあると言って、龍馬に胸の内を打ち明ければ。

「面白そうじゃな。やってみろ」

「合点だ」

 と、民衆の中に飛び込み、当時ささやかれていた「天からお札が降ってくる」という話を利用し、ええじゃないか踊りを踊らせた。

 そんな六九郎の働きを改めて感心するのであったが、彼は挨拶もなく飄然と姿を消してそのままでもあった。

「あっしは気まぐれなもんでね」

 と言ってはいたが。

「まあ、まあ、まあ。時代が大きく動く。これから面白くなるぞ」

 六九郎のやつもまあ、気まぐれに姿を見せるときもあるだろう。

 龍馬も少しばかり得意になって、このところ酒が美味い。

「慶喜公もえい人じゃ。あの讃岐もんもえいやつじゃ。六九郎も、皆えい人らあや」

 宿泊する近江屋にも馴染み。居心地もよくなっている。

 時に、十一月十五日という、龍馬の誕生日。

 夜も更け、慎太郎と酒を酌み交わす。

 慎太郎といえば、このところ郷里の土佐柏木村(高知県北川村)が恋しそうだった。恋女房をゆずとともに思い出すことが増えたと言う。

「そうじゃなあ、柏木村の、ゆず酢をかけた焼き魚を食ってみたいのう」

「お城下生まれのお前に、柏木村は合うかな?」

「馬鹿にするな。合わせちゃらあ。お前さんがいたところだ、いいところなんだろう?」

「そうだ、柏木村はいいところだ。おれは村に育てられた」

 慎太郎は懐かしそうに、嬉しそうに村のことを語る。

「……、と。酒ばっかりやのうて、もっとつまみが欲しいな」

 という時、ばたんという物音がした。

 近江屋の主人やその家族は用があるという事で外出し、他には藤吉という元力士の用心棒であった。

 それがなにかしているのか。龍馬は苦笑し、

「ほたえな!」

 と声を出した。

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