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第八章 ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃなあいかあ~ 十一

「あんな馬鹿げた踊りにおれたちが助けられたなど、考えたくもないわい」

 近藤は不機嫌であった。だが沖田は土方と同意見のようだった。

 そんな京に将軍をはじめ諸侯が集ってきている。新選組はそれらの警備にもあたった。

 将軍や諸侯、それらに仕える者たちは京のどこかで繰り広げられるええじゃないか踊りを見て。目を丸くするか、目を点にするか、いずれにしても、たまげたものだった。

 だが民衆は大挙して踊れども、一揆を起こすわけでもない。ただ踊るのみ。それならばと、下手に刺激しないために、踊ってよい場所、いけない場所の区分けをし。踊ってよい場所でのみ躍らせようという警備方針となった。

 そのやり方は功を奏し、民衆も意外にも律儀に場所柄をわきまえて踊る。

 そして。

 将軍徳川慶喜は、政権を朝廷に返す大政奉還をなす。

 新選組の隊士たちは屯所に集められて、事の次第を会津藩の使者から聞いた。

 そこで、薩長の盟約があったことを知る。

「薩摩と長州が手を結ぶなど。そんなことが……」

 切れ者の土方でさえ、薩長盟約は予想外のことだった。あれだけ敵対していたというのに。一体誰がどのようにして薩長を結び付けたのか。

「天魔か、妖魔か、あやかしが、うろついとるのか」

 それはもう人間業ではないと言う者まであった。

 だが勘吾は違った。

(中岡慎太郎と坂本龍馬、とんでもないやつらや!)

 男と男の約束と礼儀。最後まで黙ってはいたが、心のどこかで非現実的で破綻もするかもという淡い期待があった。それはほんとうに淡い期待だった。

「以後の事は追って沙汰する。それまで普段通り働くがよい」

 事の次第を話した会津藩の使者が去ったあと。騒然とするのは否めなかったが。

「落ち着け!」

 土方歳三の一喝で場は静まった。

「我らは新選組なるぞ! それを忘れるな」

 あまりのことに肉体から抜け出しそうな魂を胸の内におさめて、新選組隊士たちは愛刀の重みをあらためて味わうのであった。

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