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第八章 ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃなあいかあ~ 二

 天からお札が降ってくるという話に興じる民衆の目は、どこかぎらついて。腹をすかせた野犬のようなあやうさすら感じさせた。

 それまでは、腰に刀を差して京を闊歩する新選組をはじめとする武士らが睨みを利かせて。一定の効果はあった。

 だが、禁門の変から様子が変わりつつあった。

 今にして思えば、そのことに気付いていながら現実から目をそらそうとして、気付かぬふりをしていたのではないか。

「我々は、憎まれているな」

 永倉新八と巡回しているさなか、ぽそっとつぶやかれる言葉。

 勘吾も四六時中、緊張を感じさせられっぱなしだった。

「なんで、憎まれているのですか?」

 勘吾は思わず聞き返す。

 新選組も結当初は荒くれものの集まりで粗相も多かった。だが今は、確かに睨みを利かせてはいるが、それはあくまでも逆賊にのみであり、厳しい規律をもって自制心を働かせて。民衆に不埒を働くことはなくなった。

 それは一定の効果はあった。だがその効果が、薄れ始めているのを禁じ得ない。

「刀がものを言いすぎた」

「刀が……」

 永倉の言わんとしていることを勘吾はある程度察して、眉をひそめた。

 世の中は騒然として刃が閃いたり、弾丸も飛び交い、血もどれほど流れたことか。刀を持つ者は、それによって己の存在価値を見出しても。そうでない者にとっては、厄災でしかない。

「なにか、声が聞こえるな」

 どこかで捕り物か斬り合いでもあるのか。永倉と勘吾ともう一名の隊士は、駆け足で声のする方へ向かった。

「……!」

 角を曲がり、まっすぐ突っ走って。声の主たちの姿を見て、永倉と勘吾らは面食らって立ち止まり、

「なんじゃあこりゃあ……」

 ぽそっとつぶやくも、そのつぶやきも喧騒にかき消される有様。

「ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃなあいかあ~」

 そう言いながら、人々はもろ手を挙げて足取りも軽く踊り狂っていた。

 すでに百人近い人数が踊っているだろうか。と考えているうちに、ええじゃないかの声が広がりだすのが感じられた。

「ええじゃないか、ええじゃないか、ええじゃなあいかあ~」

「今年は世直しええじゃないか~」

「お○こに紙貼れ破れたらまた貼れええじゃなあいかあ~」

「なんやこれは!」

 勘吾は思わず愛刀・播磨住昭重の柄に手をかけたが。その手首を永倉がつかんで制す。

「早まるな。刺激すれば何をされるかわからんぞ」

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