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第七章 制札事件 四

(武市瑞山は、学のない下級武士に対してどのように帝を語っておったのか)

 新選組も荒っぽいので、人のことは言えないが。ほんとうに、武市瑞山は何を考え、教えていたのか。もしかしたら、彼らは使い捨ての捨て駒として利用されたのか。

 そういえば、仲間内から天誅の名人と呼ばれ暗殺にいそしんだ岡田以蔵という者。勘吾も叩き斬ってやると探し求めたが、ついには討てずじまいだった。ともあれ、その最期は、命を惜しみ、武士とは思えぬような無残なものだったそうだ。

 これでも、中岡慎太郎や坂本龍馬と同郷なのであるが。にわかには信じがたい。

 自分ならば、岡田以蔵のような者、信用がおけず、使わない。

 武市瑞山は立派に切腹をして果てたそうだが、その岡田以蔵なる者のことを考えれば……。

「所詮、鬼はどこまでも鬼よ」

 勘吾はいつでも飛びさせるように身構えた。

「よおし、抜いちゃれ!」

 誰かが制札に手を掛けた。その瞬間、

「ゆくぞ!」

 原田左之助は得物の槍を振るって飛び出し。勘吾らも愛刀を握りしめて続いた。

「なんなあ、新選組かあ!」

 土佐武士らは突然のことに驚きはしたが、戦い慣れてはいるようで。制札を背にし、長ったらしい太刀を慣れた手つきで抜き放った。

 新選組の隊士は他の家屋や場所にも隠れており、総勢三十六名が土佐武士八名を取り囲んだ。

「突っ切るぞ!」

 多勢に無勢、いかな血の気の多い土佐武士といえども、ここは無理をせずに切り抜けることを優先させた。

「おらおら、どけどけ!」

 長い刀がやたらめったら振り回される。その勢いはかなり強く、

「うおッ」

 己の太刀で受け止めようとして、しくじり、切っ先を折られた者があった。

 折れた切っ先は地に落ちて、月光を静かに受け止める。

 そうかと思えば、

「げえッ!」

 という悲痛な悲鳴。運の悪い者が不用意に近づき、胴に当てられてしまい、吹っ飛ばされてしまった。

「浅野!」

 勘吾が仲間の名を呼ぶが、自分にも長太刀は迫り。それをかわすので精一杯だ。

 幸い浅野は他の仲間がかついで離脱させて、目を開いて意識ははっきりしているので、傷は負ったが助かりそうだ。

「隙間を空けるな!」

 原田は叫んで、長太刀をかわしざまにその峯に長柄を当てれば、その切っ先は地を打ち。そこで生じた一瞬の隙に、槍を振り上げ、

「こなくそおッ!」

 声も槍も唸って、相手の脳天に長柄がぶち当てられれば。それはどおっと倒れて、素早く腕をねじられ、縄もかけられた。

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