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第六章 果し合い 一

 さて、大仕事をなした龍馬は寺田屋で襲撃を受けるも、幸いにして無事助かったわけだが。

 その一方で慎太郎はせっせと何か手紙をしたため、それを人に預けてどこかに届けさせた。

(慎太郎は何をしゆうがな?)

 龍馬はあざとくも慎太郎の挙動に不審なものをおぼえ、その動きを注視した。まさか裏切るはずはないが。何分堅物も堅物の男である。

 土佐にいるころ、はるか上の身分の家老が相手であろうと強い態度をとるなど当たり前だった。

 新選組の屯所においては、勘吾を名指しで指名する果たし状がもたらされて、ちょっとした騒ぎになった。

「ほんとに送ってきたんか」

 果たし状を受け取り、読んでみれば。いざ雌雄を決せん云々など、威勢のいいことが書かれている。

 このことで、勘吾は近藤に呼ばれて局長の執務室で顔を合わせた。副長の土方もいる。

「蟻通、果し合いとな。やる以上は、勝てよ」

 近藤は上座からよく張った顎の顔をうんうんと頷かせながら言う。土方も同じように、

「男と男の戦い。誇りを懸けて存分に戦え」

 そう言って勘吾を送り出した。

 相手は知られてはいない。幸いそこまで詮索されなかった。

「律儀な男だ。そんな男がおれと戦ってくれるというのか」

 武士冥利に尽きるものを覚える。

 ともあれ、支度をし、ひと休みし。夕方が指定時間なのでそれに合わせて、手荷物をさげて出れば。冷たい空気の中で眩しい夕陽は沈みながら京の街を茜色に染める。

 指定された場所にゆけば、そこは、町の小さな道場である。

 町人相手に剣術指南をし日銭を稼ぐ浪人がいたりもするが、これはその道場なのだろう。それをなんらかの伝手つてで借りたのかもしれない。

「ごめん」

 門をくぐり、戸をたたけば。小間使いらしき小僧が戸を開け、上目遣いに勘吾を見上げる。

「えろう冷えますなあ」

「昨日より寒うなるかもしれん」

「どうぞ」

 小僧は勘吾を道場に上げた。

 旧知のような挨拶は、合言葉であった。果たし状に合言葉がある旨書かれており、その通りのやりとりをして。小僧は相手が確かに勘吾であることを確認した。

 行灯がいくつか立てられ、中は思ったより明るい。これなら暗がりの中でも迷わずに決闘ができそうだ。

 と、思ったら。

 中岡慎太郎は神妙な顔をして、

「すまぬ」

 と、突然詫び出した。

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