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第五章 寺田屋襲撃 七

 たまらず勘吾はよろけ、隙をあからさまにする。播磨住昭重まで奪われるかと思ったが。そこまではされなかった。だが、よろけるあまり手から抜けるように落としてしまった。

「おお、おどれ!」

 尻もちをつくまいと足を踏ん張り、どうにか目の焦点を合わせて慎太郎の動きを察知しようとする。

「あいつ、強いな! ただものではない!」

 忠交は頭巾の武士を見て警戒心を一層に強め。外で待機する家来や捕り手に捕らえるよう命じる。

「やむを得ぬ場合は、斬ってもよい!」

「手ぇ出すな! こいつはおれが斬るんやッ!」

「黙れ、無様をさらしながら」

「……ッ!」

 勘吾の言うことなどお構いなく、忠交の家来や捕り手が頭巾の武士、慎太郎に迫る。

 どうにかめまいもおさまり、落ちた愛刀も拾い上げたが。その間に慎太郎は囲まれてしまった。

 四方から様々な得物が迫るが、それをかわしざまに頭巾から覗く鋭い目は、六尺棒を捕らえ。素早く太刀を拾い鞘に納めるとだっと駆け出して六尺棒を捕り手から奪い取り。

 ぶうんと、風音をうならせながら、捕り手を薙ぎ払う。

「なんてやつだ、ここまで強いとは!」

 忠交は目を見張らされた。新選組の隊士が殴り飛ばされてしまうだけのことはあると、感心もした。

 このにわかに現れた強敵の存在に、怖気を覚えてしまう者もいた。

「強敵現る!」

 口々に伝播されて、それは寺田屋の中にまで伝わり。

(まさか、他にも助っ人がいたら……)

 勝手な想像によって恐怖が倍増されて、動きが鈍る者まで出た。

「なんな?」

 相手方の動きに変化が生じ、鈍ったのを龍馬と三吉は見逃さなかった。

 傷の痛みをこらえて、力を振り絞ってピストルをぶっ放せば、数名その轟音に驚き尻もちをつく有様。

「おらおらどけどけッ!」

 三吉は槍を振りまわして相手を薙ぎ払って駆けて、龍馬もそれに続いた。親指の切り傷は深く、出血が止まらず。ぽたりぽたりとたたみに血のしずくを落としてゆく。

「わあ」

 捕り手たちの叫び声が響く。見れば、槍を振り回す三吉が露払いとなって龍馬を逃がしているではないか。

「龍馬、逃げえ!」

 慎太郎は叫んで、六尺棒を三吉のようにふりまわしながら、追る捕り手や忠交の家来らを薙ぎ払い。

 隙を見て自分も離脱した。

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