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第五章 寺田屋襲撃 五

「おらおら、おんしらが欲しい首はここにあるぞ!」

 龍馬はピストルを構えながら、もう片方の手で自分の首を指さし、捕り手を挑発する。

 三吉も槍で何人も薙ぎ倒した。

 一時期は相手のひるんだ隙を見逃さず、まずお龍を逃がし。それに続いて自分たちが逃げ出すはずだったが。お龍が逃げ出せた次の瞬間に、新手が湧き出すように迫ってきて、寺田屋から出ることができなかった。

「こうなったら仕方ない。お龍さんが助けを呼ぶのに賭けましょう」

 三吉が言い、龍馬も頷く。

 捕り手の得物は迫り、龍馬はピストルを得物として台尻で何度も相手の顔や頭を小突いた。

「なめやがって!」 

 太刀が閃き、それを銃身で弾きかえそうとするが。目測を誤り、銃把を握る手の親指が刃に触れて。

 深い切り傷ができ、血があふれだす。

「しもうた」

 忌々しくつぶやきながら相手に蹴りを入れ、三吉が槍で突きとどめを刺す。

「いよいよおれもやきがまわった」

 ピストルは長州の高杉晋作にもらったもので、扱いも慣れたものだった。弾がもったいないので二発撃ってから棍棒代わりに使っていたのだが。

 油断があったか。

 傷は思ったよりも痛み、血も止まらない。

 三発目をお見舞いしようと思ったが、力が入らず引き金が引けない。左手でもつようにはつくられていないので、持ち替えることも能わず。

「手こずらせおって。生け捕りになどするものか。なぶり殺してやる!」

 捕り手の血眼は闇の中でもはっきり見えて、その歯で相手を噛み殺しそうなほど上気しているのが分かった。

「大仕事をしたというのに、そこで運を使い果たしたか」

 龍馬は苦笑する。三吉も苦笑しつつ頷く。

「あとは皆さんにお任せして、我らは先に逝きましょう」

「大仕事をした龍馬が逝く、か。やれやれ」

 かくなるうえは、ひとりでも多く道連れにせんとしたその一方で。外では、突然の乱入者のためやや恐慌状態になっていた。

 たったひとり、勘吾に斬りかかった者があった。

 斬撃は重く、そして熱く。気付くのが遅れていれば勘吾の頭は割られていただろう。

 それは頭巾をかぶっている。だがその鋭い眼光は、見覚えのある目だった。

「中岡慎太郎か!?」

「ああ!? なんでわかった!?」

「わからいでか、その目つきの悪さ!」

「鋭いと言え!」

 お互いわめきながらも、数合刃を交える。

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