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第五章 寺田屋襲撃 三

 素っ裸の女がふすまをこじ開け、血眼を向けて龍馬を睨んだのである。

 さすがに龍馬も面食らった。

「はしたない格好をするな!」

 酔いも覚めて、慌ててなにか上着を手渡し、強引に羽織らせる。

「大変です。追手が」

「追っ手? ったく、なめちゅう」

 水面下で行動をしていたのだが、どこから漏れたのか。

 さあ逃げようとしたが、どたばたとけたたましい足音がする。捕り方が階段を駆け上がってきているのだ。

 機転を利かせて三吉はすぐに行灯の火を消した。

 瞬時にあたりは真っ暗になる。二階に上がってきた捕り手たちは室内ということもあり、十手や柄の短い刺又を得物として龍馬らに突きつける。

 部屋は真っ暗であるが、捕り手は松明をかざす。しかし視界は悪く龍馬らをうまく識別できない。

 逆に龍馬らは暗闇の中にまぎれて、松明を見据える。

 突然。

 くうが破裂したような轟音がする。

「うわあー!」

 という悲鳴を上げて、捕り手がひとり倒れた。

 ピストルだった。

 龍馬は女、お龍が追っ手であると知らせた時、すぐさま懐からピストルを取り出し臨戦態勢をとっていたのだった。

 このピストルの轟音は外の勘吾らにも聞こえた。

「鉄砲!」

 忠交も目を見開いて驚いている。捕り手は鉄砲を持っていない。ということは、龍馬が撃ったのか。

「そういえば。あやつは武士であるにもかかわらず、太刀よりピストルなる小鉄砲を好むと聞いた」

 忠交は歯ぎしりしながら。

「恥知らずめ」

 と、呻いた。

 その間にも、意味不明な叫び声やどたんばたんとい足踏みや何かが倒れるような狂騒の音が響く。中で相当にやりあっているようだ。

 そしてまたも、くうが弾けるような轟音がして、「わあー」という悲鳴が響いた。

「小癪な!」

 捕り手がひとり、太刀を抜いて龍馬に斬りかかった。生け捕りではなく、完全に殺す気である。

「なんの!」

 龍馬はピストルで太刀を弾きかえしざまに懐に飛び込み、銃把グリップの台尻で相手の額を打ち付ければ。

 骨でも砕けたか、捕り手はたまらずもんどりうって倒れた。

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