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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第九十三話 俺の方がもっと酷い人生

 今回短いです! 次は明日投稿します。


 宿屋へと戻って村長及び村の自治体の方々と、何やら難しい話を終えたらしいミサとも合流した俺は、その日の疲れをじっくりと癒した。



 戻ってきたミサの疲れた顔ったらもう……凄かったな。

 唇の端をピクピクと引き攣らせてこちらに「やあ……」と手を挙げるミサに、俺はもう「いやほんとマジでお疲れ様っす」と声をかけることしかできなかった。



 しかし、そんなミサ――ついでに俺たちを癒してくれるのが、この宿屋。



 この村の宿屋は食事、風呂、部屋、そのどれをとっても素晴らしいもので、その日の疲れなんてものはすぐに吹き飛ぶ。

 正直食卓に並ぶのは相も変わらず未知の食材で未知の味付けをされた未知に満ち満ちたものばかりであったが、いざ食してみるとこれがまたイケる!

 幻世も捨てたもんじゃないな、なんてことを思ったものだ。



 しかし、そうして疲れを癒している際にも関わらず、どうしてかいつまでもあの少女のことが俺の頭をよぎる。



 俺が話を聞くと言った時の、あの世界に嘆息をしているかのような憂えた表情。

 俺を恐れていた時の怯えた目。

 そして、去り際の彼女の言葉。



 ――助けなんて今更誰が乞うものですか。



 「今更……か」



 燦々さんさんと輝く太陽に目を背け、眠ることにはもう慣れた。

 色々と考え込んでしまいそうになる俺の頭を他所に、比較的穏やかな眠気がゆっくりと俺を包み始める。



 「どうかされたので?」


 「あ、いや、別に?」



 呟いた俺におっさんが反応する。

 おっさんもどうやら眠りにつくようだ。

 俺の少し隣に布団を敷き始めている。



 明日はきっと聞き出そう、あの娘の今更を。



 今度こそ眠りにつくその前に、そんな決意を固めた俺は、すぐにまどろみの彼方へと向かっていくのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日、俺とおっさんは再びビオトープにやって来ている。

 目的はもちろんあの娘に対する言及。

 そもそも目の前であんなにも諦めた顔をされて、黙って放っておけるわけがないんだ。

 今日は昨日のようにいかない、そんな自信が不思議と今の俺にはあった。



 とは言っても、本来俺たちに課せられた職務は村の周辺に異常が無いかの調査。

 もっと言えば今や忘れられていないか心配にすらなる”狂血の姉妹”の情報収集だ。



 ともなれば当然これらをきちんと遂行した上で取り掛からなくてはならない。

 はあ……一体俺はどれだけの厄介事に巻き込まれ続けるのだろう。

 ――ま、そのほとんどは俺が勝手に首を突っ込んでるだけなんだけども。



 「というわけで、おっさん。村の周辺の見回りは任せた!」


 「ええっ!?」



 俺がおっさんの肩にドンッとてを置いてそう告げると、当のおっさん自身はぎょっとしたような顔でこちらを見る。

 そりゃあそういう反応になるよな。



 「おっさんが携帯使って連絡入れてくれれば俺も飛んでいくからさ。あ、今のは文字通り飛んでやって来るって意味だぜ?」



 しかし幸いにもこの山奥の村にも電気は通っているし、電波も来ている。

 つまり、電話くらい簡単にできてしまうのだ。



 そうなれば俺は超光速でそこへ向かえる自信がある。

 ここらの土地はこの三週間ほどでかなり把握したからな……マーキング・・・・・ならできてる。

 前に山賊を落下から防いだこのスキルをもってすれば飛ばなくても直ぐに行けそうだ。



 「確かに迅速にやって来てくれるという点では別に気にしていないんだよ。そうじゃなくて、またビオトープに行くのだろう?」


 「ああ、そのつもりだけど?」


 「そこですよ。昨日の彼女の様子を見るに、話す気は無さそうだった……ともなればこれ以上付きまとうのも無駄なのでは?」



 どうやらおっさんは俺がまた厄介事に首を突っ込むことを未然に阻止しておきたいらしい。

 俺にあの子に関わらないよう声と、それから視線とで促してくる。



 だけど、俺の答えは変わらない。


 

 「いいや、諦めねえよ。あんな傷心してそうな子ほっとける訳ねえんだ。――それに」


 「それに?」


 「俺の前で”世界に愛想を尽かした顔”とか、それが許せねえ! こっちの方がよっぽどこの世界に振り回されてるってんだ!」


 「まだ十代か二十代かわからない君がそれを言うのかい……」



 そういうわけで、俺は俺がムカつくからあの子に絡むんだ。

 それ以上でもそれ以下でもねえ!!



 「そんじゃ行ってくる」


 「ああ、そっちも気を付けてね……って、私が気にかける必要もないか」


 「あったりまえよ! むしろおっさんが気を付けろよな」


 「肝に銘じておくよ」



 最後にそう言って笑ったおっさんと、いよいよ別行動を始める。

 俺はビオトープへと向かうわけだが、果たして彼女は俺に助けを求めてくれるのだろうか。

 というか今思ったのだが、



 「そもそも俺は助けを求められたがってんだろうか……。だとしたらそれこそ俺は変態か、ドMかのどっちかなんだろうな」



 そんなどう転んでも俺の身を貶める強烈な二択が、目的地へと歩みを進める俺を襲っているのだった。


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