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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第九十話 予定は未定とか言いません

 一日遅れた! すまない!


 今回で九十話か。 百話くらい書いたなら、自分もそろそろ中堅作家なのかな……?


 顔を上げた時には既に消え失せていた、茶髪のケモミミ美少女。

 最初にその姿を見た時からどこか挙動がおかしい……というよりも怪しい、だろうか。

 そんな印象を持っていた俺は、ふわりと消えた彼女に対してもそこまでの驚きがなかった。



 どちらかと言うと今の俺を襲っているのは、消えた彼女に対する不思議よりもあのスベもふなケモミミの感触から得た幸福感で……。



 「もう、なんかモフれたからなんでもいいや……」



 そんな感嘆の声さえ漏らしてしまう。

 だって想像以上の心地よさだったんだもんな……ちょっとぼうっとしちゃうのも仕方ないとさえ思うね!

 それにその心地よさは、俺の語彙力で伝えられる範囲でいい感じに伝えておいたはずだからそれでいいだろ?



 彼女の毛並みを体感できずにいる世界の二次ヲタたちに若干の申し訳なさを感じつつ、俺はこちらへと歩み寄ってくるミサとおっさんの方へと目を向ける。



 「で、どうだったんだい? 彼女のケモ耳は」


 「最高だったな。ミサも一モフくらいしたほうがよかったんじゃないのか?」


 「いいよ、ボクは。 というかボクは今、君のそのケモ耳とやらへの熱に若干不機嫌になっているところさ」


 「なんだよ、偶然にも妄想の産物と思ってたもんに出会えたんだから温かく見守ってくれていいじゃねえか。何に怒ってんだよ」


 「はあ……もういいよ。 君には一生乙女の気持ちなんて分かりっこないのさ。いっそリザちゃんやドロシーに見放されちゃえばいいよ」



 何を怒ってんだこのギルドマスターは!? 意味がわからん!



 理由もなくぷんすかと怒っているミサを尻目に、俺はこのあとの予定を確認することにする。



 取り敢えずケモミミとの遭遇イベントは済んだから、次は何しようか……そもそも俺がこの村に来た目的って……ああっ!



 「忘れてた!!」


 「うわっ! びっくりしたなあ……いきなり大声なんて出すから。君ってただでさえ行動でボクらを驚かせるんだから、そういった日常での行動くらいはしっかりしてくれないかな、もう。 あー、それで? 何を忘れてたんだい?」



 なんか質問の合間に文句を入れてきたけど、気にしてやらねえ。

 それに悠長に俺に聞くが、結構これって一大事なんだぞ!?



 今の今まで完璧に忘れてたけど、元山賊たち曰くこれから盗賊たちがこの村に攻めて来る。

 それを聞いたからこそ俺はこの村に来たのに――じゃ、なかったわ。

 俺が来たのは、別に心配だからとかじゃなくて、ほら……あれだ、ただ通りかかったからだった。 



 それでこの村に来たのに、いざ到着したって時にあのふさふさを見ちゃったもんだから、当の目的を見失ってた。

 ったく、ケモミミは時に人を惑わすぜ……。



 「いや、ここに攻めて来るらしいじゃねえか……その、山賊たち?が」


 「ま、まさかそれを忘れていたとは思わなかったよ……。そもそもそれが目的でこの村に来たんじゃなかったのかい?」



 え、ど忘れなんて誰でもあるじゃん! なんでそんな顔すんの!?

 整った顔を用いた全力の呆れ顔を、俺にこれでもかとぶつけてくるミサから目をそらし、俺は逃げるようにおっさんの方を見る。



 「まさか忘れていたとは……」



 あれ、かと思えばこちらは俺を憐れむかのような目で見ているじゃないか。

 そんなにおかしい? 村を滅ぼさんとする山賊たちの存在を忘れてる俺ってそんなにおかしい? そんなことないはずなのに、俺はちょっぴり自分がおかしいのではなかろうかと不安になっていた。



 「ま、いいんだ。目的が明確になった今! 俺たちがすべきことはただ一つ!」


 「へえ、過程はどうであれ、君の中でやることは決まっていたのか……そこは素直に感心するよ。――それで? ボクたちはこれから何をすればいいんだい?」



 ふふふ、そんなことわざわざ考えるまでもないじゃないかミサよ。

 俺は心の中で先の見えていないギルドマスターを笑ってやることにする。



 なんせ俺たちがやることは至ってシンプル。



 返り討ちにせねばならない山賊たちはまだやって来ていない。

 そもそも山賊たちが何処に潜んでいるのかさえわからないから、当然こちらからはどうしようもない。

 なんかもう移動も疲れたし、休みたい。

 そして第一に……いなくなったあの娘をモフり足りない!!



 これらの理由から俺たちのやるべきことは自ずとわかってくるわけで。



 「よし、そんじゃ早速観光を始めるぞ」


 「「ちょっと待って」ください」


 「いった!! なんだよいきなり!」



 指示を出した俺の後頭部をミサの平手が襲う。

 この人、今日はいつにも増してぷんすかと怒りすぎではないだろうか? 日頃は割と温厚なミサなのに、今日という日に限ってはやたら俺の発言にも敏感だし。

 そのうえおっさんもおっさんで、俺の物言いをただ見ているだけで、ミサをいさめてはくれない。

 ということはおっさんもそっち側なのか……さっきミサと声を揃えて「待て」って言ってたからそりゃあそうなんだろうけどさ。



 「いきなりじゃなくて、観光なんてボクたちが現を抜かしている間に奴らが攻めてきたらどう対処するのさ! ボクたちがまずすることは、村長にこのことを伝えて準備をして貰うことだ。違うかい?」


 「その通りです俺が悪かったですすみませんでした」


 「わかればよろしい、なんて言ってやるのは優しすぎるとさえ思うよ……」



 いかん! またあのふさふさが俺を惑わして……! 俺ってやつはもう!

 でもこうして至らなかった……それもかなり至らなかった俺を責めていては事は進まない。

 ここは早く自らの足を動かさないと。



 「そうともなれば俺、今から村長んとこに行ってくるぜ。 早く伝えるに越したことはねーだろうしな」



 しかし、駆け出そうとした俺をミサの手が引き止めた。



 「ねえ、君が行ってそれを伝えたとして、どうなると思う?」



 ――ん? ミサのやつ何を不思議なことを言っているんだろう。



 「そんなの早急に攻められても大丈夫な準備をしてくれるだろ」


 「それを突然村にやってきてその人外っぷりを発揮した君が言って信用されると思う?」


 「あっあー……」



 あー、それはされねえわ。

 だってそいつ人外だもん。



 思えばそうだ。

 ある日突然ロープウェーでしか降れないらしいあの急勾配きゅうこうばいを駆け下りてくる人間?が、「おい! 山賊が攻めて来るぞー!」とか……。

 そんなことをすれば嘘を一つも吐かずして狼少年となることが可能だろう。

 つまり、誰からも信じちゃ貰えない。



 「そうなったらミサに頼るしかねえな。 ミサなら謎の人望があるし、速攻で信じて貰えるだろ?」



 ということはきっとこれが最適解となるはずだ。

 ミサならギルドマスターとして名が知れているので、きっと信用があるはず。

 だが、そんな俺の自信を他所にミサは首を横に振る。



 「いいや、ダメだよ。 ボクはさっき謎めいた君を庇ったことで少し信用がなくなってる。 速攻で話を信じて貰うのは難しいと思う」



 とのことらしい。

 もう、あれだな! 全部俺が悪いみたいだな! すっげえ居心地わりい!



 「かと言っておっさんに行かせても誰だお前、で終わるだろ? そんならミサが行くしか――」


 「自分で言っていて悲しいですが、ミサさんのような影響力なんて皆無ですからね……」



 寂しそうにそう言うおっさんを尻目に、俺はミサの方へと視線を送る。


 

 「そう。だから君に期待を寄せていたのに、帰ってきた答えは観光だよ? さっき叩いた意味がわかったかい?」


 「身に染みて分かりました」


 「ならいいんだ」



 ミサってば思慮深いぜ! 俺もそこまでは考えてなかったからな。


 

 そうして結局俺たちは、ミサが村長の所へ説得に。 

 俺とおっさんで村の辺りを山賊なんかにつて聞いて回ることになった。



 すんなり解決するつもりだったのに、どうなっちゃうんだろ……狂血の姉妹ブラッディ・シスターズの案件も置いてけぼりだし……割と長引きそうな予感がして肩を落とす俺だった。



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