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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第八十九話 出会ってすぐに、消えちゃったケモミミ

 次回あたりから投稿ペースが上がるかもです(二日に一回?)


 「ケモミミー、ケモミミはどこだー?」


 「君、そのさっきから言ってるケモミミってなんなんだい?」


 「なんだよミサ、そんなことも知らねえのか? ケモミミってのは……そうだな。人間の想像力が生んだ萌えの一種だ」


 「ええっと……? 君は何を言っているんだい?」



 クレーターの村に点在する店に沿った道を、ケモミミ娘を探してただ宛てもなく歩いている俺とミサとおじさん。



 ミサの必死の説得により、俺が村を襲いに来た何かではないということは村長並びに村民たちには伝わったようで、特に軟禁されたりとかいう処置も施されなかった。

 つまり、現状特に問題はなしということだ。



 しかし唯一引っかかることがあるとするなら、それは村長の俺を見る目だろう。

 というのも、ミサがこちらの事情を説明すればする程、傍らで聞いていた俺を見る目が変わっていったのだ。



 端っから俺を見る目は怯えていたりしたのであまり良い気持ちはしなかったのだが、最終的には村長は俺をとても不思議そうな目で見ていた。

 「なんなんだこいつ?」とでも言いたげな目で。



 「なあミサ。 にしてもさっきからやたら視線を感じるんだけど」


 「それはそうさ。 あれだけ目立っておいて視線を浴びないほうがむしろおかしいだろうし、なにより彼ら村民たちは村長がどうして君のような人物を放っておいているのか教えられていない。 当然の結果だと思うよ」


 「あ、そうか。 ちゃんとあの村長は俺の素性とか隠してくれたんだな!」



 そんな村長もあんなに怒ってはいても根は優しいのか、この通り俺たちのお願いした”秦瀬陽太の素性を明かさない”というのを律儀に守ってくれている。



 俺の強さの説明とか、したところで信じて貰えるかもわからないし……なにより目立ちすぎるのはあまり好きじゃない。

 だからこそ、さっきアホみたいに村民たちから視線を浴びた時には焦りに焦ったものだ。

 結局俺が怯えられていたのもあの坂を駆け下りるという行動に問題があったからだそうで、後で知った時にそれは後悔したものだ。



 とにかく、今はこうしてケモミミっ娘探しができているので特に問題はない。

 さて、ケモミミケモミミッ!



 「君ってばさっきから鼻息が荒いよ。どれだけ楽しみなんだいまったく……」



 背後からはミサの呆れ声が聞こえてくるが、そんなものはもう今更。

 一人の美少女に呆れられたぐらいで悲願を諦める俺ではないのだ! 今、目標は俺の手中に在るも同然なのだから。



 「それにあれ……いたし!!」



 そして本当に手中だった。

 まだ探し始めて特に時間は経っていないのだが、思いのほか直ぐに見つかった! 見える……俺には見えるぞ! 天へと突き立ったっその二つのモフモフが! 見えるぞ! お尻からちょこんと生えたその愛らしい尻尾が!



 どうしてか物陰に隠れるような、挙動不審な少女だが、そんなのは俺とケモミミとを分かつ障害にはなり得ない。



 「ごちそうさまでえええすっ!」



 思わず駆け出した俺。

 もちろん、民家が吹き飛ばない程度の。

 ソニックブームが発生しない程度の速度で、だ。



 「君ってばもう、ほんっとうに……」


 「いいじゃないですか、元気なのは良いことです」



 またも背後からはまるで俺の保護者でもやっていそうな二人の声が聞こえてきたが、これまた関係ない。

 なんせ俺の目の前には二次元オタクたちの妄想とされてきたケモミミ娘。

 こんな意味のわからない”世界停止”が起こらなければ一生巡り会えなかったであろう奇跡的な対面だ。

 これを逃しては俺は恥ずかしくて世間に顔を出せない……そんなレベルだ。



 そして近付いていく目標との距離。

 十メートル、七メートル、五メートル、どんどんそのモフモフは俺の手に収まりそうになっていって……。



 ――モフッ



 「きゃあっ!」



 俺は二つのケモミミそれに手を置いた。



 「こ、これは……!!」



 さて、全国の……いや、世界中のオタクたちよ、聞け。

 触った感じでは本当に犬のような毛並みだと感じられる。

 ふさふさと手を撫でるようなその感触は俺の心をひどく落ち着かせ、さらに何とも言えない幸福感を俺に与えてくれる。



 それから髪だが、これがまた素晴らしい。

 艶のある茶髪の上では俺の手もスベスベと滑り、それがまた心地いい。

 その上日に照らされてほんのりと温かくなった茶髪は触れている俺の手さえも温かく包んでいき……もう、たまらん!

 スベスベとふさふさ。

 その二つを味わえるこの少女の頭というのはかなり需要が、いやほんとマジで欲しいんだけどこの娘――



 「お、追っ手ですか!?」


 「あ、すまん! スベもふが俺を放してくれなくて」


 「突然現れておいて何を言っているんです!?」



 あ、やべ。

 調子に乗りすぎたっぽい。

 女の子のことを欲しいとか思っちゃったし、挙句ずっと頭撫でてたし……。

 どうしよう、この娘だいぶ怒ってるよ、顔もみるみる青くなって――って、あれ? 青く?

 それにこれ、また話が噛み合ってなくね?



 「すまん! この通り!」



 そんなことを考えていたら、気が付くと俺はわけもわからず、頭を下げていた。

 確実に悪かったのは俺なんだからこれくらいはまず当たり前だろう。

 話はそれからだ。



 こちらの誠意をできるだけ伝えて、俺は顔を上げる。

 が、しかし。



 「あ、あれ……何処行ったんだろ……」



 顔を上げたその先に、もうあの麗しいケモミミ娘の姿はなかった。



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