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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第八十八話 村を襲う何か

 一日遅れてしまった! 申し訳ない!



 「きゃあああああ!!!」


 「おいおい見ろよあれ……何かがっ!何かが来てるぞー!」


 「何かって……な、なんだあいつはぁっ!?」


 「と、とにかく逃げろ!」



 とある山中の、のどかな村。

 大きなクレーターの中にできたその不思議な村は、一見目立ちそうにも見えるのだが、どうしてか国中の人々からはあまり知られていない。



 それ故ここの人々は独自の文化や習慣を編み出しており……例えるのなら少し昔の日本の鎖国。

 別に鎖国とは言っても、村長が外界からの侵入を拒んでいるわけではない。

 なのだが、どうしてかあまり人は訪れない、そんな村。



 そんな村の均衡は突如として――



 「うおおおおおおっ!こけるこけるこける!」



 ほぼ断崖絶壁の坂?を駆け下りる、というよりは駆け落ちる少年によってぶち壊されることとなった。



 「なんで逃げるんだろみんな……!ああ!ケモミミ娘達がっ!」



 逃げていくケモミミを眼界に捉えた俺は、坂を駆け下りるのをストップ。

 ぶっ飛んで、あっちまで向かうことにした。



 「行くぞ――ッ!」



 大きく飛ぶと街の外まで飛び出しかねないので、ここは人が逃げてしまって誰もいなくなってしまっているポイントへと調整してジャンプする。

 人ごみに突っ込んで怪我をさせたらただ事じゃ済まないからな。

 なんといっても俺は常識人だ。

 それくらいのことは強大な力を得たらしい今でも簡単に理解ができるってもんよ。



 あ、ちなみに『飛空』使えばいいじゃん、なんてことを考えたのなら、考えがそれは甘いってもんだ。

 あれは少しだけ目立っちまうからな、極力は使いたくないんだ……って、俺って誰と話してんだ?



 そうして頭の中で一通り独り言を終えた俺は、今度こそ地を蹴って目標の座標へと向かう。

 どうしてか人がみんな避けてくれてるから助かったな。

 っていうのも、あの坂下るの少し疲れるんだよ……気持ち的に。



 「「「「と、とととと、と、飛んだああああああっ!?」」」」



 んん?下が賑わってるけど何かあったんだろうか……俺も混ざりたい。

 きりもみ式に上空で白井選手もびっくりの超回転のひねりを魅せつつ、華麗に着地を――



 ズドーーーンッ!!



 ――今、着地の瞬間とんでもねえ音が鳴ったけど、マジでフォームは美しかったんだぞ?高さと勢いが奏でた轟音だ。信じて欲しい。



 さて、さっきまで目立ちたくないと言っといてどうして空中での回転を魅せたのかは自分でも分からないが、俺は何事もなかったかのように必死に逃げ惑う人々のあとを追う。

 どーれ、ケモミミケモミミっと……。



 「ちょっ、お待ちくだされ!!」



 そんな俺のもとに、人ごみを掻き分けて一人の爺さんがやって来た。

 見るにかなり息を切らしているではないか。

 一体何事なのだろうか……この、デコピン一つでポックリ逝っちまいそうな爺さんをここまでアクティブにしちまう事象なんて……。



 「どうしたんだ? 爺さん」


 「どうしたんだ? じゃありませぬ! というかそれはむしろこちら側の質問ですぞ!?」



 あれ? なんかこの爺さん怒ってないか? いや、でも怒ってる割には何かに怯えているようにも見えるし。



 「と言うと? つまりは何が言いたいんだよ」


 「何がなどと……! 村の守人から『じっちゃん、マジでやべえ奴が来た!』等と言われて広場へ来てみれば、クレーターの壁から一直線に砂煙が上がっておるではないか!」


 「あー、それ俺だな。急いでたからさ、つい」



 俺はこめかみの辺りをポリポリと掻きながらその話を聞く。

 どうやら俺が全力で駆け下りていたのに気付かれてたみたいだ。



 「ひょっとしてあれか。鼻が弱い人とかいたのか? だったら悪かった。結構砂が降ってきちゃったのかもしれない」


 「そうじゃそうじゃ。まったく、最近の若いもんはもうちょっと付近の迷惑を……ってええい!この阿呆ぅ!そんな話は一切しておらん! なんじゃ、お前さんちょっと頭のネジが外れとりゃせんかの!?」


 「そ、そんなに言う……?」



 うおお、なんだこの爺さん! ノリツッコミしてきたぞ! その上俺もちゃんと謝ったのに、おそらく一ミリも誠意が伝わっていない。



 「わしが言っておるのはお前さんの異形っぷりじゃ! あ、あれかの? 村を滅ぼしに来たのかの? だとしたら帰るのじゃ……。 ここの村はわしが何としてでも守らねばならんのじゃからの」


 「いや、俺はただ村に来ただけ……謂わば観光目的みたいなもんで……」


 「ただ来ただけってお前さん……! み、見ろこの光景を! 村人全員が天を仰いでおるのじゃぞ!? 全員がじゃ! 一人の人間がただ入村しただけで村人たちにここまで怯えられてなるものかぁ!」



 え、ええええ! いや、まあ確かにさっきから呪文みたいなのブツブツ呟いてる人いるけどさ……。

 あ、てか何気に強気に見える村長も数珠握ってるし……。

 えーと、なに? 何が悪かったの!? 俺が一体何をしたっていうの?



 「おーーい!」



 っと、そこに救世主がやって来た。

 俺一人じゃ全くこの必死な形相の村長とお話にならないから助けて欲しい。



 「やっぱり……下がうるさいと思ったら渦中にはやっぱり君がいたね」


 「『天災だぁーー!』等と叫ぶ青年を見て確実にあなたのことだと確信しましたよ……」



 どうやらこの騒ぎが俺絡みであることはとうにわかっていたらしく、こちらへ駆け寄ってくるミサと運転手のおっさんの顔は呆れに満ちていた。



 「あなたは……ああ! エストリアのミサ様か! お会いできて光栄でございます。よくもこんな辺鄙へんぴな村に」


 「いえいえ、様付けなどと……村長さんでいらっしゃいますね?」


 「そうです私が……なんて言っている場合ではありませんでした! ミサ殿、ぜひこの異常者を退治してはくれませぬか!?」



 ミサにまるで懇願するかのようにお願いをする村長の必死さはとても凄まじく、さっきまでの死にかけの老人とは印象がまるで違う。



 それより、異常者はないだろ。 

 俺は前にも言ったが常識を持った人間であってだな――



 「いえ、実はこの異常者は私の連れでして……」


 「――へ?」



 すると今度は村長が素っ頓狂な顔をする。

 思わずこの人見てて面白いなあ、なんて俺はまるで他人事のように思ってたりするのだが、当然態度には出さない。



 「彼がおかしいのはいつものことなのです。決して貴方方を取って食おうとしているわけでは……え? ないよね?」


 「ないわ!!」



 あるわけねえだろーが。 どこのクリーチャーだ!



 この後、村長含め村の人々の説得に俺はかなりの時間を浪することとなったのだが……正直、ミサがいなかったら確実に出禁になっていただろうから、本当にミサがいてくれて助かった。

 ということで、めでたしめでたし!



 

 

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