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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第八十三話 人間射出機――HNT(ヒナタ)

 前に更新速度が遅いと言わてしまいました……。本当にごめんなさい。


 そこでなのですが、皆様的に何日おきの更新がベストでしょうか。

 是非感想等でおっしゃっていただけると助かります。なるべくその通りに更新できるよう努めたいと思いますので!



 「なあー?……そもそも何処に向かってるのかくらい教えてくれたっていいと思うんだよ俺は」



 せっかくの異世界感をぶち壊しにする文明が産んだ交通機関、通称タクシーに揺られて、俺とミサは目的地へと移動していた。

 エストリア郊外に広がっていた草原はもう今や彼方に。

 俺たちの乗ったタクシーを囲んでいるのは、木、木、木!

 つまりは森の中、厳密に言えば山の中にいるのだった。



 そして案の定俺に何処へ向かっているのかという情報は伝わってきてなどいない。

 ひょっとしたらここら辺なのかもしれないし、もっと遠くへ向かう可能性だってあるわけで。

 とにかく、そんなことを考えていたら不安になってきたので、早く目的地を教えて欲しいのだ。



 「そうウキウキしなくても、ボクだって凄く楽しみなんだから! 狂血の姉妹を見るのだって、もちろんキミと一緒にクエストに行くことだって……ね?」


 「く……ッ!」



 しかし、彼女はそんな俺の問いかけに対して上目遣い&小首を傾げるといった動作までいれて返答してきた。

 くそう!この人……あざと可愛いっ!



 薄桃色の髪で大人の色香を漂わせつつ、ボーイッシュな語り口というギャップに度々戸惑うことはあるのだが、何も俺はあっち系というわけではない。

 こういった挙動を見せられると俺だって少しくらいドキッとすることくらいある。

 ただ、俺はどうにも恋愛にはトラウマがあって……。



 「どうしたのさ? 神妙な顔つきになっちゃって」


 「――あ、うん。なんともないぜ?」



 おおっと、らしくもなくちょっとばかし感傷に浸ってたみたいだ。

 ミサがこちらを伺うように覗き込んでくる。



 「そ? ならいいんだけどさ……」



 こちらを心配してくれたミサだが、あっけらかんとした俺の態度に追求することを断念したみたいだ。

 今はタクシーの窓から、流れていく外の風景に目を向けていた。



 俺はそんなミサに「あ、そういえば」と思い出したことを聞いてみる。



 エストリアを出るときにも言っていたと思うんだけど、俺はミサに聞きたいことが山ほどある。

 もう、それはそれは沢山あるのだ。

 俺からすればこの世界は未知で溢れすぎているし、それは俺だけでなくリザなんかからしてもそうだろう。

 ここ最近の生活のおかげで日常会話には困らない程度に俺も仕上がってきてこそいるのだが、それでもこの世界に慣れたかと言われれば、まだまだだろう。



 だからこそ少しでもタメになる話を聞く。

 それが今回のクエストの目的の一つでもあったというのに……。

 ついうっかり忘れちゃってたな。



 「なあ、ミサ。聞きたいこととか、聞いてもいいんだろ?」



 俺はそうミサに訪ねた。

 ミサはこちらへ顔を向けると、



 「ああ、そうだったね! 聞きたいことだよね! いいよ、何しろボクは懐が広いからね。キミとの質疑応答に応じようじゃないか」



 何を偉そうに言ってるんだこのギルドマスターは、なんてことは言わない。

 俺もまあ、あれだ。

 ちょっとした社会人だからな。

 言っちゃいけないことと良いことの区別くらいつく。



 というか、なんかこの人が胸張って「えっへんっ!」って言ってる姿自体見慣れ始めた俺からすれば、そんなことももう、なんか今更だった。

 えっへんって、本当に口に出す人いるんだな。

 マジでリザくらいのものかと……あの子は素で言うからな。



 ということで、大人しく俺は気になっていたことを早速ミサに聞くことにするが、もちろんあんまり大きな声では聞かない。

 運転手さんに聞こえる可能性を考えればそれも当然だ。

 俺が気になっているということは、それはおそらくこの世界における常識。

 ともなれば、どんな目で見られるのかはこの身を持って知っているからだ。



 「いやあ。ずっと、ずーっと気になってたんだけどさ……。 第一世代でも第二世代でもない人たちって、今何処にいんの?」



 俺はミサにそう訪ねた。



 これはこっちに来てからというものずっと考えさせられていたことで、かつ最も知りたかったこと。

 だからこそこの質問を最初に訪ねたわけだが、その理由というのがやっぱり悠斗や瑞希、並びに俺の家族なんかにも関わってくるからだろう。



 そもそも彼らの情報を未だ微塵も掴めることの出来ていない俺は、彼らが何処にいるのかも、何世代なのかさえもわからないわけだ。



 もし、彼らが第一世代でも第二世代でもない、つまり未だ時に縛られている人間であったとき、俺が今あちこちを探したところでそれはどう見ても無駄ということになってしまう。



 その上俺はその、第三世代となり得る可能性を持った存在があるのかさえ知らない。

 そんな存在がないというのであれば、それはつまり世界には第一世代と第二世代の人間自体存在しないということになるわけであって、その場合俺は彼らを探して世界を股にかける必要が出てくるのだ。

 


 「ったく……世話の焼ける奴らだぜ……」


 「――奴らって言ってる辺り君が少数派みたいだよね。奴らからすれば君こそが世話の焼ける奴だよね?」



 ミサがなんか言ってるような気がするが、聞こえない。



 「ま、いいけどさ。あー、それでね、今もなお世界停止により体を動かすことのできない人々。確かにいるんだよ、それが。そんな人々はね、今は――」



 キキィーーーッ!



 と、ミサの話していたそこでタクシーが急ブレーキをする。

 それにより車体が激しく揺れるが、俺はミサが吹っ飛ばないよう抑えてやる。



 「き、君ってば大胆……!」


 「お、おおおおお客様! お逃げください」



 これは酷い。

 なにより運転手さんとミサの緊張感の差が凄い! ミサはもうちょいこの状況に関心持って!



 急ブレーキの真相を知るべく、俺はあたふたする運転手のいるその先――正面を見据える。



 そこには、野蛮そうな、それに大柄な男たちが数名。

 どうやら彼らが前にしゃしゃり出てきたらしい。

 これは……? 新手の当たり屋だろうか。

 それにしても咄嗟に急ブレーキを踏んだ運転手さんに拍手だな。



 「お客さん、早く! 奴らはきっと賊です! 私が引きつけている間に速く!」



 今しがた心の中で褒めたばかりの運転手さんが、命をかけてまで俺たちを守ろうとしているみたいだ。

 こっちに来てからここまで心温かい人に出会っただろうか。

 そのあまりのプロ根性と優しさに胸を打たれた俺は、



 「さて」



 普通にドアから出ていき、



 「おいおいおいおいぃー? 何しに来たのぉーお前ぇー?」



 普通に、俺を下衆な目で見てくる彼らの前に近付き、



 「え? ひょっとしてやんの? やんのかおめえよお! そのひょろそうな体でぇっ!?」



 普通に、馬鹿にしてくる彼の胸ぐらを掴み、



 「ちょっ……って、え? 嘘でしょ? お前なにして――っ!」



 普通に、何か嫌な予感がしたのか戸惑い出したそれ・・を真上へぶん投げた。



 「んんんぬうううああああああああーーー!!!!」



 ――ああ、声がどんどん遠のいていく。

 


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