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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第八十二話 佐野悠斗の受難

 お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの駄犬、今更プロローグを書き直しております。申しわけありません!


 具体的に言いますと、今までプロローグとしていたものを第一話とし、その前にプロローグを追加しております(一月二十九日現在)。


 完全に新作ですが、ストーリーに特に変化はないので、読まなくていいや!って方はスルーして貰っても構いません。ただ短いので、読むことには苦労しないと思います。はい!


 以上、報告でした。貴重なお時間を申し訳ございませんでした!


※これにより実は話数にズレが生じているのですが、これは今訂正を進行中です。ご安心を!


 東野瑞希という少女は、世界停止により幼馴染たいせつなひとを失った。



 こういったケースはかなり稀だ。

 目覚めた時にその場にその幼馴染がいなければ、その幼馴染は第一世代であったということになるわけだけど、瑞希の友人――つまり僕が目覚めた時には、既にもう陽太はいなかった。

 残されていたのは陽太が書いたと思われる「ちょっと出てくる」の書置きのみ。



 これはかなり奇妙な現象だ。



 佐野悠斗――つまり僕は、第一世代の人間。

 にも関わらず、僕が目覚めた時には既にそこには親友、秦瀬陽太の姿がいないというのは極めておかしなことなのだ。

 もちろんこれに類似した話は戯天となった後の僕が調べた際にも見つからなかった。



 この事態に、多くの科学者や博識な者たちが取り掛かったし、その現象を抜きにしても、心から彼を見つけたいと願う瑞希ちゃんや僕も必死に原因を突き止めようとしたし、行方を追った。



 だけど、結果が実っていないのが現状だ。

 陽太が行方不明だとわかると、瑞希ちゃんは気を動転させた。

 いつだって淑やかで、落ち着いた大人の女性だという認識を持っていた同級生たちを不安に指せる程度には、彼女は荒れていたんだ。



 だから、彼女に僕は療養という名目でしばらく休みをあげた。

 というのも、彼女を慕う同級生たち全員がそれを望んでいたからというところが大きい。



 だからその頃は、他のみんなが必死に魔族と交戦している中で、それでも彼女一人はずっと時之宮の中で塞ぎ込んでいるだけだったのだ。



 しかし健気な瑞希ちゃんは、ある日突然戦場に立つことになった。



 「彼がいつでも戻ってくれる場所をつくる」



 それが彼女の立ち上がる理由となったのだ。



 そんな彼女をみんなは快く迎え入れ、彼女を副戯長という立場におこうと声を上げるんだけど……さて。

 ここでようやく彼女の人格の話になる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「ねえ、瑞希。そんなに凹んでても仕方ないよ。秦瀬のやつだってそのうちひょっこり出てくるって!」



 舞台は神魔大戦真っ只中の時之宮内部。

 瑞希ちゃんを呼ぶ声に反応し、僕が目を向けたそこには、寂しげな表情をしている瑞希に声をかけているクラスメイトの姿があった。



 今は人間側魔族側共に一時休戦中であるため、時之宮内にいる者たちの表情は笑顔で溢れている。

 そんな中だったので、どうも瑞希の物憂げな表情は目立って見えてしまったのだろう。

 瑞希は声を掛けられていることに気が付くと、そのクラスメイトの方を見てわかりやすく笑顔を作り、



 「そうね。きっと戻ってくるわよね! だから私たちも頑張りましょう!」



 こう言った。

 こうして言葉を聞くとなんだ心配ないか、と感じそうになってしまうものだが、瑞希と本当の意味で親しい一部の人間ならば気付く。



 ――あれ、全く感情こもってなくない?と。



 しかしそのクラスメイトもまたそれに気付ける一部の人間ではなかったみたいで、瑞希ちゃんが笑顔になったのを見ると、満足げにどこかへと行ってしまった。



このように、瑞希ちゃん自身は頑張れている気になっているかもしれなかったけど、実際のところは無理をしているだけだということが、わかっている者にはわかっていた。

 最近の瑞希ちゃんが、ポロリと感情が抜け落ちたかのようになっているのを。



 だからこそ僕はあまり乗り気にはなれなかったのだが、同じ時之宮の生徒各員や教員たち、並びに地域の方々までもが彼女を副戯長に推すじゃあないか。



 そうして仕方なく戯天である僕は、瑞希をその地位に置くことになったのであった。



 基本的に彼女はその職務をそつなくこなし、公国のトップであるバトラーにも気に入られて、民からも公国の淑女と讃えられ、なんら問題等なく日々を送っていたのだけれど、それでも本来の彼女の姿とはかけ離れていると僕や彼女の友人にご家族の方々、そして世界停止以降関係の深まった憐天までもが感じていた。



 そんな僕らに降って沸いた出来事が、今回の事件……狂血の姉妹ブラッディ・シスターズの失踪。



 僕と憐天との話し合いに割り込んできた時の瑞希ちゃんの表情は、明らかに動揺に塗れていた。

 それほどまでに感情を顕にする彼女を、陽太がいなくなった時以来見たことのなかった僕は、少しばかり驚いてしまった。

 でも、事態が事態だ。

 彼女がそれほど動揺する理由が、僕にはわかっていた。



 そのためその場で彼女にどうしてそんなに焦ってるの?なんてことを聞くことはしなかったし、それより僕のような責任のある立場の人間は必死に頭を働かせてものを考えなくちゃならないわけで。



 「あああもうっ! 考えすぎて頭痛いよっ! 助けてよ陽太ってば!」



 戯長である菅谷さん、それに同級生だっている戯兵の前であるにも関わらず、僕は大声でこの状況を嘆く。



 目の前の菅谷さんは、世界停止以前まで自衛隊に勤務していた第一世代の人だ。

 わけあって部下の方々も含めて今は戯天の傘下に下って貰っている。

 強くて何事にも動じない岩のような人で、心から頼れる人だ。



 ――まあ、そんな菅谷さんも今は僕が大声を上げたことに驚いて口をあんぐり開けているんだけど。

 そんなにガラじゃなかったかな?



 だけど、こんなにも問題が山積みだと嘆きたくもなると思うんだよ。

 勝手なバトラーによる王国の攻撃。

 どうしてか王国にいる狂血の姉妹。

 陽太がいないせいでずっと様子のおかしいままの瑞希ちゃん。

 というかいつまでも戻ってこない陽太。

 未だに同級生や大人にあーしろ、こーしろと指示することに慣れない現状。

 もう……不安なことまで挙げればキリがない。

 


 だからもういっぱいいっぱいなんだよこっちは!まさに猫の手も借りたいんだよ!

 一年以上経ってなおいっこうに現れない、同級生が提唱する”もう死んでいる説”が濃厚になりつつある親友を心の中で毒づきながらも、僕は打開策を練る。



 ああ、王国に出鱈目でたらめに強い人がいて、その上それが陽太だったら全部上手くいくのにな……。



 挙句そんな絵空事を思い描いてしまう僕には、やっぱり戯天なんて向いてないのかもしれないな、と心から思うのだった。




 次から陽太たち王国サイドに戻る予定です。


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