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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第七十七話 みんなといられる今が

 ラッキーセブンですね!


 それから今回やや長めです!




 「どうして私はお留守番なんですかっ!?」


 「いいから。リザもこっちに来て毎日楽しいだろ?今はただ休暇ができたと思ってドロシーと遊んであげなって」


 「おい、貴様。日に日に私の扱いが雑になっているような気がするのは気のせいなのか?」



 いえ、それは紛れもない事実です。ドロシーさん。



 空を見れば相も変わらずの快晴。そして眼前に建つはちょいボロアパート。そんな環境で俺は美女たちを正面に別れの挨拶を告げていた。



 とは言っても、大して長い間家を(ドロシー宅だが)空けるというわけではなく、目的を達したらすぐに戻ってくることになるのだが。つまり最初の表現はかなり大袈裟だったわけだ。



 ミサにクエストを依頼された後に帰宅してからというもの、俺は直ぐにこのことを家にいたリザとドロシーに伝えた。



 というのも、俺は面倒なことはとっとと済ませてしまうタイプなので、この物騒なクエストも早急に終わらせてしまうことにしたのだ。



 人間、何事もやりたくないなんて先延ばしにしていてはずるずると引きずってしまう。このことを俺はこの人生で幾度となく痛感させられてきた。そう、主に学校の課題等でな!



 そんなわけで、俺は帰宅してリザとドロシーに伝えてからというもの、淡々と準備をこなしたのだ。そして今に至るのだが……。



 「そもそもなんで二人は当然のように行く準備を進めてんだよ……」



 問題が起きてしまった。主にこの二人のことで。



 「だって陽太くん、一人で行くなんて言いませんでした!」


 「だって貴様!普通先輩である私を置いて一人クエストに行くとは思わんだろう!」


 「確かにそこまでは言わなかったけどさ……」



 状況からなんとなく察せると思うが、つまりはまあ、こういうことなのである。



 そもそも前提として俺はリザをクエストに連れて行く気がない。その考えは当然リザに怪我して欲しくないからとか、疲れさせたくないからとか、数多の彼女を心配する理由によって構成されているわけだが、その上考えて欲しいのが、彼女の特殊なスキルである。



 俺はこっちに来たばかりだからあまり偉そうに語ることもできないのだが、リザのスキルは特殊だ。何を根拠に、というかもしれないが、ギルドのメンバーや街ゆく人のステータスを見てもリザのように相手のレベルに干渉するようなスキルは見当たらなかった。こんなに沢山人がいるのに、だ。



 そんな特殊なスキルがミサのようなギルド関係者に知れれば、リザも本格的にクエストを受けさせられるようにかもしれないし、下手すりゃ八天に目を付けられるかもしれない。でもまあ、ミサに限ってリザの意思を無視してまで利用しようとするとも思えないけど。



 そう、これは今の話にも繋がるんだけど、先程ステータスを見ていたと言ったが、これが俺に色んなことを教えてくれた。最初に”神魔眼”のスキルをとっておいたのは間違いじゃなかったのかもしれない。



 その教わったことというのは、スキルのことだ。他の冒険者たちは一体どんなスキルを持っていることが多いんだろう。こんなことを疑問に思った俺は、ある日”神魔眼”をガンガン使ってみた。そしてその結果わかったのが、”神魔眼”持ちは一人もいなかったが、”神眼”、もしくは”魔眼”持ちなら数える程だがいた、ということだ。



 これが俺たちにどんな悪影響をもたらすのか、という話だがそれは明確。孤島を出るまでに溜まりに溜まったレベルを使って増えた、俺の”創造”を除いて十個・・あるスキルがバレてしまうということ、それからリザのスキルがバレてしまうということ。主にこの二つだろう。



 因みにもう一つ、調べた結果スキルというのは基本的に一人に一つしかないらしい。そして稀に二つ持ちがいたくらいだ。つまり十個スキルを持つ俺は明らかに異常というわけで。



 振り返ってみるが、俺たちの目的というのは俺の故郷に帰るってことだ。これはあの小屋を出た時からリザと一緒に決めていた悲願なわけだが、今はその為に金を稼いだり、ある程度の人脈を作ることにしている。勿論目立たない程度の。



 しかし、こんな日々を簡単にぶち壊せる爆弾を俺とリザは抱えているわけだ。良く言ってしまえば強すぎる個性を。



 だって考えても見ろ。エストリア――つまりこの街で一番の強者を俺は下したんだ。つまり俺はこの街において最強ということになる。とはいえ流石に八天が相手となれば話は別なのだろうが、それでも俺という存在はこのアルメリア王国にとって見過ごせない存在となってしまうだろう。そうなれば俺は仕事仕事でまともに故郷探しができなくなる。



 ひょっとすると顔が広くなった俺に故郷の誰かが気付いて会いに来てくれるかも、というのも考えたが、故郷がもし王国と対立関係にある国だった時におそらく身動きがとれない。



 そんな理由から俺は落ち着いた、楽しい日常を目指して日夜励んでいるわけだ。――早速ミサやリチャードには実力がバレちゃってるみたいだけど。



 「――聞いてるんですか?陽太くん!私は今怒っているんですよ!?」


 「そうだぞ貴様!早く私たちを置いていく理由を述べろ!」



 おおっと、考え事しすぎてた。リザとドロシーの話全然聞いてなかったな。



 我に返った俺は二人が顔を赤くしている彼女たちに気付く。多分そんなになるまでこちらに叱責を浴びせていたのだろう。それを察して俺はなんだか申し訳ない気持ちになる。



 二人は俺を心配して自分も行くと主張しているのだろう。もしくは置いていかれて寂しいという気持ちもなるかもしれない。――あれ、あるかな?あるよね?俺ってせめてそれくらいには仲良く出来てるよね!?



 内心でそんな不安も多少抱きながら、俺はなおも俺を説得しようとする……



 「それから陽太くんは最近ギルドに入り浸りすぎだと思う私です!もっと私に構おうとは思わないんですか!」



 ――説得しようと……



 「そうだ!そもそも貴様は何故家に上がる前に私の顔を不安そうに見るのだ!何を警戒しているんだ一体」


 「何の話なんだよ!!」



 話逸れすぎだろ!なんだよ構えって!なんだよ警戒してるって!



 「ってかドロシー!お前に至っては自業自得だろーが!お前家上がったらすぐ顔を赤らめて殴る蹴る撃つの暴行じゃねーか!」


 「なっ!撃ってはいるが蹴ってはいない!それに顔を赤らめてもいないぞ!?」


 「撃つほうがいっそ酷いわ!そして赤らめているのは事実だぞ」



 こいつ普通に俺に銃口を向けてくるけど他の奴にそんなことしてないよな?ちょっと心配になった。



 するとそれと同時にリザがこちらへ少し寄って来た。かと思えば、急に上目遣いになって口を開いた。



 「それなら……私たちが陽太くんを心配しているのも事実です」


 「――うはあっ!」



 いかん、思わず変な声が出てしまった。何なんだこの子……可愛すぎるだろ……!!



 「――あ」



 そのせいか、気が付くと俺はリザの頭を撫でていた。こうしてるとなんだかすごく落ち着くし、力も湧いてくる。俺はそのままでリザに言いたいことを告げる。



 「俺はさ、もう放したくないんだよ。俺の好きな皆と居られる今が当たり前じゃないって、気付いたし、気付かせてくれたから。それに考えても見ろよ。あんなトンデモ島から脱出した俺だぜ?誰にだって負けっこないって。だからさ……俺を信じてくれよ」


 「――ふふっ。ずるいですよ陽太くん。そんなこと言われたら私、嫌でも陽太くんを信じちゃいます」



 リザは目に涙を溜めながらも俺に笑顔を向けてくれる。良かった、わかってくれて。



 正直な話、最後の「負けっこない」ってのは大嘘だ。俺にはそんな自信なんてない。それどころかあるのはむしろ俺を蝕む劣等感ばかりだ。今だって過去だって、俺の人生はそんな負の思いを孕んでるって言ってもいい。



 だけど、自ら負ける気はない。何度だって馬鹿みたいに立ち上がって、無様に抗ってやると決めたから。



 それからリザの頭を撫でながら、何かを敏感に感じ取った俺はふとドロシーを見やる。視線の先ではドロシーが何かを呟いているように見えた。



 「いくべきか?確かにあいつに頭を撫でられれば私は……いや、でも恥ずかしいし……。でもあいつはこれから何処かへ行ってしまう……うわああああっ!」


 「うおああっ!びっくりしたー!」



 いや、普通に声が小さすぎて最後の「うわああああっ!」しか聞こえなかった。なんて言ったんだろうな?心からよくわからないドロシーだ。



 それから少し経った。涙が消え、ニコニコと心地よさそうに俺の撫でを受け続けるリザを見ているのは飽きないし、ドロシーが歯ぎしりをさせながらこちらを見てくる理由も気になるが、そろそろ行ってしまいたい。じゃなきゃ言った通りずるずる引きずっちゃいそうだからな。



 「そんじゃまあ、行ってくるよ。リザ、もう泣くなよ?」


 「泣いてませんよ?」



 真顔で言うリザ。いや、ほんとそこだけは譲らねえんだな。俺は相変わらず愉快で可愛いリザの姿に頬を緩める。そして、



 「それからドロシー。うちの可愛くてか弱いお姫様をしっかり守ってあげてくれよ。頼りにしてるから」


 「ああ、そうだな。リザは可愛いお姫様だな」



 先程からリザと話しすぎていたせいか明らかにいじけている上に何かを勘違いしているドロシーにこう残していく。



 「誤解してるみたいだけど、ドロシーもドロシーで俺からすれば可愛いし、か弱いどころの話じゃないんだぞ?――でも、誰より強い心を持ってんのを俺は知ってる。だから俺は実力ってよりもそこの泣き虫な子の面倒を見てくれって言ったつもりだったんだけど……」


 「き、貴様は私を辱めて殺すつもりかあっ!!」


 「急に何を恥ずかしがってんだ!?」



 何かが彼女の琴線に触れたのだろうか。顔を熟れた林檎のように赤くしたドロシーは俺からぷい、と顔を背けた。かと思えばこれまたか細い声で、



 「――ま、任せておけ……ひなた……」



 ――相当頑張ったんだろう。最後のは道中に俺の脳内で数百回ほどリピートさせて貰うことにしよう。



 「んじゃ、今度こそ行くな。なるべく早く戻るから」



 そして俺は準備が終わり次第もう一度来いと言われたギルドへと向かう。今のやり取りのおかげで俺の足取りも軽かった。これなら戯天の手を煩わせたという狂血の姉妹ブラッディ・シスターズにだって負けないだろう。



 「うっし」



 背後から届く二つの声援は、しばらく歩くまで消えることはなかった。



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