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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第七十二話 新米冒険者コンビ爆誕

 七十二話でようやっと冒険者て……。

 「「Eランク冒険者?」」


 「そう、Eランク冒険者。リチャードから聞いた説明には無かったかもしれないけど、実際うちのギルド……いや、このアルメリアという国のギルド各所ではそういうのがあるんだ」



 Eランク冒険者か……聞いただけでわかるな。多分Dランク以下の最低のランクのことなのだろう。俺はそう察しをつける。



 「それには問題行動を起こした者等が加わるんだけど……君たちにはそこに加入してもらうことになるね」



 申し訳なさそうにそう俺たちに告げるミサ。



 別にミサが悪いというわけでもないので、そんな顔はしないで欲しい。それともそんなにそのEランクというのは処遇が悪いのだろうか。俺にはそれがかなり引っかかった。



 「なあ、ミサ。そんなにそのEランクってのは悪いもんなのか?別にクエスト受けて色々するのが滞るようにも思えないんだが……」



 だから俺はそう質問してみる。だってそうだろ?ランクによって受けられるクエストが変わってくるってのはクエストへ連れて行って貰う前にリチャードに確認したから知ってるけど、そん時もEランクが受けるクエストの話はなかった。



 ドロシーはDランクだったからそれ以下の、つまりEランクのクエストだって選ぶ権利はあったのに、だ。



 「さっきも言ったように、Eランク冒険者というのは問題行動を起こした人間が入れられるランクだ。つまりAランクの人間だって加わることがある。それだと同じEランクの中で受けるクエストが同じ難易度というわけにもいかなくなるんだよ」


 「ああ、それは確かに」



 そういうことだったらしい。



 「だから、Eランク冒険者には自由にクエストを受けることを禁止してるんだ。受けて貰うクエストをあたしたちギルドの人間で選んで、それを達成して貰う。そして、それを何回か重ねると晴れてEランクを卒業、元のランクに戻れるという話しさ」


 「――だ、そうですよ?陽太くん。意外と簡単に元のDランクに戻れそうじゃありません?」


 「やっとこさ最低を抜けてもDランク……。つまりスタートラインってことなんだな……」


 「なんでそんな暗い方に受け取るんですかっ!」



 ――だってなあ?やっぱりめんどくさいもんはめんどくさいよ。やっとれっきとした冒険者デビューだと思って内心ワクワクしてたのに。あ、もちろん最終的な目的は忘れてないからな?俺はちゃんと家に帰る――きっと。



 「まあ、事情は把握したよ。それで?俺たちの冒険者免許証は?」



 俺は右手を前に差し出す。本来はこれが目的で俺たちはここに来たのだから。指定された時間を過ぎていることはギルドの数カ所の壁に接して取り付けられている時計で確認済み。



 あ、それから余談だが、今の世界の時計というのは今までの世界のものと少しも変わっていなかったりする。新しい時計が生まれていて、読み方を新たに覚えなければならないのかと思うと少し心配だったので助かったものだ。



 「そうだったね。君たちはこれを取りに来たんだった……はい、これが冒険者免許証だよ」


 「こ、これがですか!?」


 「こ、これが……!って、なーんだ。そこまで大したことなさそうだな」



 差し出した手の上に置かれたのは、丁度車の免許くらいのサイズの厚めのカード。背景は白で統一されており、言ってみれば至ってシンプルで事務的なカードだった。



 一方のリザはというと、初めて受け取った免許証に感動でもしているのかうっとりと見つめていた。そんなに喜んでいただけたのなら免許証の方も本望だろう。



 俺は受け取ったそれをポケットにしまうと、



 「んじゃ目的は達したことだし行くか、リザ。疲れたから宿でもとって寝よう。てかそろそろ死にかねない」


 「――あ、そうですね!ぐっすり寝て、それで明日目一杯働きましょう」



 流石にドロシーとクエストに行く前は軽く睡眠をとったが、こっちに来てからはまだろくに寝たことがなかったりする。だから今も眠たくて仕方がない。



 しかしどうしてかリザの方はあまり眠くならないらしく、驚くべきことに基本いつも眠気が感じられない。



 そういえばかつて孤島にいた時に、俺が「どうして眠くならないんだ?」と聞くとリザが「常に私はどきどきさせられてますから」なんて言っていたことがあった。あの時はあれ・・たちがリザの安眠を脅かしていると知って無茶をしたものだ。



 まあ、そんな俺をリザは「そういう意味じゃないんです!!」なんて言って止めてくれたのだが。あれは結局なんて意味だったんだろうか。



 「陽太くん?行きますよ?」


 「ん、ああ、そうだな。そんじゃミサ、また今度」


 「あ、いや、待ってよ君!」



 気を取り直した俺を、ミサが止める。あれ、俺何かしただろうか?



 「君、言ったじゃないか、あたしとの食事に付き合いなさいって。その約束を本日発動する。そしてこれはギルドマスターとしての命令だ。よって君に拒否権はないよ?」


 「ええええっ!?」



 う、嘘だろう!?こっちはもうどうしようもないくらい眠いのに、これから食事に付き合うなんて……そんなの過労で死んでしまうじゃないか。



 「無理だって!ぶっ倒れちゃうのが目に見えてるよ!食事処が大変なことになるよ!」


 「拒否権はないと言ったじゃないか」



 そう言って頬をぷくっと膨らませるミサ。いや、可愛いけども!可愛いけども!!



 「とにかく無理!これから睡眠とって、その後ならいいんだけど流石にこれからは無理だってば!これはマジで!」


 「――むう、友達も来るのに……」


 「じゃあますますダメだろ!こんな言葉知ってるか?”友達の友達が一番気まずい”って。まさに今この言葉をミサは反芻すべきだ!」


 「わかった、わかったよ。それじゃあ、次誘った時は絶対に来てよね?あたしは友達に君を紹介するのを楽しみにしてたのに、それを裏切ってまで君は寝ると言うんだ。当然奢ってもらうからね」


 「ギルドマスターが新米冒険者から金をぶんどるなよ!」


 「ははは、流石に冗談さ」



 この人、冗談を言っても本当に冗談なのかまるでわからない。



 それから俺は次回は必ず、との約束をしてギルドの二階、酒場のフロアをリザと共に出てエレベーターを待つ。すると、今俺たちが出てきたばかりのドアが勢いよく開いて――



 「リザッ!それから……貴様」



 ――そこには今まで根も葉もない噂をばら撒いていたドロシーがいた。最後にボソリと俺を呼んだ点、よほど俺が嫌いらしい。



 「これからどこへ行くつもりなのだ?聞く限りこの街へは来たばかりなのだろう?」


 「そうなんです。だから宿屋で泊まることになって――」


 「や、宿屋っ!?二人でか?二人で一部屋なのか!?」


 「ち、ちちち違います!別にあわよくばなんて思ってません!ええ、思っていませんとも!」



 え?あわよくばと思ってたんですか?思ってたんですかリザさん!



 「そんなふしだらな事になる可能性があるのなら……その……」


 「その?」


 「なんだ?」



 何かを提案しようとしたかに見えたドロシーが口篭る。なんだ?何か恥ずかしいことでも言うつもりなのだろうか。まあ、まさかこの軍服系女子に限ってそれはないだろうが。



 「う、ううううううっ!」


 「ごめん、全く伝わんない!なんて?」


 「うるさい貴様!貴様ではなく私はリザの身を案じてこれからこれを提案するのだ!断じて貴様を思ってなどではないし、そしてリザがあわよくばとかではなく本心から相部屋を狙っているのを察してのことでもない!」


 「あああああああっ!ドロシーさん!!ダメです!それは言っちゃダメなやつですーーっ!!」



 いや、もう目の前の赤面女子たちの言動がカオスすぎて何も伝わってこないんだが……。結局何が言いたいんだドロシーは。



 「つまり……その……うちに泊めてやっても良いと言うのだっ」



 ああー。なるほど、つまりこれはーー



 「ボーナスステージってことだな!!」



 俺にも春がやってくるらしい。


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