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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第七十一話 処罰を受けるみたいです

 「――それで、戦闘は免れなかったと?」


 「「はい」」


 「はあ……」



 エストリアにあるギルドの、カウンター。酒場のようなこの場所でギルドマスターである”ミサ・ミタニ”はため息をついた。



 この街、エストリアからやや離れた草原地帯から戻ってきた俺とリザとドロシー、それからCランク冒険者たちはそれぞれの報告等を目的にギルドへ訪れていた。因みに俺とリザは冒険者免許を貰うという予定もあったのだが。



 街に来るまでにも皆当然疲弊していた様子で、ギルドに着くまでにも行く時の倍近くかかってしまった。まぁ、取り敢えずは全員が無事に帰って来れたようで良かったと思うべきだろう。



 そう、その全員無事というのも、実はあれから森の方から死んだと思われていたもう一人のCランク冒険者が戻ってきたのだ。彼曰く、スライムの触手で地に叩きつけられた後に体を引きずり、逃げ惑ったおかげで辛うじて呑まれることもなく、なんとか生還したという。つまり、これで何も憂うことはなかったはずなのだ。



 なかったはずなのだが……俺とリザには一つ忘れていたことがあった。それが――



 「君の取ったその行動は、立派な規約違反だ」



 規約を無視し、戦闘に参加したことだった。



 そもそも俺とリザは体験という形でクエストに連れて行って貰ったわけで、それは戦闘も体験していいというわけではない。冒険者の仕事っぷりを目に焼き付け、参考にすることで今後の自分の糧にしていく。そういったものなのである。



 というのも、冒険者というのは危険と隣り合わせの仕事だ。なので急になんの予備知識もなくクエストに行ってしまうと勝手が分からず死んでしまうということがギルド設立時には多々あったらしい。それを未然に防ぐべく、この冒険者体験制度が生まれたそうだ。



 「確かに君ほど強ければ心配することもないだろうし、手を出さなかったら全員死んでいただろうというリザ君の話もおそらく本当なんだろうね」



 真剣な表情でこちらを見つめるミサ。俺は想像していたより重苦しいこの雰囲気に驚いていた。まさかここまで大事になるとは思いもしなかったもん。え、何?規約ってそんなに大事なもんだったの?



 「でもね、規約は規約なんだ。例えそれが君であったとしても、特別扱いはできない。それをしてしまっては他の連中に示しが付かないだろう?だから、君にはそれなりの処罰を受けて貰わなければならないんだ」



 処罰、か。しかしまあ、それも仕方のないことだ。ミサの言う通り俺だけだ特別扱いというわけにもいかないだろうし、それに俺もそれくらい甘んじて受ける覚悟で手を出したんだ。となれば、別に異論はない。



 「わかった。受けるよ、処罰」


 「そうか。――それからリザ君。君はどうするんだい?嫌なら別に君は処罰を受けなくても――」


 「受けます」



 俺が処罰を了承すると、ミサの質問がリザに向けられる。しかしその問いを遮り、即答してしまう彼女。うん、嬉しいような恥ずかしいような……。でも本当に付き合わせてよかったのだろうか。俺は一応リザに聞き直しておく。



 「リザ、本当に良かったのか?別に俺に合わせてくれる必要ないんだぜ?」



 しかし俺の発言に彼女は何を言っているのかとでも言うような顔をして、



 「私と陽太くんは、一心同体なんですよ。理由はそれだけです」



 なんて言ってきた。やばい、マジで可愛いんだけどこの子!



 「こらこら、イチャイチャしない!妬けちゃうじゃないかまったく……。ああ、そうそうそれでね、処罰のことなんだけど」


 「あ、はい」



 と、そこでどうやら俺たちへの処罰の説明が始まるらしい。でも、処罰って言っても何を課されるんだろな。まさかエストリアから追放ということはあるまいし……では金を払えとかだろうか。それはそれで困るんだよな、俺たち、絶望的に金がないから。



 「金を払えとか、そんなのじゃなければ助かるんだけど……」


 「いや、そんなのじゃないんだ。ただ、ある意味それよりきついかも知れないね。君はお金を集めようとすればいくらでも簡単に集められる実力の持ち主だから。――あ、そうだ聞き忘れてたよ。君、テラ・スライムを残虐な方法で殺したらしいね。その最中にも笑っていたとか、奇声をあげていたとか、色々と聞くけど本当かい?」



 話に尾びれがつきすぎている!?俺の戦闘シーンがかなり脚色されて伝わってるんだが……。誰だ?誰がそんな滅茶苦茶な情報を……。



 「Cランク冒険者数人が震えながら話していたよ。口を揃えてあいつは人間じゃねえって」



 あいつらか!くっそ、俺たちは変に目立ちたくないのに。そうして今頃どこかで療養しているであろう彼らを思っていると、少し遠くから弾んだ声が聞こえてきた。



 「――それでな、あいつは私を救ってこう言ったのだ!”大丈夫かい?まいすいーとはにー?”とな。どうだ?男のくせに少しは格好良いものだろう?」



 おい待てやこら。聞こえてるし、もうそこまでくると脚色なんてもんじゃねえぞ。どんな耳してんだあいつ……。



 声の主はドロシーだった。見れば同じDランク冒険者だろうか、同じくらいのレベルの女性に俺の話を口角を上げながら聞かせている。恥ずかしい上にマイスイートハニーとかそんなださいことも言ってないから今すぐあっちへ行って撤回してやりたい。



 ドロシーの話相手の表情も心なしか引き攣っている。やめて!ほんとに言ってないから!そうやって俺が恥ずかしめを受けていると、



 「こほん。質問を戻すよ?テラ・スライムは魔物の弱点である魔力の核、通称”魔核”を的確に攻撃しなければ倒せないのだが、あのサイズだからそれを見つけるのも困難だ。君はそれをどうやって?」



 なんてことを聞いてきた。



 そりゃあ、困難かもしれないけど、魔力が滲み出てたからなあ……。



 「いや、普通に魔力の塊みたいなところを狙って雷を集めて、そっから直接爆発させたよ?それが一番確実かなあと思って」


 「――はあ。君に聞いたあたしが馬鹿だったよ。そうだね、君はそういう規格外な子だったよ」



 別におかしなことだろうか?ただあまりにも弱点っぽいところを狙い撃っただけなんだけどな。



 「それで、処罰のことなんだけどね。君たちにはEランク冒険者になって貰う」


 「「Eランク冒険者?」」



 疑問に俺とリザの声が重なる。真っ白さん――リチャードからの話にはそんなのなかったぞ?



 そんな頭上にクエスチョンマークを浮かべていそうな俺たちを見て、ミサは少しクスリと笑って、説明を始めてくれるのだった。


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