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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第六十七話 この紙切れが目に入らぬかあっ!

ここに来てようやっと出したかったキャラが!

 舞台は再びカウンター。がやがやと活気に溢れ、酒を飲み交わす連中に何かを愉快そうに話す連中。多種多様な冒険者のいる中に一人、入り口付近で目をギラギラと光らせながら辺りを見渡す者がいた。そう、それはもちろん――。



 「あの子も違う……その子も違う……あいつも……なんか違うんだよな」


 「陽太くん、友達は選ぶものじゃないですよ!」


 「そりゃあそうだけどさあ!」



 ミサにクエストを受けたいなら友達に連れて行って貰えとの指示を受けた俺は、リザと一緒にめぼしい人を探していた。



 そもそも友達なんて世界停止以後にリセットされたようなもんだし、そうなればまた一から作るしかないのだ。とは言っても、俺に瑞希や悠斗のような友達が出来るとも思えない。俺は今までたまたまこんなゲテモノみたいな奴に付き合ってくれる人がいたからなんとかやれていただけで、いざまた一から友達を作り直せとか言われても、そりゃ無理な話だろう。



 しかし、早くこの世界におけるクエストってやつを受けておきたいと考えてしまうのも事実。なんせ今まで恋焦がれてきた冒険者だ。あのままの、世界停止のなかった世界だったらまずこんなことにはならなかっただろう。



 「そう思って周りを見てみるけどさ、やっぱ俺たち強すぎる気がするんだよな」



 今、俺は神魔眼を発動させている。



 リザが友達を選ぶなと言う意味は当然理解できていて、俺もただ仲良くなれそうな奴に連れて行って貰いたいんだが、俺たちは冒険者ビギナーなわけで。つまりある程度実力を持った人に連れて行って貰った方が良いだろうと思ってしまうのだ。そう思うのだが、



 「私には神魔眼なんてスキルないのでわかりませんが……そんなに皆さん強くないのですか?」


 「ああ、今ぱーっと見た感じでも一番レベルが高かったのは41。丁度ミサの半分位だな」


 「冗談……ですよね?」



 俺の返答にリザが頬を引き攣らせてしまうほど冒険者各員の実力が低いのも事実。またそのスキルも、『身体能力強化(小)』や風属性魔法『ウィンド』、『ジャンプ』に『右腕巨大化』とかいういかにもしょぼそうなものの数々。中には『散髪スキル(中)』なんていうお前本当に冒険者で良かったの?みたいな奴もいた。



 でもこうして人のスキルを見てるのは中々に楽しいものでもあったりする。こいつはこんなのが得意なのかーとか、あーそんな顔してるわ、とかって一人で勝手に盛り上がったりすることも少なくない。そんな経験も俺たちがあの魔境のような島を出ない限りは得られなかっただろうし、その点俺は凄くリザに感謝してたり、してなかったり。



 「この際相手のレベルとかは度外視して人当たりの良さそうな子を選んじゃうか?そこの可愛い女の子とか!」


 「陽太くん?少し下心を感じるのですが気のせいでしょうか?――女の子を誘うときは一度私を通してください」


 「待ってリザさん、笑顔が怖い!」



 笑顔の割に声色に明るみのないリザ。



 正直なところリザの存在だけで華やか要員は十分すぎるほど間に合っているのでなんなら男でもいいんだけど……。



 「あ、そうです!もうなんだか誰でもいいのでは?というような雰囲気になってきたので、不肖このリザから一つ提案があります」


 「いやいや、別に誰でもいいわけじゃないからな?」


 「次にそこから入って来た人、というのはどうでしょう!レベル、スキルは問題外とします!」


 「すまんリザ、話聞いてた?」



 リザのやつ自分の意見押し通そうとあからさまに無視しやがったぞ。ってか、そんなランダムな決め方でいいのかほんとに。



 でも確かにステータスなんかもどうでもよくなってきたな。それよりも今は普通にクエストってのがどんなもんか知っておきたい。ということで――



 「ま、いいぜ。今から入ってきた子な」


 「はい!文句なしですよ!」


 「もちろん冒険者であるのが条件だからな」



 そう言いながら扉の少し前に立ちふさがる俺とリザ。こちらはもう入ってきた者を取り逃さない構えだ。もしリザに不埒を働くような男なら悪即斬、させて貰うが。



 だがしかし、

 

 

 ――――――。


 ――――――。


 ――――――。



 「誰も来ないな」


 「ですね」



 その場で一度向き合う俺たち。身構えてからというもの、一向に人が訪れない。こんなに人来なかったっけ!?待ち始めたら途端に来なくなったんですけど!



 前方にある扉は開く気配すら見えず、ただただ固まってそれを見据える俺たちを、周りの冒険者諸君は一体どう思っているだろうかとかなり心配になる。



 だがそれも束の間、待ち侘びた時は不意に訪れた。



 「な、何をしておるのだ?貴殿ら。入口の近くでそう堂々と立たれてはかなり邪魔になるのだが」


 「え?何事――ってうおっ!」



 突如扉の前に黒髪に黒い軍服を着た女性が現れた。見れば俺たちに少し不機嫌そうな目を向けている。そりゃあそうだ、扉の前で仁王立ちしている男がいたのだから、訝しまない方がよっぽどおかしい。



 「あ、申しわけありません。少し助けを借りれそうな人を探していまして……お話をお聞きして貰ってもよろしいでしょうか?」



 そんな高圧的にも見える彼女を前にしても臆せず話を続けるリザ。こういうところはかなり尊敬できるよな、俺にはとてもじゃないが無理だ。



 「ほう。まあ、別に構わないがそれで?どうしたというのだ」


 「聞いてくださるのですね!ありがとうございます!実は私たち、クエストの受注がしたいのです」


 「ああ、それならそこで――」


 「あ、いえ、それにはまだ続きがあるんです!それで、受けようと思ったのですが私たち今日ここのギルドに入れて貰ったばかりなので冒険者免許証がなくて……」


 「ああ、なるほど。今度こそ理解できたぞ。つまりは体験として私に連れて行って欲しいということだな?」


 「はい、そうなんです!」



 お、どうやら俺抜きでも上手く纏まったみたいだな。というか、ここに来てからというものリザのコミュ力がやばい。俺も別に高いわけではないが、コミュ障というわけでもない。しかしそっちへ来てからの彼女のコミュ力というのは常々驚かされる。それは今の彼女の臆することないお願いからも見て取れるだろう。



 「ところで、それにはそちらの男性も付いてくるのか?」


 「はい、そのつもりです」


 「そうか、了解した。――ならば、断る」


 「なるほど!わかりました――って、え?」


 「え?あれ?」



 最後のとぼけた声は俺の声だ。なんせ今まで口を出していなかったのにも関わらず言葉が突いて出るほどの衝撃。え、なんで?なんで急に断られたの?俺は思わず少し背中に冷や汗が流れたのを感じた。



 「だから、断ると言ったのだ。貴女のお願いは聞けん。すまないな」


 「ちょいちょいちょい!ちょっと待った!」



 平然と立ち去ろうとする彼女を俺が引き止める。まだ訳も聞いていないのに去らせるわけには行かない。



 「なんだ喋るな煩わしい。貴様が一度息を吐くだけで反吐が出そうになるというのに」


 「あ、え!?なに今の!?処理に少し時間取るくらいの罵声を浴びたよ!?涙腺が潤みだしたよ!」


 「たった今喋るなと言ったのが聞こえなかったのか貴様は。これだから男というのは嫌なのだ。頭は綿が詰まっているのではないかと思うほど軽く、ただ肉体のみを鍛える単細胞。そのくせ女の前に立つとすぐさまつけ上がる」



 あ、これはなんとなくわかったわ。断られた理由。



 リザも何かを理解したのかチラッと俺を見るとすぐに視線を黒髪軍服へと戻し、



 「あ、あのー、ひょっとして私たちの誘いを断った理由って……陽太くんでしょうか」


 「陽太くん?それが脆弱そうな貴様の名なのか。はっ、良い名前じゃないか、その見た目によく合っている。そして、その問いの答えだが……その通りだ、よくわかったな。そちらに男性がいる限り、私は貴方を連れて行く気など一切ない」



 やっぱりか。俺を見る目がどうにもおかしいと思ったんだ。あの視線は高校時代を彷彿とさせたね。



 それにこの人滅茶苦茶美人だし、その高圧的な態度からしても相当な実力者であることは間違いない。となればこんな人を逃すのはかなり惜しいわけで。



 「頼む!この通り!」


 「おい、この通りっていうのは両手を合わせる程度のことなのか?土の下に座ってみてはどうだ?」


 「土の下に座る?」



 彼女の発言に対し不思議そうに小首を傾げるリザ。リザ、これは土下座を要求されているんだよ。そんな緊迫した状況でその可愛さはないかな。ほら、にやけたらまずい状況だからさ。



 しかし、そんな緊迫した状況にも屈しないのが俺、秦瀬陽太である。



 俺はとっておきを出すべく、右手を右ポケットへと突っ込む。さあ、そこから出てきたのは――!



 「これが目に入らぬかあっ!!」


 「そ、それはーー!?」



 ただの紙切れ。しかしその紙切れはこのギルド、下手をすればこの街でもトップクラスの効力を持つ一枚の紙切れであった。


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