第五話 伝説の剣が良かったです。
すいません!少し忙しかったため、投稿が遅くなってしまいました。また頑張ります。
茹だるような暑さと容赦のない日差しが、ジリジリと俺の肌を突き刺す。
校門を抜けて学園からの脱出を図ろうとした俺だが、どうやら強行突破すぎたらしく失敗に終わってしまった。
考えてみれば、本来なら今頃はエアコンの効いた教室で、授業を子守唄に思う存分眠っていたはず。
もしくは目前に控えた夏休みをいかに怠惰に過ごすかについて考えてたかもしれない。
しかし現実を見てみよう。
後ろからは得体の知れない奇妙な生物……いや、あれは生物でいいのか? まあ、いいや。
そしてこの炎天下に、もはや走る俺の障害物と化してしまった生徒の皆様。
「はあ……」
なんともため息しか出ないシチュエーションじゃないか。
何より先程言った暑さ、これが結構キツイ。
何がきついのかというと、簡単に言えば太陽さんがニートへと転身なさったのだ。
この意味のわからない現象が始まって以来まったく西へ動いてくれる気配がない。
その上まだ真っ昼間だったため、かなりきつめの日差しが延々と俺を苦しめる。
この太陽の動きによって、やはり時間が止まってる説が有力になったがやっぱりそうなのだろうか。
だとしたらなぜ俺だけがこんなに動き回れるのか、わからない。
「はーー、ふうーーー。上手く撒けたみたいだな」
また振り返ると、あれが校門へと引き返していくのが見えた。
あわよくば俺が校門から遠くへ誘導し、隙を突いて逃げ出そうと思っていたのであの動きは結構痛い。
あれも多少は考える頭ができているようだ。
ただがむしゃらに走っていると、気が付けば俺は武道場へと続く通路にたどり着いていた。
武道場というのはこの学園にある建物の一つで、名前の通り様々な武道の練習が行われたり、またそれの道具などが置かれたりする場所だ。
と、そこで俺は良いことを思いつく。
「あそこなら武器とか置いてあるかもしれない!」
武器を用いれば奴らに一矢報いることもできるかもしれないな。
学園脱出への希望が見えてきた気がする。
そうと決まればとっとと向かってしまおう。
武道場までの道のりは短い。俺は足取りを軽やかに、武道場へと向かった。
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目の前には重厚な鉄製の壁。
俺は武道場の前に到着した。
扉はひんやりとしており、走り疲れてすっかり熱くなった俺にとってはとても気持ちがいい。
思わず俺は扉に向かって頬ずりをしてしまった。
「はあーーーー。生き返るーーー」
こんなことをしていると周りから変な目で見られる、なんてことは今はもう考えなくていい。
体ごと扉に密着させ、やがて俺の体温によってぬるくなってしまった後に、俺は扉から体を離した。
名残惜しいけどそろそろ行こうかな。
銀色の凹んだ取っ手に手をやり、横に引く。
扉はずっしりと重く、ゆっくりとしか開かなかったが無事に開いた。
俺は特に何のためらいもなく中に入る。
中には畳が敷き詰められている所や、板張りになっている所もある。
柔道着や剣道の防具等も置いてあり、中の様子も特に変わったところは見当たらない。
そこで俺は本題である武器探しへと行動を移すことにした。
しかし、
「あれ、思いのほか少ないな。柔道とかは素手でやる競技だからそんなもんやっぱ必要ないのかな。だとしたら見当はずれだったなー」
武道場内には特に目立ったものはなかった。
ただ一つ可能性がありそうなものといえば、
「まあ……これだろうな」
俺は大きな箱に入れられている数本の竹刀に目をやる。
まあ無いよりはマシなのだろうが、これでやつらを倒せるという気になれない。
ていうかあいつらは物理攻撃でもダメージが通るのだろうか。なんだか透けて、通り抜けてしまいそうな気がする。
「持っておくだけ無駄じゃないか」
俺はそこにあった竹刀のうち、一本を手に取ろうとする。が、中にキラリと光る刀身が見えた気がした。
まさか――な?
「うおっ!なんだ!?」
そんな戸惑い真っ只中な俺の、神魔眼が発動した。
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アイテム 『日本刀』 レア度1(上限は6)
・どこにでもある、ありふれた日本刀。
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いや、ありふれてるのかよ。
箱の中に一本だけ、明らかに竹刀ではないものが紛れていた。
もちろんこんな物騒なものはここには置いていなかったはずだ。
ここは普通伝説の剣とか拾っちゃう都合のいい展開を持ってくるべきだろ! なんだよ日本刀って! レア度なんか表示されなくともわかるわ!
「はあ……」
しかし竹刀よりはマシだろうし、ここは喜んで受け取っておこう。
にしても今日はよくため息をつくな。
俺はひと振りの日本刀を手に、武道場を後にする。
都合よく武器まで手に入れてしまったんだ、やることは一つだけだろう。
もういっぺん勝負してやるよ、正体不明野郎と。
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