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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第五十七話 ギルドマスター

 「な、ななっ!何が起きているのですか!?覇天が付けても壊れない腕輪が……壊れたっ!?」



 目の前の突飛な出来事にサングラスを傾けて驚愕するビルが言う。いや、何が起きたってそれはむしろこっちが聞きたいんだが……。



 「な、なんかすんません壊しちゃって。でも俺たち、弁償できるほどの金は持ち合わせてないんすよね……」



 俺はまず弁償なんてできないぜ的な発言をビルに向けていた。だってこの状況は絶対お金払わされる流れじゃない?なら最初に断りだけでもいれておいて、後で好きなだけ俺をこき使ってもらうしかなさそうだもんな。



 「何を冷静になってるんですか!こ、ここ壊しちゃいましたよ、あの高そうな道具!これって私たち、怒られますよね……?」



 俺の服の裾を引きながら言うリザ。うわ、怒られますよね?って!当たり前だよリザさん!ていうかそれどころじゃないよ!さっきは何故か冷静に判断してたけど、実際これ弁償すんのにどれだけ時間食うかわからないからね。下手したら一生こき使われ続けて……!



 「どうか少しでも!少しでも良いので俺たちに自由をっ!」


 「急に何を言い出すんですか!?」



 部屋の中で阿鼻叫喚する三人。その様はさながら地獄絵図のようで、



 「マスターに怒られますーー!」



 と嘆くグラサン黒人メイドの男性に、



 「まだこの世界に舞い戻ったばかりなのに……」



 と行く末を憂う高校生。それから、



 「怒られますーー!」



 ただただ怒られるということだけを悲しむ金髪翠眼の少女。それら一人一人の凄惨な見てくれは、とても一つの部屋に収めておくにはもったいない濃さである。



 「なーにさ、ビル。帰ってきてみれば騒がしい声が広間まで聞こえてくるじゃないか。何かあったのかい?」



 しかしそんな空間も一人の人物の訪れにより静寂へと変わる。ドアを押し開けて現れたのは薄桃色の髪をボサボサにした大人の女性。しかし、髪はボサボサでも漂う雰囲気にはとても気品があり、一見掴みどころのなさそうな人物に見える。瞳の色は勿論黒だ。



 「えっと、誰?」


 「どなたでしょうか?」



 彼女の登場から少しの静寂を経て、俺とリザの発した言葉が重なる。この受付のヤバイ人に気軽に話しかけてたところを見るに、おそらくギルド関係者ではあるのだろう。俺たちは彼女が答えるのを待つ……のだが。



 「な、し、知らないのですかこの方を!」



 突然ビルが大きな声を出した。何事かと思っていると、薄桃色髪の女性が部屋の中を目で舐め回すように見渡し始め、かと思えば何か楽しそうに笑って、



 「ボクを知らないってことは、結構遠くから来た子なのかもしれないねー。無理もないってやつさ。それより、それ。君がやったの?」



 尚且つ砕けた腕輪を指差してそう言ってきた。結構遠くからやって来たことも、腕輪を壊したのも俺だったのでそこは大人しく首を縦に振ると、その反応を見た彼女は先ほどのどこか楽しげな笑顔と打って変わり、表情を真剣なものへと変えて言う。



 「――ビル、用事ができた。この子等連れてくね。あとビルは別に悪くないから、そこまで気に止むことじゃあない。わかったら仕事に戻りなよ」


 「りょ、了解です!」



 ビルがそそくさと部屋から出ていく。どうやらこの女性、かなり偉い人みたいだ。ギルドの重鎮とかだろうか。もしくはギルドマスターの奥さんとか?それより今俺たちを連れて行くって……。



 「それじゃまあ、行こうか!」


 「いや、ちょっと待て!これ壊したのは悪かったけど、そんなに大事なもんだったのか?今すぐ殺されるなんてのは流石に勘弁して欲しいんだけど」



 あまりに唐突に出発宣言をする彼女に驚いた俺は最も恐れていたことを視野に入れる。ひょっとしたらさっき壊したのは相当重要なもんで、それを壊した一文無しの俺らを殺しちゃうって可能性。だが、



 「いやあ、そんなことはしないさ。ただちょっと痛い思いはするかもだけど」



 どうやら死にはしないらしい。痛い思いはするんかい、とは思ったが俺はそこだけでも感謝をしておく。生きていれば、悠人や瑞希に会う機会は幾らでもあるわけで、つまりまだ道は閉ざされない。リザだけはなんとか助けてもらって、俺が全部受けてやるしかなさそうだな。なんて決意を固めたりしていたのだが、



 「何か変な想像をしちゃいないかい?ボクは別に君たちをとって食おうってわけじゃないんだよ?」



 とのことらしく、取り敢えずは安心する俺とリザ。じゃあ、一体俺らはどこに連れてかれるんだ?目の前の謎は深まるばかりだったが、そんな疑問も彼女の次の言葉によって吹っ飛んだ。



 「それからさっきの質問だけど、ボクはこのギルドでマスターやらせて貰ってるミサ・ミタニだ。それじゃいこっか、街の外!」


 「ギルドマスター!?」


 「――って、なんです?」



 軽々と出てきたそのギルドマスターという存在が目の前に現れたことに、俺はただ面食らうしかなかった。それに街の外って……。どうにでもなれ、なんて自棄になってしまったこん時の俺の気持ちも少しはおわかり頂けただろうか。


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