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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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第五十六話 なんでこうなった


 俺が連れてこられたのはさっきの大きな広間に入って左手にあった受付のそのまた隣の扉を抜けた所。小さな個室だった。さっきの部屋とは打って変わってかなり簡素な部屋だったので、なんだか俺に森の中のあの小屋を思い出させた。



 「あなた方にはこれから自分のステータスを測っていただきます。申し遅れました、わたくしはこのギルドの受付役を任されているビル、と申します。以後お見知りおきを」



 本当に流暢な日本語……って感心してる場合じゃない!



 「なんなんだよ!ステータス?ステータス測るのか?ここで」


 「はい、そうなります」



 え、何?もうこのギルドに登録する準備でもしてるの?早すぎやしないか!?俺まだ何にも言ってないんだけど……。そんな俺の不安を他所に黒人メイドの男は淡々と準備を進める。てかホントにこの人キャラ濃すぎだよ。なにしたらそんな格好にたどり着くんだよ。俺は彼が本気で心配になった。



 「あ、あのー、手に持っていらっしゃるそれは一体……?」



 そこでリザが口を挟む。気が付けば黒人メイドの手には銀色の腕輪が握られていた。見ればその腕輪の中央には金色の玉が埋め込まれており、その手の中で激しく己を主張している。



 「これは特別な魔石が埋め込まれている腕輪でして、これを腕に付けた者のステータスに応じて魔石の金色が変化します。正確には、変化がない場合は普通、平均を少し上回るくらいだと青、そこからその者の素質に応じて緑、橙、赤へと変化します。まあ、赤色に変色するのは第一世代くらいのものですので、特に気にする必要はないかと」


 「まあ、理解はできたが……」



 それを聞いてふとあることが気になった俺は、ビルに「少し待ってくれ」と言って不思議そうにするリザを構わず部屋の隅へ連れて行く。



 「どうしたんですか陽太くん?」


 「どうしたっていうかさ、俺たちってさっき車中で話を聞いた限りでは第一世代なわけじゃん。ここでバレたら大事になったりしないかな?第一世代の人間って少ないらしいし」



 そこでようやくリザはなるほど、とでもいうような顔をする。俺の言いたいことが伝わったみたいだった。



 「確かに心配ですね……。私たちってまだこの世界のこと全然知らないですから、一つ一つの決断にも慎重にいかなければいけなそうです」


 「だよな」



 さあて、そうなるとどうだろう。あの魔道具を欺けるとも思えないし、でもギルドには入っておきたい。



 「何か良さげなスキルあったっけな……」



 色々と考えるのも面倒なので、とりあえず俺は『創造』に頼ることにした。脳裏にはスキルボードが浮かび上がる。この中から自分の求めるスキルを探しだすわけだが、果たしてこの魔道具を欺ける都合の良いスキルがあるのだろ――あったわ。


=========================================


 『魔道具遮断アイテムキャンセラー

 ・魔道具による己への干渉を遮断する。


=========================================


 ありがたいことに、願ったままのスキルが存在していた。俺はそれを迷いなく自分に付加。これで俺の覚えられるスキルのストックは――だ。



 「リザ、俺の方は何とかなったわ。それよりリザは大丈夫なのか?」



 そうなれば、スキルによりおそらくあの魔道具の効果を遮断できる俺は置いておくとして問題はリザの方だ。不安になった俺はリザに問いかける。だが、



 「ええ、おそらく平気ですよ。私ってスキルが強いだけですから。この世界のレベルの基準はわかりませんが、私から見て明らかにレベルの高い陽太くんは本来なら引っかかりますが、私は平気なはずです」



 なるほど。確かにそんな気はするな。それにどのみち他に策があるわけでもないんだから、このままの流れで行くしかないんだ。俺はビルの方を向き直る。



 「もうよろしいのですか?」


 「ああ、準備万端だね」


 「こっちもです!」



 この後に腕輪を付ける順番を決めることになり、俺が先につけてその後にリザが、ということになった。



 そして訪れる装着の時。



 内心かなりどきどきする。スキルはちゃんと付加したはずだから上手くいくとは思うのだが、結局はやってみないことにはわからない。結果がどうであれ死ぬわけでもないんだし、気を楽にして受けよう。俺はそう考えることで自らの気持ちを落ち着けた。



 「では、付けてみてください」


 「はい」



 俺の手にその腕輪が手渡される。あ、これ持ってみるとそこそこに重いな。特にこの魔石のところ。これを日常生活で装飾品として使うなんてのはかなり無理な考えだろう。こんな重いのをずっと手につけてりゃリザの腕はそのうちぽっきり逝きかねない。そんじゃ、付けるか。



 「これはこの世界において最も高レベルである”覇天”が付けても壊れないという逸品!まず壊れたりする心配はありませ――」


 パリイイイインッ!!


 「うおわっ!ぶっ壊れたぞ!?」


 「――ンンッ!?」


 「ひ、陽太くん……」



 突如弾けとんだ腕輪。パラパラと散りゆく粉々になってしまった魔石。サングラスを間抜けに傾かせて驚愕に口を全力で開かせる受付の黒人メイド。そして「やっちまったなおい」な顔をするリザ。



 んー、ええっと?想定外の出来事に困惑する俺は一言。



 「――なんでこうなった」


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