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世界は異世界を目指した。~20の倍数でスキル無双~  作者: 小犬
一章 特異点は日常系を目指した
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閑話 僕らの停止世界説明会

 怪奇!説明を全てぶん投げる犬!(本当に申し訳ない)

 「「こんにちはー!」」



 時之宮ときのみや学園の二階、二年B組の教室で二人の男女による快活な声が聞こえる。



 「今回では読者の皆さんより感想で届けられた幾つかの質問に答えながら、これまでの話を整理していきたいと思います」


 「進行は僕、序章になってから出番のなさそうな佐野悠斗と、出番どころか固まったままの東野瑞希の二人で行わせて頂きます!」



 どこの誰に向けているのかは定かではないが、どうやら何かの説明を行っているらしく、彼らを除いて誰もいない教室において、その言動はかなり虚しいものとなっている。



 「早速ですが、最初のお題です!」



 悠斗が進行役両名を紹介した後、そのまま口を開く。



 『第四話にて、竹刀のうち一つを手に取ってからいきなり日本刀に変化したような気がするのですが、そのへんどうなんですか?』 



 「ああー、なるほど」


 「これは確かにそう見えるわね。明らかに駄犬が悪いわ」



 二人とも納得したようにうんうん、と頷く。どうやら二人ともその駄犬というのが悪いという方向で意見が一致したらしい。



 「でもこのシーンを指摘してくれた奏弦さんは実際良いところに目をつけてくれていて、これはこの停止世界における変化の一つでもあるんだ。もちろん元々この剣道場に日本刀なんてものが置いてあるわけがなくて、僕たち的にこれは世界がおかしくなってから変化したと受け取って欲しかったんだ。だから陽太が竹刀を手に取ってから変化したっていうわけではないんだよね。同様の変化は世界中においても見られてるよね、急に謎の森が発生した、とか」



 悠斗が丁寧にお題に対する回答を述べる。やはり駄犬とかいうのが諸悪の根源のようで、その話を瑞希は忌々しげに聞いている。



 「ということで、次に行かせてもらいましょう」



 すると瑞希の合図でお題が切り替わった。



 『最近の世界観についていけなくなった』



 「これは……」


 「駄犬がすすり泣く声が聞こえてくるわね」



 今度は二人して苦汁を飲まされたような顔をする。どうやら何か痛いところを突かれたようだ。



 「これは前にも言われていたのだけれど、どうやら作者には一人で突っ走る傾向があるのよ。つまり、読者が置いてけぼりにされてるのよね……」



 表情をそのままに、瑞希が告げる。これは言われると思っていたのか、悠斗の方も申し訳なさそうに俯いている。教室の中はすっかり葬式ムードだ。その空気にいたたまれないと言わんばかりに悠斗が口を開いた。



 「この世界のことなんだけど、感想で三谷毬藻さんっていう良い解釈をしてくれる人がいてね。凄く駄犬が喜んでいたよ」


 「そうね、二つの世界が重なっているというのは本当に素晴らしい解釈ね!そのままで百点だわ」


 「こうして上手く読み取ってくれる読者の方がいるんだなって思うと本当に助かるよね……」



 どうやら彼を讃えたいようで、急に喜びだした彼らは両手を叩き、乾いた音を鳴らす。



 「でも同時にその人からは質問とかも沢山あったんだよね。それについてもこれから言ってもいい範疇でお答えしたいと思います!」



 悠斗が思い出したかのように言うが、瑞希は少しばかり顔をしかめた。何か思うところでもあるのだろうか。しかしそんな変化に気付かないまま悠斗は進行をする。



 『第五十五話について。八百屋や魚屋というのが出てきたが、この時間の止まった世界においても植物などは成長するの?魚は動いてるの?』



 「やっぱり……」


 「ど、どうしたの?」



 瑞希の呟きを悠斗が拾う。彼女のあまり良くない予想が的中したようで、またも難しそうな表情を浮かべている。そんな瑞希に気になった悠斗は、瑞希にその理由を訊ねた。



 「これった凄く説明が難しいと思うの。上手く伝えられるのかって考えると不安だわ」


 「それは確かにそうかも……」



 二人して先程から難しそうな顔をしてばかりだ。誰が二人をこんなにも困らせているのかと考えると怒りを覚えてしまう。



 「これはね、時間の概念が存在しているのよ、私たち・・・自身の中では。つまり、私たちは老いるし、お腹も空く。けれど、停止してしまったままのこの世界の時間は止まったままなの。だから日は沈まないし、地震なんかも起きないわ。でも、未だに固まったままの人々は老いることもない。そしてここで大事になってくるのは、”第一世代”と”第二世代”の話」



 話の途中であるのもかかわらずそこで瑞希が言葉を切った。悠斗が瑞希の前に手を出し、制止を促したからだ。次は悠斗が口を開いた。



 「第一世代が動き出した段階では、実は動植物ごと止まってたみたいなんだ。だからあの時は食料問題なんかも気にしてたらしいんだけど、何より第一世代は人数が少なかったから大事には至らなかったらしいんだ。だけど、第二世代が目覚めだしたのとほぼ同時期に半数以上の動植物も動き始めた。そういう意味じゃ彼らも第二世代の動物なんだよ。だから虫の音も動物の声も聞こえないっていうのはつまり陽太とリザちゃんが第一世代であるってことの何よりの証明だよね。あ、因みに第一世代の動物はまず間違いなく人間だけだからね?」


 「それから、世界停止の呪縛から解き放たれた第一、第二世代の人々は当然その呪縛に縛られていない物も作れるわけで、つまり時計なんかを作ってもちゃんと動くわ。というかむしろ必須よね、この世界じゃ日が傾かないから。だから第一世代の人間が時計は作っていて、その時を軸にカレンダーなんかも売ってあるわ。確か作ったのはぎ――」



 「だから!それと同じ考えで、僕たちが世界停止以降に植えた植物なんかも普通に成長するんだよ。農家の人たちはスキル持ちの人たちと何らかの施設を作ってその中で育ててるらしいよ。それでもそんな大変な思いをして作ってるわけだから、世界停止以前の世界に比べるとある程度価格は高まってるんだよね。でもこの世界や、まだ動けていない人間を含めた動植物には時間の概念が存在しない」



 瑞希が何かを言いかけたが、何か言われるとまずいことだったのか慌てた悠斗がそこに割り込む。



 「ま、まあともかく、私たち動き出した人間には時間の概念は存在しているけど、未だ止まったままの人間を含めた動植物の時間は止まったままってことね」



 ようやく回答が纏まったらしく、かなり疲れた様子の二人は軽く息切れしている。



 「じゃ、じゃあ最後のお題かな?」



 『時間停止してる女子にエロいことしないのは男子としてどうなの?』



 「確かに。陽太ってあんまり二次元の女の子以外の話とかしてこなかったなー。瑞希ちゃん、陽太ってひょっとしてそっち系だったりするの?」



 悠斗が興味津々に瑞希に問いかける。が、



 「――もうお開きにしましょう。この質問には答えられないわ」



 瑞希から表情が消えた。かと思えば、何かを悔やむような顔をする瑞希に、悠斗は何かまずいことをしたかと顔を青くする。そんな悠斗を見た瑞希は少し表情を緩めると、



 「はあ……。何も佐野君が悪いわけじゃあないわ。問題は、陽太自身にある。でもとりあえずは……今のあの子に恋愛とかそういうことなんかは無理」


 「そ、それは――」


 「――だったなら私だって今頃……」


 最後に瑞希ちゃんがポツリと言葉を吐いたのが聞こえた。突如訪れた予期せぬ展開に悠斗は目を回したが、ここは黙ってこのままにしようと思った。陽太のことで知らないことがあるというのはなんだか嫌だが、瑞希の反応を見るにここは触れてはいけないところな気がしたからだ。それからふと気が付けば、瑞希はその顔を再び笑顔に変えて、その視線を再び前へと向けている。



 「とにかく!それもいずれわかるだろうし、この世界についても話数を重ねて理解が深まっていくはずだから、今日はここでお開き!また本編で会いましょう!」


 「そ、そうだね!次話をお楽しみに!」



 こうして彼らの、彼らによる彼らの物語の説明会は、半ば強制的に幕を下ろしたのであった。


 こんな前代未聞の話があったでしょうか。自ら設定を明かすというのも中々情けないものでありましたが、読者の皆さんに胸のつっかえを感じさせず読んで戴くのにはこれが一番かな、と思いました。どれも作者の文章が拙かったが故です。これを機に皆様の理解がより一層深まることを切に願っております。

(なお、この説明会は本編では行われておりません。作者の脳内を覗き込んだ、そんな感じに捉えて貰えると助かります)

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