第四話 学園脱出
さて、どうしたものか。
俺は焦燥に駆られていた。
スキルの存在、ステータスの存在から、日頃ラノベやアニメ等で見るような冒険譚を想像してしまった俺は、後先考えずに自分の手持ちスキルの一つに『神魔眼」を付加してしまった。
「やっちまったなー」
心から後悔するが、いくらそうしていても別に俺に対して何か救済措置があるわけでもない。
ああ、ほんと失敗。
「そのうえまた出会っちゃうんだもんなあ」
そう、俺の前にはまたしても例のあいつが立ちふさがっていた。
今いるのは、無事に校舎から脱出し、靴を履いて外へ出て、校門へ向かう道の途中なのだが。
なあ、頼むからいい加減俺を学校から出してくれよ。
『神魔眼』くらいならくれてやるからさ。
だが、あちらはまだこっちに気付いていないようだ。
だがまだ俺のことを探しているようで、さっきから辺りをきょろきょろと見回している……ように見える。
「あれ、目が無いように見えるもん」
傍から見てもあれは本当に謎の物体、いや、そもそも物体なのか? あるいは気体……まあそれはないだろうが、とにかく甚だ疑問である。
「じゃあ早速正体を見破ってみようかな!」
俺は少しうきうきしながら『神魔眼』を発動した。
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名前 不明
Lv11
・HP 100
・MP 10
・AP 60
・DP 60
・SP 30
種族 不明
性別 不明
年齢 不明
スキル 無し
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いや、不明多いな。
なんだよ! 『神魔眼』がポンコツなのか!? それともあいつが規格外なのか!? 俺の期待を返せ!
とにかく一度気を落ち着かせる。
「ふう。まあ、ありゃ勝てる気しないな、俺まだレベル1だし。魔法使えるわけでもないし、スキルも無いも同じだし」
ステータスを見れば、こちらの方が分が悪いことは一目瞭然だろう。
辛うじて素早さでは俺が勝っているので、ここは逃げ切るしかなさそうだ。
裏口から出よう、そう考えて回れ右した時だった。
少し奥の方、俺がこれから逃げようとしていた方角にもあれがいた。
しかもさっきのよりかなり大きいし、出し抜ける気が全くしない。
「あ、もうあれはステータス見るまでもないわ」
困窮する俺。
どうしよう、表口から行くしかないじゃん。
裏口から出ようなんて、死にに行くようなもんだろう。
ここは大人しく小さい方が気付いてない隙に表の校門を駆け抜けよう。
そう思い立ち、俺は隙を伺う。
どっかで良いタイミングがあるはず、そう信じて。
だがしかし、現実は違った。
だってよくよく考えたらあれは……。
「目ぇどこなんだよ!!」
そういえばどこを向いてるのか全然わからないんだった。
弱ったな……どうしようか。
あれがどこを向いてるかわかんないし、何処かへ行くのを待っていようとも思ったけど、頭が良いのか本能的なものなのか、あれは全然校門の前から移動しようとしてくれない。
どこかで俺のことを伝えたのか、あのでかい方も同じくだ。
散々考えた末俺の出した答えは、イチかバチか表から駆け抜けるというものだ。
頭の悪そうな策だが、実際これくらいしか思い浮かばなかった。
学校で籠城、なんてことも考えたがやっぱり家のことも心配だ。
なるべく早くここから出たい。
「っしゃ、行くか」
俺はタイミングを図る。
なんとなく、今なら行けそうだという直感を信じる。
それから少し経ったが、ビビってなかなか足を踏み出せない。
喉もからからと乾く。
しかしこの足を踏み出さなければ始まるものも始まらない。
そして、
今だ!
俺は全力で駆けた。
校門までの距離は50mほど。
可能性は大いにある。
気付くな、気付くな、気付くな!
後まだ20mはあるだろうか。
この絶望的な距離で、あれがピクリと揺れた。
「あ……」
これは多分……。
「気付かれたか」
とりあえず急ブレーキをかけて停止。
しばしの静寂。
立ち尽くす俺たち。
あれ、気付かれてない?とにらめっこ状態のまま安堵しそうになったその数秒後。
あれが急にゆらりとこちらへと動き始めた。
「んなわけないよなチクショウ!」
またしても回れ右、しかし真っ直ぐ行けばあのデカブツ。
「ああ、もうめんどくせえなくっそ!!」
こうしてまた俺たちの終わりの見えない競争が幕を開けたのだった。
結果としては学園脱出に失敗してしまった、という回になります。
よろしければこれからの執筆活動のためにもご指摘、感想等頂けると幸いです。