第四十七話 青き驚異の襲来
ツイッターでも言ってましたが、そろそろこの序章を終えたいですね。前置きが長すぎて気持ちまだ本編に入れてない気がします。
リザを奪い取るようにして抱き抱え、同時にアレから距離を取る。しかしどうやらあちらさんにはまだ攻撃してくる気がなかったらしく、俺が必死にリザを守るのを嘲笑っているかのように見えた。
「危なかったんだぞ、リザ!」
「え……ああっ!本当です!陽太くん、ありがとうございます」
抱き抱えられたリザは一瞬こちらを見てぽけーっとしていたが、すぐに気を取り戻したようで俺に礼を言う。
見れば、突如俺たちを襲ってきたそいつには今までのアレらとは大きく異なる点があった。それは、
「青い……?」
今までのアレは、赤みがかった黒色だったのに対して今回俺たちと対峙しているこいつは、青みがかった黒色だったのだ。この森で出会ったアレらと同じく人型というところは変わっていないのだが、これによって何か異なる点があるのだろうか。俺は取り敢えず『神魔眼』を使ってみることにした。
「いざ、『神魔眼』……ッ!」
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名前 不明
Lv214
・HP 3660
・MP 2420
・AP 3700
・DP 3570
・SP 4430
種族 不明
性別 不明
年齢 不明
スキル 『拳術スキル(大)』
・自分の拳術が大幅に強化される。
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「って、スキル持ちかよ!!」
なんとここに来てスキルを持った奴が出てきた。ええ……こいつらってスキル持てんのかよ……それは俺たち人間の特権ってやつだろうに。どうやらただでさえ最初っから強いこいつらはまだ進化を遂げるらしい。つまりまだ確証は持てないが、「スキル持ちのアレ=青みがかった黒色の身体」という認識で良いのだろうか。
「だからってそう簡単に勝てるとは思うなよって話だぜ!」
しかしいちいち考えている余裕はない。俺はリザをその場に置いてアレへ向かって大きく跳躍した。
「陽太くん!私も手伝います!」
「大丈夫だ!この程度なら俺一人で十分だろうから」
そこにリザが参戦の意思を示してくれたのがしかし、それは却下だ。確かにレベル214のこいつにレベル吸収を使ってしまえばこいつのレベルは半分の107、リザのレベルは108となる上に、レベル100越えでリザが取得する五属性のとんでも魔法、『オロ・ウラシル』を使ってしまえばこんな戦い秒速で片が付いてしまうのだろうが、今の歩き疲れたリザをそんな大変な目に合わせる気にはなれない。それに――
「俺のストレス発散に付き合ええええっ!」
なによりむしゃくしゃしていた俺の心を沈めさせるのに丁度良いと思ったのが大きい。俺は自分への怒りを乗せた拳を跳躍して目の前まで迫っていたアレ目掛けて放つ。
「るあああ!」
放たれた俺の拳はアレに綺麗にアレに命中……することはなく、アレは上手くしゃがんで避けたようで俺の拳は空を切った。
しかし、アレの攻撃はそれだけでは終わらない。
アレはしゃがみこんだ状態から俺の左足目掛けて右足で蹴りを入れてきたのだ。
「ぐああっ!」
「陽太くんっ!」
上手く反応できなかった俺はそれをまともに食らってしまう。思わず右足から崩れ落ちてしまう俺に、なおもアレの猛攻は続く。崩れ落ちた俺の頭上から人型であるアレの拳が降ってきて、俺は頭から地面に叩きつけられる。そこから更に畳み掛けるように両肩を持ち上げられた俺はまたも顔面に頭突きをくらい、そして思い切り投げられる。
「かはあっ!」
木に叩きつけられた俺は血反吐を吐いてその場にうずくまる。これは、やべえ。かなり一方的な展開だ。それなら……
「属性剣『火』」
なんとか立ち上がった俺は、前回同様燃え盛る炎の剣を生成する。これであいつが行動を起こす前に叩き切ってやれば問題はない。それに俺の剣術スキルは絶だし、実質レベルでも勝っている俺に負ける要素はない。
「いくぜ――ッ!」
剣を片手にアレへと向かっていく俺。あちらも俺の持つ剣を警戒しているのか、アレに自分から攻めてこようという意志は見て取れない。剣術スキルのおかげか、剣を持つと体が軽くなったような錯覚に囚われる。これならこいつも手も足も出せないはずだ。
同時に俺は『神魔眼』を使用する。世界が遅くなったように感じ、自分の体はグングン加速した。
「これで――!」
上手く懐に入った俺は奴の腰を剣でぶった切る。この超高温の刀身は一瞬にしてこいつの上半身と下半身をきっちり二等分にさばいてくれるだろう。
が、しかし。そいつは急に体を宙に浮かせた。いや、正確には跳んだのだ。ジャンプしたのだ。そうしてまたも避けられた俺の刀は宙を斬る。そこから、形勢を立て直そうとアレの方を見やるが、もう遅い。アレの右ストレートが既に引き金を引いていた。
何が悪かったのだろうか。おそらく俺は少々こいつらを舐めていたのかもしれないな、きっと自惚れてたんだ。俺は遅くなった世界の中でそう考えた。拳が俺の顔の近くまで迫る。幾ら世界が遅くなろうとも、俺が早くなったわけではなく、理解が早まっただけなんだ。だからこれをもう避けられないことだってもうとっくにわかっていた。
そんな絶体絶命のピンチの中、目をつぶり、歯を食いしばった俺の耳に聞こえてきたのは、
「『オロ・ウラシル』!」
俺の知る可愛い戦鬼の声だった。
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