第三話 スキル発動と失態
ちなみにAPは攻撃力、DPは防御力、SPは素早さを示しています。それを踏まえた上でお楽しみ下さい。
眼前に広がる光景から目を背け、俺は身を翻して走る。
普段はろくに仕事をしない俺の頭が、この時は珍しく瞬時にそれを危険だと見抜いてくれた。
「あれは全くもって謎だけど、とりあえず離れなきゃだな!」
俺は結構全力で走った。
しかし、
「うわ、ついてきてる!やばいやばいやばい!!」
どうやらあちらもこちらに気付いたようだ。
こっちに向かって追いかけて来ているが、先程こいつに包まれていた生徒はどうなったのだろうか。
まさか本当に飲み込まれたのか? 言い知れぬ不安が俺を襲う。
だが幸運にもあれはあまり足が速くないらしい。
別に俺は足が速いわけではないのだが、差が縮まるどころかむしろ広がっている気さえする。
このまま行けば上手く撒けそうだ。
さあ、走れ俺っ!魂を燃やすんだ!
そう己を鼓舞しながら、走り続けた。
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あれを撒けたのは、それから数分後のことだった。
「はあ……はあ……あれはいったい……なんだったんだろうな。とりあえず超常的な何か、としか言い様がないな……はあー、疲れた」
もう驚くことにも慣れてきてしまった。
もうある程度のことじゃ驚かない気がする。
というかむしろ少しだけ、ほんの少しだけだけど、わくわくしている自分がいる。
だってここはまるでちょっとした異世界のようで……。
「となると後はスキルとか魔法とかさえあればなあ。そしたらあいつのことだってパパッと撃退できるだろうに」
今日は何かと独り言が多いなと思う。
やっぱり心のどっかでは寂しくなっちゃってるのかな。
いや、なってるなこれは余裕で。
(固有スキル『創造』の発動を確認。アクセス。)
なんて考えていると、どこからか機械じみた女性の声が聴こえた。
いや、なんというか俺の頭ん中に直接語りかけてくる感じで。
するとそれと同時に莫大な数の文字列が脳内に侵入してきた。
そしてその序文には、
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固有スキル 『創造』 Lvー
・使用者のレベルが20の倍数になるごとに、スキルをスキルボードから一つ選び、自分に付与できる。
(ただし初回のみ、レベルが20の倍数になるごとに、という条件は反映されない)
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こう書かれてあった。
「え、なにこれ。めっちゃ強くね?」
それが俺のスキルを見ての率直な感想だった。
だってこれスキルとか何個も持てちゃうんじゃないの? まあ、レベル上げこそ面倒かも知れないけど、それでもこれは優秀……な、気がする。
ていうかレベル上げもなにも、レベルなんてあるの? と疑問に思っていると、まるでそれに答えるかのように俺の脳内にまたしても何かが浮かんだ。
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名前 秦瀬 陽太 (ハタセ ヒナタ)
Lv1
・HP 40
・MP 20
・AP 20
・DP 25
・SP 50
種族 人間
性別 男
年齢 17
スキル 『創造』
・使用者のレベルが20の倍数になるごとに、スキルをスキルボードから一つ選び、自分に付与できる。(ただし初回のみ、レベルが20の倍数になるごとに、という条件は反映されない)
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うわあ、ステータスに関して平均がわからない以上何も言えないんだけど……。
見た感じこれはあまり期待しないほうが良いな。
それでもやっぱりスキルは凄いと思う。
なんかこいつだけ存在感がまるで違うもんな。
「なんていうか……異世界感増してきたな、おい」
興奮冷めやらぬ俺は、早速『創造』のスキルを行使しようと思う。
さっき頭に入ってきたのがスキルボードってやつだろう。
この手のやつは大抵、スキルボードと唱えるか頭で思うかすれば出てくるはずだ。
「お、出た出た」
案の定出てきた。
正解は後者の方だったようだ。
では早速選ぶことにしよう。
いや、選ぶと言っておきながら何だが、実は俺の中ではもう決まっていたりする。こういうのはやっぱり……。
「相手のステータスとかを見れる、千里眼みたいなのがセオリーだろ」
俺はスキルボードに刻まれた数多のスキルの中から絞り込む。
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スキル 『神魔眼』 Lvー
・任意の相手のステータス、スキル、及びアイテムの詳細を視ることができる。『神眼』、『魔眼』の上位種。
スキル 『神眼』 Lvー
・任意の相手のステータスを視ることができる。
スキル 『魔眼』 Lvー
・任意の相手のスキルまたはアイテムの詳細を視ることができる。
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「迷いなく『神魔眼』だな」
俺は即決する。
能力的にもそうだし、なにより書いてあるんだもん、上位種って。
(スキル『神魔眼』を、ハタセ ヒナタに付与しました。なお、この決定を取り消すことはできません)
別に取り消す必要もないから関係ない。
俺はスキルの付加に成功したようだ。
ステータス画面を見る。
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名前 秦瀬 陽太
Lv1
・HP 40
・MP 20
・AP 20
・DP 25
・SP 50
種族 人間
性別 男
年齢 17
スキル 『創造』
・使用者のレベルが20の倍数になるごとに、スキルをスキルボードから一つ選び、自分に付与できる。
(ただし初回のみ、レベルが20の倍数になるごとに、という条件は反映されない)
『神魔眼』
・任意の相手のステータス、及びスキルを視ることができる。『神眼』、『魔眼』の上位種。
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よし、確認も取れた。
体に異状もなさそうだし、後は手始めにさっきの相手を、と考えたところで一つ、俺は自らが犯した致命的なミスに気付く。
「あれ、俺ってこれ……戦えなくね?」
――あ、ああ、あああああああ!!!ばかあああああ!!
結局、神様お願いです!さっきスキルを選んだの取り消させてください!と切に願う俺の想いも、神様は聞き届けてなどくれなかった。
ステータス書くのって疲れますね……。
よろしければ今後の執筆活動のためにもご指摘、感想等頂ければ幸いです。