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第三十四話 散歩無双

 視点がころころ変わり、申し訳ありません。

 「へ?散歩……ですか?」



 とある孤島の森の中。そしてそのまた奥地の開けた土地にある小さな小屋の中で、俺の目の前にいる美少女は呆けた声とともに俺にそう聞き返した。



 「ああ、そうだ。もう俺一人で森に行っても大丈夫だと思うんだよ」


 「むう。根拠は……その根拠はどこからくるんですか?」



 するとちょっと不機嫌になってそう言ってくるリザ。あれ、心配してくれるのかと思ったらなんで怒ってるんだ?でもそれを聞くよりも先にリザの質問に答えるのが礼儀ってもんだろう、俺はリザにこう答える。



 「根拠としてはだな、俺のレベルが実質229であることと、その他チートスキルを持ってるから多少のレベル差なら特に気にすることなく戦えるってこと。それに俺の神魔眼があれば、戦う前にちょろっと強さだけ確認して無理っぽかったらその場からおさらばってことも可能なんだから。な!これ聞いたら大丈夫そうだろ?」


 「で、ですが……」



 この完璧な、否定のひの字も言わせない説明を聞いてなお、リザの中では何かがつっかえてるらしい。何なんだろ一体。俺はリザに聞いてみる。



 「なんだ?さっきから不機嫌になってみたり。俺が心配ってなら気にすることないんだぜ?死ぬつもりももう無いし」


 「もう無い?あ、いえ、それはいいんです!それよりその、私が気にしてるのは……ええっと……」



 俯いたままもじもじとするリザ。その姿に、「え、何、告白でもされるのかな俺」なんてくだらないことを思っていると、リザは



 「その、わ、私って、足でまといなんですか?」



 と、今にも泣きそうな顔でそう言った。



 ああー!そんなことない!そんなことないよリザ!俺はただリザが心配で!それにリザがいたら負けないの確定だし……。どうやら俺の経験上この世界ではレベルってのが簡単にがんがん上がるみたいだから、今のうち上げれるとこまで上げないと後々怖いし。それにリザのレベルがスキルのせいか一つも上がらない分、俺が一肌脱がなきゃなって思ってたんだ。決してリザが足でまといとか、そんな事実は一切無い。俺はその気持ちをそのままリザ自身に告げる。



 「そんなことはないぞリザ。むしろリザがいたら簡単に敵を倒せちゃって困るからさ、その為に一人で行くんだよ。それにほら、可愛い子には旅をさせろって言うじゃんか!あれだよこれ、今まさに!」



 するとリザは驚いたようにその可愛らしい顔をこちらに上げて言った。



 「うふふふっ、可愛い子、ではありませんね。陽太くんは」


 「あ、そこに食いつく!?」



 俺の言葉にリザの曇っていた表情は、いつものキラキラとした表情に戻っていた。良かった、機嫌を直してくれたみたいで。それで俺が安堵していると、リザが何か呟いた。



 「――陽太くんは、かっこいいんです」


 「ん?なんて?」


 「いえいえ!なんでもないです!」



 いやいやいや、明らかに何か言っただろその反応見る限り!気になるんだけど!腑に落ちない俺はもう一度聞き直そうとするんだが、



 「もういいんですっ!早くどこへでも行ってきて下さい!」



 ばたんっ



 ――俺は小屋から追い出されてしまった。まあ、しつこく聞こうとした俺も悪いか。大人しく散歩に行くかな……と、俺が前行ったのとは逆の「東の森」の方向へ一歩踏み出そうとすると、また小屋の扉が開いた。そこには顔を赤くしてバツの悪そうにしているリザが立っていて、



 「で、でも陽太くんが死んじゃうのは嫌です。それだけは絶対、嫌ですから――では」


 「お、おう……」



 ばたんっと音を立てて扉が再度締まる。さっき俺にどこへでも行ってこいと行ってしまったせいで出て来づらかったのだろう。でもリザのその行動のおかげで、確かに俺のモチベーションは跳ね上がっていた。



 「そういうこと言われちゃうと……やっぱ死にたくねえな」



 そうして俺は決意を新たに、先程踏み出しかけていたその一歩をまた踏み出したのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「死ぬってことはねえけど、やっぱ真夏の森の中とか暑すぎだわ!」



 そう吠える俺は今、東の森を一キロ程行ったであろう所を歩いていた。アレはまだ一体も現れていない。まだ出てこないってのはちょっとおかしい気がするな……。まあでももうちょっと行ってみようかな。行けたら島の端っこまで!俺は少しだけ歩みを速める。



 それにしても、リザ。ひたすら謎の深い子だ。凄くいい子だってのは今まで過ごした中でよくよくわかったのだが、どうしてもこの場所とは結びつかない。俺はアレに飲まれた時に何かがあったのだろうとして、あの子には一体何があったのだろう。聞けば今まで本来どこにいたのかも、両親の名前も、自分の名前だって思い出すのはかなり困難だったらしいじゃないか。そんな彼女は例えどんなにいい子であっても謎でしかないんだ。なにか裏があっても不思議じゃない。



 そうとわかっていても、俺は彼女をそんな疑いような目でみることは出来なかった。初めて出会った時のあの涙や、さっきの笑顔だってそうだ。俺に言えない事情を抱えてるような子が、果たして俺にあんないい笑顔が出来るもんなんだろうか。



 「俺には無理だな」



 だから結局俺は、彼女を信じてみるしかないんだ。今から森の奥まで行って黄金の果実を採ってこいと言われても、俺はその果実の存在を疑わずにきっと森へ繰り出すだろう。でもきっとそれでいいんだと思える。幾ら彼女が怪しい立場だったとしても、きっと彼女はそんな嘘なんて吐かないだろうから。



 ガサガサッ



 と、俺が一人シリアスを織り成しているそこへ、邪魔が入った。黒い影のようなぼやけた身体。全身から溢れ出る瘴気。間違いない、人型のアレだ。だが、



 「お前さー、人がシリアスしてる中どの面下げて出てきてんだよ、おい」



 俺は今、少し機嫌が悪い。さっきまでの、出てきて欲しかった時に出てこなかったくせに俺が物思いに耽り出したら急に現れたのだ。カチーンときたぜ。



 「『神魔眼』……レベル233か……」



 俺は神魔眼を発動した。その結果こいつのレベルは233。俺よりは少し上だ。だが、



 「属性剣、火」



 俺は自らの手の中に一振りの刀をイメージする。すると、ボウッと俺の手には荒々しく燃える剣状の火が握られていた。



 属性剣、これは別にスキルなんかではなくて、俺のイメージで編み出したちょっとした小技だ。火を剣のように具現化することでこれが出来る。その為に得たのが剣術スキルだ。



 のっしりとこちらへと蠢くアレ。だが、俺はそれに臆することなく懐に飛び込む。そして横薙ぎ、一閃。



 「らっ!」



 咄嗟に迫ってきた俺に驚いたのか、アレは右腕を俺の剣を防ぐように立てる。だがもうその判断をした段階で既に決着は見えている。



 「ばーーか」



 ザシュッ



 俺の剣は確実にアレの身体を捉え、わけのわからぬまま一刀両断されたアレは蒸発していく。あーあ、また一撃で終わんのかよ。俺は落胆を隠しきれずにいた。



 「そもそも実体のない火を受け止められるわけがねえだろ。これは剣のように見えて、実際はただの火だぜ?まあ、火力は凄いからこうやってアレなんかも溶かし斬れるんだけどな。――出直してこいよ、欠陥品」



 こうしてアレを軽くいなした俺は、森のまだ奥へと歩を進めるのだった。


 やっと無双らしい無双をしてくれた気がしますね!

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