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第三十二話 空から世界を見てみよう


 今僕は、空を飛んでいる。自由自在に思いのままに、行きたい方へ、飛びたい高さで。世界は狭いのだとさえ思ってしまう今の僕の感動と言ったら、とても簡単には言い表せるものでは無いと思う。



 けれど、最初はかなり信用していなかった。まさか急に飛べるようになるなんて思いもしないじゃないか。でも僕はダメもとでグラウンドの中央に立ち、空を飛んでいるイメージを思い描いてみたんだ。するとどうだろう!急に体がふわって浮かび上がったんだ!自分で言うのもなんだけど、その時の僕の驚きようったらもう……。



 この風を切って進んでいる感覚、どこまでも飛んでいけそうな浮遊感。普段僕はここまで大袈裟に表現したりはしないんだけど、今の僕の言葉でもまだ足りないくらいに気持ちが良い。――と、言っている反面、実際のところあまりスピードはあまり出せていないんだよね……まだあまり全速力で風を切るっていうイメージが湧かなくって。それでも多分、僕を過ぎていく建物の通過速度とかを見る限り新幹線よりも少し遅いくらいのスピードは出てると思う。



 こうして、景色は移りゆくんだけど……僕がこの「飛空」というスキルに驚いていたのと同時に、もう一つ驚いたことがあったんだ。それは、学園の周りにこれまでにはなかったような森が展開されていたということだ。取り敢えず学園の周辺はちょっとした森になっていて、そこを降りた住宅街の辺りは点々と木が茂っていた。もちろんそんな木はもともと生えてなんていなかったし、よく見るとその木自体もあまり見たことのない品種だ。



 しかし、そんなわからないこと一つ一つにいちいち驚いていてはこっちが疲れるだけだというのもとっくにわかっている僕は、あまり考えないようにすることにした。首都は、まだ遠い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 物事に特に関心を持たないようにと決めてから、結構な距離を飛んできた気がする。もともと凄まじく遠いというわけでもなかったので、もうじき着くかな。それにしてもここに来るまでにも色んな景色があった。森を抜けた後はかえって草木の生えない広大な荒野になったし、荒野を抜ける最中に遺跡のようなものもあった。中には空中の気体がピンク色に見える上に甘い香りの漂う花畑があったりして、でも家とかビルとか公園とかの元あった建物や施設はそのままになってるんだ。そのせいでただ飛んでいるというよりも、夢の世界を観光しているという感じだった。そう考えるとなんだか僕は、この世界がファンタジー世界と一体化していくような……そんな錯覚に囚われてしまった。



 「あ、見えてきた」



 すると、視線の先には僕の目的地であるテレビ局が現れた。多分歩いて来ていたら丸二日はかかったであろう距離を、五時間もかからずに来れたのではないかと思う。かなり好タイムだね。そのまま僕は近付きつつあるテレビ局の方へと目を凝らす。すると、



 「あちゃー、凄いことになってるなぁ」



 というのも、テレビ局の側面部分に高さ四メートルくらいの大穴が空いていたんだ。おそらく僕の見ていた放送で鳴った轟音の元凶だろうな、という想像まではつくんだけど……とてもこれは人の成せる技じゃないと思うんだ。爆発物を設置して強引に侵入したのかな?でもどうして?ダメだ、謎が謎を呼んでる!結局のところ色々考えちゃうよりは結局入って見てみたほうが早いよね。ということで僕は中に入ってしまうことにした。



 ――スタッ



 「ふぁあ~~長い空の旅だったなあ~~」



 大きく伸びをしながら僕は呟く僕の目の前には、穴が空いたことで異様な雰囲気を漂わせるテレビ局があった。入口は地下のようで、その前には警備員の人がいるようだけど、その人も一点を見つめたままピクリとも動かない。わざわざここまで飛んできてもこの現象は僕を逃してはくれないみたい。嫌になっちゃうなぁホント。



 そのまま僕は無防備な警備員さんを素通りして中に入る。中に入ってすぐにエレベーターと階段があるんだけど、飛び疲れていた僕は迷いなくエレベーターに乗り、一階を目指す。



 ――果たして陽太はここにいるんだろうか。もしもいたならなんて言葉をかけようかな。心配したよ、置いて行くなんて水臭いじゃないか、一緒に原因を突き止めて瑞希ちゃんを助けてあげよう。かけたい言葉は幾らでも浮かび上がる。



 ――チーン



 さて、着いたみたいだ。僕は目を閉じる。この扉の開けた先には陽太がいてくれるのか、それともいないのか、それが例え後者の結果であったとしても僕は陽太探しを諦める気はさらさら無いし、ましてや気を落として学園へ逃げ帰るわけでもない。少なくとも僕はここで満足のいくまで情報を収集し続けるつもりだ。だから僕がここへ来たことは決して無駄になるわけではない。それを前もって自分の中で確認した上で目を見開く。扉の開いたその先には――



 「だああああ!うるせえんだよクソ女!とっととどけや!俺にも放送させろ!!」


 「へえ、人間という枠組みから天元突破したアイドルであるこの私にその口の利き方……。あんまり舐めんじゃないわよ!クソ男!」


 「二人共ー!喧嘩は止めてよ~~!」


 「――ええっと?」



 アイドル、寺嶋茉依とガラの悪そうな男が、本能剥き出しで喧嘩をしていた。

感想、ブクマ等頂けると幸いです。

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