第三十一話 誓う者、和む者
遂にこの作品も三十話に到達することができました!皆様の協力のおかげです。心から感謝しております!これからもどうぞよろしくお願い致します!
『お願いです、助けに来て欲しいんです!誰かが……誰かが来てくれるって、茉依は信じてます!』
うわぁ、アイドルの人が助けを求め始めたよ。んー、なんだか媚びてるみたいで嫌だなぁあの話し方は。その辺のアイドル好きからすればこれはもう一大事ってやつなんだろうけど、そんなのには毛頭興味のない僕としてはかなりどうでもいいことかな。それよりも先に僕はいなくなっちゃった陽太を探さなきゃいけないんだから。
『グループの皆も固まって……とにかく助けてください!場所は首都のテレビきょ――ドゴオオオオンッ!!』
「えっ!?なになに!」
すると突然、アイドルの話に割り込むかのような轟音がテレビ越しに聞こえてきた。驚いた僕は、何事かとテレビの画面に注目する。画面から見える映像は少し揺れただけで変わらず、中央には相も変わらずあのアイドルが立っているのだけれど、その表情は驚きに満ちている。
『お、男の子が!男の子がスタジオの壁を突き破って出てきました!!ん?それと女の子がひと――』
ザザーーッ
――どうやらあちら側で何かがあったらしく、画面には灰色の砂嵐が起きていた。
「――うん」
あの司会者は最後に、「男の子がスタジオの壁を突き破って出てきた」と言っていたんだ。その、「男の子」というキーワードを聞いた僕が誰の顔を思い浮かべたのかは言うまでもない。彼が今どこにいて、どうしているのか。全くと言っていいほどわからない現状としては、彼が既にあっちにいるということを考えるのも不思議ではないと思う。
「それに……」
今のアイドルによる大号令によって、放送を見た人ならばきっと集まってくると思う。みんな自分と同じ境遇の人に会って安心したいだろうからね、おそらくそのテレビ局では人がゴッタ返すことになるだろう。そうなればそこに集まった人同士で情報収集ができるはずなので、最悪陽太の情報くらいは得られるかもしれない。
だから、後はどうやってそこに行くのかっていうことなんだけど。それはもう解決しているようなものなんだよね……『飛空』に成功すれば。そもそも飛ぼうとなんてしたこともない僕はそのイメージさえつかないわけで、いざ「君は飛べるんだ」と言われてもやってみないとわからない。そこで僕は当面の目標を首都へ向かうこととして、そのためにまずはグラウンドでテスト飛行をしてみることにした。
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さて、グラウンドに着いたんだけど、ここに来る最中にも何かが暴れまわったみたいな傷があちこちにできていた。特に酷いのがこのグラウンド。
「これは酷い……」
僕は目の前の惨状に、無意識に表情をしかめているのを感じた。どちらかというとこっちは何かが暴れまわったという表現よりも、何かと何かがぶつかりあったと表現した方が良い気がする。その様子としては、ところどころ地面は抉れ、ある校舎には亀裂が入っており、やった本人にどうやったらこうなるのか詳しく聞きたくなる程の仕上がりだ。けれど流石にこのレベルで被害が出てるとなると、ぶつかりあった双方はきっと両方人間ではないと思うな。今この世界には怪物がいるのかもしれない……こんな世界に陽太一人でいようものなら、彼の人生は早い段階で終焉を迎えるだろう。
「陽太、待っててね!すぐ助けるから!」
だから僕はどこにいるとも知れない友達に、そう誓った。
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「ふぁ……はっくしょん!」
「えっ!?どうしたんですか!?」
――そうして悠斗が動き出した一方、こちらは時之宮学園から遠く遠く、海をも跨いだその先にある絶海の孤島。その深い深い森の中の開けた場所に、二人の男女がいた。
「いや、なんか誰かが俺のこと話してた気がしてさ」
「すみません、私のスキルにはそんな超感覚を得られる類のものは無くて……」
「いや、俺もねえよ?」
かなりレベルが上がって家の周りのアレらが全然怖くなくなってからというもの、緊張から解き放たれた俺とリザは結構わいわいやっていた。それに、俺たちとしてはかなり嬉しいことが判明した。それは、アレ達はどうしてかこの小屋の辺りの開けた土地には入ってこないということだ。つまり、これで寝るときも何の心置きなく眠れることになる。あー、嬉しい。
しかしその反面、問題もあった。何かが違うと思ってはいたのだが、やっぱりここはどうやら俺が死んだ?みたいになっていた森とはまた別の場所らしい。というのも、どうやらここは海に囲まれた孤島のようで、これは俺が捨て身の覚悟で地面目掛けて暴風をぶち込み、その爆風で空を舞った俺が確認した事実だ。その後は手筈通り、落ちる寸前で俺からレベルを半分吸収したリザにキャッチしてもらうことで九死に一生を得たんだけど。彼女曰く、「これで貸し一ですっ」らしい。
だからか、そんな生活を送っていて最近思う事がある。もうこのままでいいんじゃね?と。リザはいい子だし、どうせ島の外側に行っても海を渡らなければ本土に戻れないわけだし、今のとこ敵にも臆することはないし、リザはいい子だし。この通り、特に不自由はないんだ。だからこうしてこのままここでのんびり暮らすのも……
「いいのかもな~」
「さっきから怖いですよ、陽太くん」
リザがこちらを呆れたように見てくる。俺がそれを見て微笑む。
あー、今日も良い天気だ。――いや、訂正。ずっと良い天気だ。
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