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第二十九話 裏腹

 悠斗視点です。


 僕は基本的に自分の目で見たものしか信じられない性格だ。だから、幽霊がどうとか宇宙人がどうとか、この世界では色んな怪奇現象などが出回っているけど、僕はどれも全く信用していない。というかできないんだ、だって見ていないから。



 そうした情報は誰かが流したデマだったりすることが大半だし、それを知った時にがっかりするくらいなら最初からそんなこと脳に受け入れない方がいっそ良い。そう思ってるんだけど……陽太はそう言う僕の前でも「ああー異世界転生してえーー」なんて言っていた。異世界なんてあるとは思えないんだけど、と僕が幾度言えど陽太のその思想は揺るがなかった。まあでも時には「ああー画面の中に飛び込みてえーー」と、主張が変わることもあったんだけど、どちらも似たようなものだと思う。



 だから。今見ているこの景色と、時を刻まない時計。時間が止まっているかのようなこの状況を本来なら僕は信じなければならないのだろう。じゃないとさっき自分で言った発言はなんだったのかという話になってしまうから。でも……でもこんなふざけた状況に急に遭遇して、それも急に順応しろだなんてそれこそ無理な話だとは思わないだろうか。だからこそ僕はますます彼にこう聞きたくなる。



 ――ねえ陽太。君ならこの状況と、どう向き合うのかな?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瑞希ちゃんの胸元から救出されたノートの最後のページには、わかりやすいように大きな字でこう書かれていた。「ちょっと出てくる」と。



 「あのねぇ陽太……」



 思わず僕は呆れ返ってしまった。もうちょっと何か書く事はなかったのかな……やっぱり計画性が無さすぎるんだよ陽太は。



 でも僕にはこの文章からなんとなく陽太の抱えていたであろう焦りが伝わってきた。今の状況からしてきっと僕も今の瑞希ちゃんやみんなのように固まってたんだろう。そしてそれを少なからず陽太は見たはずであって、その時彼が感じたであろう寂しさはきっと計り知れないものだったはずだ。それでも陽太は進んだんだろう、この先の消えない世界でもなお。だったら僕がすることも一つ。



 「解明だ。この世界の」



 そして必ず陽太を見つけるんだ。ひょっとしたらこの学校を出たらすぐに出会うことになるかもしれないし、この先何十年と出会えないかもしれない。それでも僕は見つけなきゃいけない。理由は至ってシンプル、友達だからだ。



 「それじゃあ早速何をしようか。」



 僕は頭を回し始める。頭へ血を巡らせ、考え、考え、考える。そして、取り敢えず今行うべき行動を絞らせてもらった。



 「今はまあ、職員室へ行って情報収集かな」



 職員室、あまりいい気持ちはしないその言葉。陽太なんかはああ見えて必要最低限のことはするからあまり縁はないんだろうけど、僕は違う。定められた仕事を飄々ひょうひょうとこなしてしまうと、それを見た一部の先生方は更なる仕事を課す。一度これが始まると、まるでこちらを試すかのごとく仕事は増していくばかりなんだ。それでもそれを怠れば先生からは諦観の目を向けられる。だから僕は終わらないループを続けて……今では職員室に行くのはかなり気乗りしなくなっている。先生しかいないからね、あそこは。



 教室を出た僕は気持ちと裏腹にパカパカと軽快に鳴る上履きの音に耳を傾けたりしながら職員室へと向かう。いない、いない、陽太は見つからない。動ける者もいない。誰も彼もがみな、静寂を奏でるだけ。



 「はあ……」



 そしてようやくたどり着いた職員室だが、どうせ中でも同じ惨状なんだ。わかりきっていながらもどこか期待して扉を開く。あれだけ散々先生を嫌いだとか言ってしまっておいてなんだけど、別に信用していないわけじゃないんだ。みんなきっとどこかで「先生に聞けばいいか」とか「先生なら大丈夫でしょ」なんて思ってると思うんだ。今の僕もそんなことを思っている節はあったんだ。どこかで、期待をしてた。でもそんな僕の淡い期待も、



 ――扉の先の沈黙が打ち砕いてくれた。



 「わかってたさ。先生だけ無事なわけがないじゃないか……」



 僕はそのまま、視線を目的である職員室にある黒板の上に目立つよう設置されたテレビに目を向けた。目的はテレビの放送を見ることだ。きっと職員室に来慣れていない陽太なら気付かないだろうなと、なんとなく思った。さてさて、テレビのリモコンはあーっと。あった、教頭先生の机の上に黒いフォルムの一般的なリモコンが。確かうちのもこんなのだった気がするなー。



 「よいしょ」



 いきなりだがもう僕は電源ボタンを押させてもらった。色々考えちゃうよりはとっとと行動してしまいたから。点いた画面は真っ暗で何も映らない。



 ――ピッピッピッピ



 どうやらどこのチャンネルでも番組はあっていなそうだ。うーん情報も掴めない、か……lこれは結構痛いなあ。僕はリモコンを元置いてあった教頭の机の上に置こうとする。すると――



 『あー、あー、聞こえているだろうか、皆の衆!』



 ――空気の読めない明瞭な声が、職員室中に響き渡った。


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