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第二話 未知との邂逅

 宣言通り、前回より短めです!


 どれほどこの場につっ立っていたのだろう。

 もう五分は経ったのではないだろうか。

 だがその間にも、やはり誰も動こうとするものはいなかった。



 かと言ってこのままでいるのもどうかと思うので、俺は数ある疑問を解消するため、行動に移すこととする。



 「まずはこいつらがマジで動かないのかってとこだな」



 とりあえず触ってみようと思う。

 最悪くすぐったりしてみれば、こちらに反応せざるを得ないだろう。

 ええっと、くすぐってもブチギレそうにない奴は……。



 「こいつなんかひ弱そうだな」



 選ばれたのは綾た……かではなく、近くにいた文字通りひ弱そうな、眼鏡の男子。

 上履きのゴムのとこの色が黄色なので、下級生だ。



 「失礼します。こちょこちょこちょーっと」



 ――沈黙が辺りを包む。



 「やっぱりだめか」



 概ね予想通りなので、あまり驚きはしない。

 さっきから演技にしてはやけにレベルが高すぎると思っていたからな。

 なんなら呼吸すらしてなさそうに見えるし。



 結果。やはりこいつらは本当に動いていない。

 いや、動けないと言った方が良いのだろうか。

 どちらにせよこの場において動体は俺だけなのだろう。



 「一度教室に戻った方が良さそうだな」



 そうして俺はきちんとジュースも持って、一旦教室へ戻ることにした。

 悠斗や瑞希の安否が気になるからなのか、教室へ向かう俺の足はおのずと早足になっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ガラララ



 教室の扉を開く。



 「――だよな」



 教室の中も、状況は外と全くと言っていいほど変わらず、最悪だった。



 結局ここまで来る最中に通った廊下にも誰一人動いている者はいなかったし、先生までもがそうだった。

 こうなるとますますおふざけでないというのがわかる。



 俺は悠斗と瑞希を目で探した。

 いつも三人で昼食をとっている場所は決まっているので、やはりすぐに見つけることができた。



 「やっぱりお前らもなのかよ……」



 悠斗と瑞希が二人で談笑しながら食事をしている。

 瑞希は俺と話していた時よりうんと楽しそうだ。



 それと同時にやっぱりこの二人が並ぶと華があるな、とも素直に思った。

 しかしその二人も動いてはくれない。

 その華やかさが相まって、まるで彫像のようだ。



 その結果も正直言って予想通りではあった。

 こいつらと俺だけが動けるだなんて、そんな都合のいい話がある訳が無い。



 もうここまでくればとりあえず、この学園において動ける者は俺しかいないとさえ言えそうだ。

 現にまだ俺のような境遇にあっている人間を見つけられていない。



 にしてもなんで俺なんだ?全く身に覚えがないし、ほんっとうに意味がわからない。

 別になにか特別な才があるという訳でもないのだが。



 それに比べてこの二人は違う。

 きっと俺より将来はビッグになるだろうし、幸せにもなれるんだろう。

 なのに俺なんかがこいつらを差し置いてうろちょろしてていいのだろうか。

 別に人々が動かなくなってしまっていることを死と捉えているわけじゃないのだが、それでもこの状況が続くようなら、それも同じようなものだろう?



 「まあ、こんなに色々考えてても仕方ないか」



 俺は学園外の様子も見に行ってみることにした。

 まだ動ける人がいるって可能性が潰れたわけではない。

 探してみるのもいいだろう。



俺はもう一度二人の方へ向き直る。



 「悠斗、瑞希。別にずっと戻ってこないってわけじゃないし、見捨てたわけでもない。こっちもすぐに戻るから……できればお前らも早く元通りになって、また話そうぜ。その時はどうせ信じちゃくれないんだろうけど、このわけわかんない話をたっぷりしてやるからさ」



 最後に二人の前に、「ちょっと出てくる」と書いたノートを置いておく。

 これならこいつら心配症コンビが動き出した時に俺がいなくても安心だろう。

 ん?いや、待てよ。

 この場合俺と違ってこいつらとしては昼休みのつもりだから……まあいっか。



 そうして俺は教室から出ようと扉へ向かう。

 ちなみに途中で黒田達群れの連中がいたので、日頃の恨みも込めて数発蹴りを入れさせてもらったが、そこはご愛嬌。

 これくらい甘んじて受けてもらおう。



 ガラララ



 教室を出た。

 真っ直ぐ昇降口へ向かって歩く。

 とりあえずは目的地を自宅に設定しておこう。

 この時間帯なら、おそらく母さんも家にいることだろう。



 「あ、そういえば時間ってどうなってんだろ」



 俺はポケットからケータイを取り出す。



 「うわ、すっげ!時間変わってない気がするぞこれ!」



 驚きに自然と声が大きくなる。

 ケータイに表示された時間は一時十七分。

 こんなことになる直前の正確な時間までは知らないが、これくらいだったはずだ。



 「ってことはこれは、時間が止まってるって認識で良いのか?」



 俺は虚空に問いかけるが、もちろん誰も答えてはくれない。

 まあ、端っから期待すらしてないが。



 ケータイをポケットにしまい、再び歩き始めると、今度は廊下の突き当たりの曲がり角を曲がる物陰が見えた。



 「あれ、今動いてる奴いたよな!」



 気持ちが弾む。

 思わず俺は駆け出していた。

 突き当たりまで走りながら、俺は思う。

 なんだ、まだ決め付けるのは早かったな、と。

 この不安をやっと分かち合える、と。



 ――その時までは。



 「おーーい!って……あれ?」



 俺が曲がり角を曲がり終えた、その廊下の少し向こうに、怪しく鈍い光をうっすらと放つ何かが、そこにはいた。

 それは何かのノイズのように揺れていて、時折透けても見えた。



 そしてそれが明らかに奇妙だったのは……。



 「人を……飲み込んでる?」



 今は動けなくなってしまっている一人の生徒を、それがまるで飲み込むかのようにして、包み込んでいたことだった。



 よろしければ、今後の執筆活動の為にもご指摘、感想等頂ければ幸いです。

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