第二十六話 戦鬼降臨
本日二度目の投稿になります。
「い、いけたのか……」
俺は安堵の息を吐く。アレの中から出てきた魂みたいなやつがリザの体へと入り込み、現在リザは白っぽい光に包まれて佇んでいる。なんとか成功したリザのレベル吸収だが、これでなんとか形勢を覆せると良いのだが……。
リザを包んでいた光が止み、そこにはいつものあどけなさ全開のリザが残る。うん、これ本当に成功してんのか?なんだか心配になってきた俺は、リザに対して迷いなく『神魔眼』を発動する。一体どうなって……?
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名前 リザ
Lv1(+105)
・HP 2150
・MP 1580
・AP 1575
・DP 1575
・SP 2100
種族 人間
性別 女
年齢 16
スキル 『レベル吸収』
・指定した相手のレベルを半分吸収する。(しかしどちらかが戦闘不能になった時、互いのレベルは元に戻る)
『HP強化(中)』(レベル10以上で開放)
・自分のHPが強化される。
『MP強化(中)』(レベル20以上で開放)
・自分のMPが強化される。
光属性魔法『アビリー』(レベル30以上で開放)
・指定した相手のHPを回復する。
混成魔法(光・闇)『セーラ』(レベル50以上で開放)
・光と闇の属性を纏め、二羽の黒白の鳥を具現化し放つ魔法。
『MP強化(大)』(レベル80以上で開放)
・自分のMPが大幅に強化される。
混成魔法(火・水・風・土・雷)『オロ・ウラシル』(レベル100以上で開放)
・魔法の基礎となる五属性を纏め、球体状にしたものを放つ魔法。大抵のものは消滅するほどの威力。
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「レベルが上がった分だけスキル増えんのかよ!」
チーターが……チーターがいるぞ!こんなの俺とは比べ物にならねえんじゃねえか!?現状俺はただステータス良いだけの人だからな。己の弱さを痛感する。いつか、いつか強くなれたらいいな。
「陽太くんっ!どうすればいいんですかー!」
俺とリザとでは少し距離があるので、リザが大声でこちらに叫ぶ。そうだなあ、とりあえずは俺の回復をして貰って……その後で俺も戦いに参加すればいいか。だからやっぱ今は、
「リザーー!ひとまず俺に回復魔法かけてくれー!」
だめだ、声張り上げるだけでも体がズキズキ痛む。でも伝えたいことは伝えたし、後は回復魔法をかけてくれるのを待つだけ……
「か、回復魔法、ですか?」
あ、ああーーー!あの子そういえば自分のステータスの見方知らないんだった!そもそも教えてない俺が悪いんだけども。いい気になって俺はステータスが見れるとか自慢げに話してたからきっとリザの頭ん中じゃ「ステータスは自分のものであっても見ることは出来ないみたい」ってなってんぞ。どーしよ!俺の計画穴だらけだよマジで!
「ああー、あのなあーリザーー!」
「あ、わかりました!」
お?自分でステータスを見ることが出来たということなのだろうか?額から流れる血で視界がぼやけて分かりづらいが、なんだかはしゃいでいるように見える。まあなんにせよ良かった、これで説明する手間が省ける。アレはさっきからリザの方を見て呆然としているから、殺るなら今がチャンスだ。と、俺が考えていると、急に視界が鮮明になった。
「あれ?怪我が治ってる……」
右手で額に触れてみると、その手には血がべっとりと――付いてはいなかった。ひょっとしてもう?と思った俺がリザを見ると、彼女はどこか得意げで、でも凄く嬉しそうな顔をしてこちらを見ていた。その顔と俺の体の様子を見る限りどうやらもう光属性の回復魔法、『アビリー』を使用してくれたらしい。
「助かったぜ、リザ」
だから俺はリザへのありったけの感謝の気持ちを胸に、俺を散々蹂躙してくれたアレへと目を向ける。思えばこいつはいつだって俺を葬ることが可能だったろうに、まるで弄ぶかのように俺のHPをじわじわと削るだけで、決定的な一撃は打ってこなかった。何度か放った強めの一撃も全力ではなかったはずだ。しかし結果として俺はこいつの持っていた余裕によって命拾いをすることになるから、そいつのそれをそこまで咎める気はない。『神魔眼』でこいつを見たところ、レベルは105。実質俺のレベルは126なので、余裕で勝てるだろう。
「まあ、咎めはしない。それに俺にいたぶるとかいう趣味はねえ。もう一体のアレにはレベルの変動はないからさ、戻ってこられちゃ流石に困るし。早めにお前を殺さなきゃいけないんだ。だから」
アレが俺の殺気に身構える。そういえばこいつは自分が弱くなっていることに気付いているのだろうか。普通にいけば俺と戦いながら途中で気付くのだろうけど、この場合そうはいかないだろうな。
「――死ね」
なんせそれを認識する前に一撃であっちへ逝ってしまうのだから。現にアレの腹部には俺の右腕が貫通している。
「血で色々汚さなくて済むのがお前らの良いとこだと思うよ」
俺は身を翻し、急いでリザのもとへ向かう。リザにもしものことがあっては困る。できるだけ速く向かわなくては。そう思っていたのだが、案外早く見つかったリザは余裕そうな顔でもう一体の方のアレと対峙していた。
「あれ?リザ?」
あまりにも平気そうなリザに俺は声をかけた。するとリザはこっちを向き、
「やっぱり勝てたんですね!さっきまではギリギリな戦いだったんですけど、急に私のステータスが元に戻ったので陽太くんがアレに勝ったんだなと思い、もう一度次はこっちのアレに対して『レベル吸収』を使ったところです!」
あれ、一個おかしな点があるよ?『神魔眼』を使ったところこいつのレベルは今102。そしてリザのレベルは102。そこから予想するに、こいつの元のレベルは203だったのだろう。これで相手のレベルが奇数だった時の結果はわかったが、問題はそこじゃない。リザは「さっきまではギリギリな戦いだった」と言ったんだ。ギリギリ?さっきまでのリザのレベルは106で、アレの方は203。どうやったらギリギリになるんだよ。いや、わかってる。わかってるんだよ、どうなっていたのかは。ただ、あまり考えたくないんだよ。無双する美少女って絵面はちょっとばかしシュール過ぎではないだろうか。
ごほんっ、では結論。
「リザはレベル差を度外視したそのスキルと魔法で敵を翻弄、その正体はレベル100差くらいなら埋められる戦鬼」
「陽太くん!終わりましたよー」
俺がリザのイカレっぷりに気付くのと、リザによるアレの死刑執行が終わるのは、丁度同じくらいのタイミングだった。




