第二十一話 例のアレ討伐作戦
今回、やや長めです。今日中にもう一話出すかもです。→PCに不具合が出たため、厳しそうです!申し訳ありません!
「んじゃあ、続いて作戦会議を始めるー」
「はい!」
なんかさっきからずっとニコニコしてるな。そんなに楽しいのかな、話し合い。まあ、可愛いから俺としてはむしろグッジョブなんだけどさ。
「まずは敵の捜索だな。それはもうとりあえず森の中適当に探したら出てくるだろ」
「陽太くんは一度会ってるんですよね?」
リザが聞いてくる。いや、実際のところは俺は三回遭遇してるんだけど……面倒だからここは一回しか遭遇してないって方向で行こう。
「そうだな、森の中で一回だけな」
「あれはなんともいえないおぞましさなんですよね。これから初めて見るのならガクガク震えちゃう可能性があったので一応確認を、と思いまして」
「リザならそれもあり得るけどな。膝ガックガクで逃げることすらままならないんじゃないか?」
俺が笑いながら冗談を交えて言ってみたのだが、
「そ、そんな、膝ガックガクなんて!そんなわけないじゃないですかぁっ!!」
「おうわ!そんな否定する!?」
図星だったんだろうか、赤面しながらその双眸を見開き、全力で否定してきた。それでよくもまぁ逃げ切れたな……凄いもんだぜ。
「ご、ごほん。とにかくっ!説明して下さい、おうち脱出大作戦の」
「え、いつそんなダサい名前つけたっけ……?」
リザに聞こえない程度の声で俺はボソリと呟く。この子全然ネーミングセンスないんだな……おうち脱出大作戦て。おうちて!大作戦て!えってかおうち!?そんな可愛らしい呼び方してるのかこのお世辞にも綺麗とは言えないボロ小屋を!?なんかリザをどんどん知っていけてて嬉しいんだけど、知れば知るほど可愛すぎるんだがこの子。悪いおじさんとかにもすぐ付いて行きそうだ。
「じゃあ続けます。普通なら見つけ次第攻撃開始!なんだろうけど、俺としては相手に見つかるより先にステータス見たり、リザのレベル吸収も済ませておきたい」
「それはそうですね」
「そこで、まずは攻撃を仕掛けるより前に俺の『神魔眼』を発動、相手のレベルとかステータスを知った上でリザが敵のレベルを吸収。このタイミングは俺が合図するからそれを待ってて」
「わかりました」
「その二つが終わって初めて攻撃開始なんだが……何か聞きたいことでもあるのか?」
「えーーと、一つ思ったのですが……」
作戦を伝え終えた後、リザがなにかを訪ねたそうな顔をしていたのでこちらから聞いてみた。何か説明に不備でもあったんだろうか。俺はリザから紡がれる言葉を待つ。
「こういうのも失礼なんですが……陽太くん、戦えるんですか?」
「なっ!?」
う、嘘だろ?まさかそんなことを言われるとは思わなかったぜ。でもまあそうだよな。俺、まだ自分自身のステータスの話してないもんな。でもまさか戦えないと思われているとは。こっちとしてはむしろこんな可愛い子を戦いの渦中に巻き込みたくないと考えているくらいで、なんなら吸収を済ませたら俺一人で戦う気さえあった。丁度いいし、俺のステータスのことも伝えておこう。
「そうだな、リザからすれば俺はただステータス読めるだけの人だもんな。ちょっとじゃあ俺のステータスのことも教えておくよ」
「はい!お願いします!」
うわ。凄く期待に満ちた視線を送ってきてくれるんだが、この子!かなり喜怒哀楽が表情に出るよね。わかりやすくて良いと思うよほんと。でもそのやたら大きな期待に答えられるのかなぁ俺のステータスは。俺は自らのステータスをリザに教える。
「レベルは26で、スキルは『創造』と『神魔眼』と『身体能力強化(絶)』だな」
「26ですか……アレのレベルってちなみに……?」
あの異形の連中だが、俺達の中では「アレ」と呼ぶことにしていた。名前を固定しとかないと話がこんがらがるからな。まぁ、ネーミングセンスについてはあまり追求しないで欲しい。実は俺もあまり良いほうじゃないらしい。
「そうだな、確かレベルは……189だったかな?」
「……はい?もう一度良いですか?」
聞き間違えたのかと思ったのか、もう一度聞き直してくるリザ。大丈夫、聞き間違いじゃないよ。俺も目を疑ったから。
「189だ。な?化け物だろ?」
「なんで立ち向かおうとしてるんですか私達!無理ですよ、勝てないですよ!」
「いやいや、諦めるのは早いってば。落ち着いてちゃんと考えてみ?」
「と、言いますと?」
確かにあんな化物相手に普通にやりあったら負けるだろうけどな……。急遽リザがチートスキル持ちだということがわかったからこそ実行に移せる作戦だ。
「アレのレベルは189だぜ?リザが半分奪っちゃえば相手のレベルは94か95だ。相手のレベルが奇数の時はどうなるのかっていう検証もこの機会にやっておきたいな」
それでもリザと相手のレベルは最低でも同じにはなるので、あまり問題視はしていない。ただリザは個体値があまり高くなさそうなんだよな……そこは俺が補っていくしかないだろう。
「それでもアレのレベルはレベル26の陽太くんとは比べ物になりませんよ!?わかりました。この際陽太くんは下がっていてください。私が一人で倒してみせます」
「いや、もちろん俺も参加するぞ?女の子一人で戦わせるわけにもいかないじゃんか。それにさっき言ったように俺にもスキルはあるわけだし」
「あ、そういえばさっきスキルを三個くらい挙げてませんでした?」
その説明もしなくちゃな……なんかもう伝えることが多すぎてよくわからなくなりそうだ。
「ああ、えっと……俺の『創造』のスキルなんだけど、これは俺が元々持ってたスキルで、レベルが20上昇する事に好きなスキルを自分に付加できるんだよ。そんで最初の一回目だけはレベルとか関係なく付加できたから、それも合わせて俺は今レベル26、つまり三つのスキルを持ってるってことだな」
「そっちの方がよっぽどちーとってやつなんじゃないですかっ!?というかそんなチャンスを一度棒に振ってませんか?『神魔眼』って、ステータスを見ることしかできないんですよね?」
そうなんだよなぁ……でも大抵ラノベ主人公はこの手のスキルを携えて冒険してたりするんだよ。俺も盛大にスタートをしくじったせいで地獄見たし、最初から『身体能力強化(絶)』を身につけてたらって思うと無性に辛くなる。……だが!俺の『神魔眼』は一味違う。なんせ、
「ああ、普通はそうなんだけど俺のは覚醒してて。なんかね、使うと世界の流れがゆっくりになるんだよ。まあ言ってしまえばゆっくり以前に今この世界はろくに働いちゃいないんだけどな」
「覚醒、ですか。それは最初から?」
「いいや、違うよ。まあそうだな。死線中の死線……言わば三途の川を往復してきた感じかな。そんな経験を乗り越えて覚醒したんだよ」
「一回死んでませんか?それ」
「ん、まあそうだな」
俺は少し笑ってそう返す。本当の話あの戦いの時は気絶してただけだから一回しか死んでないな。その一回もマジで死ねたのかはわからないままだが。俺はまだ済んでいない説明を続行する。
「でもそれだけじゃ俺が戦う理由にはならないよな。俺が戦う気マンマンなのはもう一個のスキル『身体能力強化(絶)』があるからだな」
「絶って、なんだか物騒ですね」
物騒なものを見る目でこちらを見るリザ。大丈夫、俺は危害なんて加えないから。
「このスキルを得たことで、俺は大体レベルに換算して100レベル分くらい上昇してるって考えて貰っていい。だからもともとのレベルと合わせて126くらいかな、俺のレベルは」
「ここにも化物が!!」
「むしろそれは褒め言葉だな」
リザの目には俺とアレが同等に見えるのだろうか。そんなわけがない、あれはもう常識の範疇を超えた何かだ。俺のいない所でリザをガッタガタ言わせてたあいつ。理論的には倒せると思うんだが、なんだか落ち着けない。
「何はともあれ!これで勝利に向けての兆しが見えてきただろ?」
「はい!可能性が見えてきました!」
心から嬉しそうなリザ。その顔を見ていると思わず俺の顔も綻ぶ。まだ出会って少しだけど、この子が本当にいい子なんだなというのはすぐにでもわかった。誰もいない今でも、この笑顔は守りたい。
「んじゃ、身支度を終えたら出発だ!」
今はただ、作戦の成功を祈ろう。




