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第十四話 泉とリザ


 「ああ~~~~~退屈です~~~」



 なんて怠けた声を出しているのでしょうか私は。

 そうわかっていても止めることができないほどに、それはそれは退屈なのです。

 何故って、それはもちろんここに私以外に誰もいないからなのでしょう。



 おもちゃもない、本もない、ゲームもない、お友達もいない、そもそも人がいない。

 こんな中でずっと一人で過ごしていては、誰もがきっと狂ってしまいます。



 なので未だその傾向が見られない私はとても、すっごく、頑張っていると思いませんか? まあ、こんなことになってまだあまり時間は経っていないので、それ程胸を張ることもないのですが。



 そういえばここに来てだいぶ時間が経って、色々と気付いたことがあります。

 一番驚いたことは日が傾かないということです。

 私が初めてここのおうちを出た時から、全く太陽の位置が変わっていないのです。

 これには本当に驚いてしまいました。

 その上私のおうち……もうこの小屋は私のおうちと言っても問題ないですよね?



 とにかく、私のおうちにはかの有名な文明の利器、エアコンがありません。

 そう、無いのです! こんな暑い中である関わらず、陽がカンカンに照らす中、無いのです! エアコン等というものは。



 ですが無いものは仕方がありません。

 駄駄を捏ねていてはお天道様に愛想を尽かされてしまいます。

 ここは何とか策を練ってこの暑さを凌がないと。



 そう思った私は、まず最初におうちの前の泉が頭に浮かびました。

 そうですね、あれならこの暑さの中でも涼むことができるかもしれません。

 ここなら誰もいませんし、その、つまり生まれたままの姿になってしまってもなんら問題はないのですから。



 というわけで、恥ずかしながら現在私は裸で泉の前にいます。



 もちろん、脱いだ服はきちんと畳んで足元においてあります。

 しかしまあ‥‥‥うう……なんというのでしょうか。

 凄く、はずかしめを受けている気持ちです……。

 これはいちいち恥ずかしがっていては埒があかなそうです。

 私の羞恥心メーターが振り切れる前に、大人しく入ってしまうことにしましょう。



 私は手の先を泉の水へと伸ばしました。



 「はい、丁度良い冷たさですね。気持ちが良さそうです」



 いざその水に触れるとその心地よい水温に、まだ指先しか触れていないにも関わらず私の心はウキウキと飛び跳ねます。

 そういえばこの暑い中この辺りをできる範囲で調べたりしていましたが、その間にも私は流れる汗に悩まされていました。

 はあ……遂にこのベタベタとした感覚から脱することができそうです!



 昂ぶる気持ちを抑えながら、私はつま先から泉の中へと入ります。

 と、その時。



 「きゃっ!」



 短い悲鳴。

 その声は言わずもがな自分の声です。

 原因は一つ、水温のチェックはしておいて、肝心な泉の深さを全く念頭に入れていなかったことが仇となってしまったのです。

 思いのほか深かった泉は、躊躇なく私を呑み込みました。

 ダメ‥‥‥ッ! 誰か助けて!



 願ったところで当然そう都合良く誰かが来てくれるわけがありません。

 そうやってすぐ人に頼っちゃだめ! 他力本願な私に喝を入れます。

 しかしこのまま水面でバタバタともがいている訳にもいきません。



 (と、とにかく冷静にならなきゃ!)



 泉に落ちてしまったことでパニックに陥ってしまった私ですが、なんとかこの状況でも精神を安定させ、とにかく陸地を目指します。



 そもそも私は泳げないのですが、この命のかかった状況で体は自分でも驚く程の働きを見せてくれました。これが俗に言う、「火事場の馬鹿力」というものなのでしょうか。

 そもそもここに来る以前の記憶というのはあまりないのですが、なんとなく私にとって火事場と言える状況に出逢ったのはこれが初めてな気がします。



 結局私は命を燃やす勢いで陸地まで泳ぎきり……まあ泳ぎきるというほどの距離でもないのですが。

 なんとか命拾いをしました。



 「散々な目に会いました‥‥‥」



 自分のじゃないか! 誰かにそう突っ込まれても何も言い返せません。



 私の危険への配慮が足りなかったが故の事故です。

 危うくこんなところで命を落としてしまうところでした。

 まったく、昨日の誓いは一体何だったというのでしょうか……。

 あんなに堂々と負けてたまるものかと言っておいてもうリタイアなどというのはいささかかっこ悪いじゃありませんか。

 私は自分自身の不甲斐なさに少々落胆してしまいました。



 それにしても。



 「ここ、すっごく深いですね」



 私自身あまり身長は高くないので、私ごときの身長が足りなくともなんらこの泉が深い理由にはならないのですが、それにしても底が知れない深さな気がしました。

 まあ、これもまたなんとなくなのですが。

 ここの水は澄んでいるのである程度先までは見ることが出来るのですが、それでもやはり底は見えません。



 「ここに入る時はもっと用心しなくてはいけませんね」



 怪訝な目を泉に向けながら私は言いました。



 いくらここが深くて危険だとしても、ここを利用しないわけにはいかないのです。

 理由は、まあ‥‥‥私も女の子ですので。

 ずっとお風呂に入らないというのは考えられませんし、考えたくもありません。



 その点ではボディーソープやシャンプーがないのは正直に言ってかなり辛いところです。

 その分しっかり水で洗い流さなければいけませんね!



 「さあ、まだまだ頑張りますよー!」



 右腕を突き上げてやる気を表明した私ですが、よくよく考えれば自分が裸であったことを思い出して恥ずかしさに顔を熱くさせながら、服を持ってその場からそそくさとおうちへ帰るのでした。


 そろそろ会話するシーンを書きたいですね‥‥。

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