第十話 見慣れぬ景色
自分は毎日投稿を目標にしているんですが、なかなか時間が作れません!申し訳ございません!それでも読んでくださる皆様、本当に感謝です。これからも応援よろしくお願いします。
「はあ……はあ……」
木々と草花が生い茂るその中を、俺は一人でかき分けて進んでいた。
先には道など一切見えず、ただひたすらに木が立ち並ぶ、そんな光景。
「なんでこんなことになってるかなあ」
事の顛末は学園を脱する時まで遡る。
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世界王者もドン引きの走力に呆気にとられながらも、俺は校門を出ることにした。
例の奴らも倒したことだし、この地にはもう危険はないので俺は心置きなく学園を去ることが出来る。
別に今生の別れというわけではないんだが、流石にこの状況だと悠斗や瑞希と離れることに寂しさも感じてしまったりするが、俺も確認することとかもあるので、そうもいかない。
「じゃあ早速出発するか。とりあえず目的地は我が家だな」
いつもの独り言を呟いて校門を抜ける。
ひとまずは我が家へ戻って家族の安否の確認だな。
そんでもって外部との連絡が取れるかも調べなくちゃならない。
そうだ、テレビはあってるんだろうか、学園にいたあれは家の近くにもいるのか? などなど疑問は増えるばかりだ。
そんな疑問の解消のためにも、俺は一刻も速く帰宅したい、帰宅したいのだが、ここでまたも一言。
「――なんじゃこりゃ」
突然だが、うちの学園はそこそこ高台にあるのでこの位置からなら軽く街を見渡すことが出来る。
しかし、今現在俺の目に映る街は日々学園を出る際に見るいつもの風景とはかけ離れたものだった。
「学園って森の中にあったんだっけ?」
そんなわけがない。
が、事実街の至るところに木が生えていた。
それも結構大量に。
朝学園に来た時にはこんなことにはなっていなかったので、俺が登校し終えた後で生えたのかもしれないな、なんてことはあるはずがない。
どこにこんな急速に成長する木があるんだ、それもこんなに沢山。
竹なんて目じゃないぞ。
というかもう驚かねえわ。
慣れってのは怖いもんで、もはや「ああ、またか」くらいで済んでしまう。
街と森が一体化している、そんな奇妙な光景を前にやたら落ち着いていた俺は緩やかな坂を下り、街の方へ下りることにした。
道中では案の定というべきか、主婦の方やジョギングを楽しんでいる方等がたくさんいらっしゃった。
――みんな動いてはいなかったが。
「とことん救いがないな」
帰路に着いてからも学園と異なる点は一つもなく、みんな揃いも揃って固まっている。
笑顔のまま固まっているおじいちゃんに泣きじゃくる幼稚園児。
のどかな光景に見えるが、こちらからすれば一切笑えなかったりする。
また、幸いにもさっきから例の奴とは遭遇していない。
正直なところステータスの底上げを行った俺としては少し手合わせ願いたいと思う気持ちもあるのだが、現れないのならそれに越したことはない。
はあ……にしても退屈だな。
だってなんにもないんだもん。
最初は民家を木がぶち抜いている光景に違和感こそ覚えたものの、結構ぶち抜かれてる家が多いので、それももう慣れた。
今は自宅がそうなっていないことを切に願うしかない。
それから少しして、あともう少しで到着というところで、俺はため息をつく。
「はあ……。えーっと?道はどこかな?」
決して家までの道のりを忘れたわけではない。
ただ、自宅までの道の途中で「この先はもう完全に森です」なところに着いてしまったのだ。
「道はこれであってるはずだし……。じゃあつまりこの中にあんのかよ」
今日、といっても実際一日が経ったのかもわからないのだが、この現象が起きてからの俺は働きすぎている気がする。
過労で倒れるんじゃないかとさえ本気で思える。
これからこの中を草をかき分けて進むとなると……。
「先が思いやられるな」
そうは言っても行くしかない。
俺は腹をくくって森っぽい所の入口へと足を踏み入れた。
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はい、回想終わり。
それで今に至るのだが、一向に家にたどり着けない。
正直木々が邪魔で道もないので、方向はこの辺だなっていう感覚で移動しており、かなりきつい。
そのうえ今もなお太陽さんはニート。
つまりほぼ真上でギラギラしているわけだ。
もう、暑くてたまらないわけだ。
「ああ、水が欲しい‥‥‥」
思わず空から清涼飲料水入りのペットボトルでも降ってこないかなあと空を仰いだその時、ペットボトルではなく、アイデアが降ってきた。
「ケータイの地図アプリだ!!」
いかにも現代っ子なアイデアだが、我ながらグッジョブである。
むしろなぜその考えが浮かばなかったのか、自分で自分をしばき倒したいもんだぜ。
ということで早速ケータイを起動させる。
すると……
「よし、いけた!」
画面にはなんとなく登録していた俺の家の位置と、現在地が表示されていた。
なんだ、結構近いじゃないか。
よし、それじゃあ帰宅するぞ!
俺はこの意味不明な森で迷子にならなかったことに心から安堵し、スキップしながらケータイの指示通りに家へ向かうのだった。
次回は明日投稿の予定です。