桜舞う頃に 【4/6】
一話目です。
主人公がどんな出会いをし、どんな物語が紡がれるのか、ご期待ください!
青い空、白い雲、舞う桜の花びら
高校2年の進級式だ。
「謙也〜!お前クラスどこになった?」
聞きなれた声、こいつは赤羽光輝。中1の時に一番最初に仲良くなったやつで、いわゆる親友ってやつだ。
「まだ見てないんだ。光輝は?」
「俺はCだぜ!早く見てこいよ!」
クラス表に素早く目を通してみると、C組10番に自分の名前を見つける。
「光輝ー!俺もCだぜ!」
「っしぁ!親友がまた同じクラスとはラッキーだぜ!今年もよろしくな!」
2人で今年はどんな一年になるかな?とか彼女出来るかな?とか昨日のテレビ見た?とかそんなたわいもない話をして教室へ向かう。
教室は既に半分以上の生徒が居て、みんな次はどんな奴が入って来るのかな?といった様子でドアを見つめている。
「おっ、川口君に赤羽君じゃん!また同じクラスだねっ!」
人懐っこい声色の少女が右手を上げている
。彼女は宮井優華。茶髪のボブカットと高校生にしては小さい153センチという身長が印象的で、男子からも女子からも人気がある。
「お、おっす、よろしくな」
光輝が頬を赤くしながら言う。こいつは宮井に入学時から一目惚れしてずっとこんな様子だ。
新しいクラスに高揚感を感じているとスーツを着た男が入って来る。
「ほら、みんな席に着け!朝の会始めるぞ」
相楽慎司。去年と同じ担任だ。若々しい見た目と黒縁メガネのイケメンで人気がある教師だ。
出欠を取り終えたくらいで、相楽が改まった態度をとる。
「えー。実はこのクラスに転校生が来ることになった!みんは仲良くしてやってくれ」
一気にクラスがざわめく。自分としてもどんな人が来るのかは気になるところだ。
ガラッとドアが開く。その瞬間、風が吹いた気がした。
セミロングの黒髪、長めのまつげに整った二重まぶた。そして有り得ないほど着こなした制服。
綺麗だ。その一言に尽きる。
「綾瀬美波です。みなさん、よろしくお願いします」
おお〜。という歓声が響く。
「そうだなー、じゃあ綾瀬の席は川口の隣が空いているからそこを使ってくれ!」
綺麗な歩き方で俺の隣までやって来てすとんと椅子に腰掛ける。ふわっと香るクチナシの匂い、かと思えばこちらに微笑みながら
「よろしくお願いしますね、川口君。」
と、透き通った声で話しかけてくる。
間違いない。
俺は今、この瞬間
恋に落ちた
「おーい、謙也?おーい!?」
「あぁうん、そうだねそうだね」
「いや、何も言ってないんだけど…てかもうみんな帰っちゃったよ?早く帰ろうぜ」
光輝に呼ばれてやっと我に帰る。完全にぼーっとしていた。隣にいたはずの綾瀬はもういない。
「ってもう5時!?早く帰らなきゃ」
光輝と教室を出る。
うちは私立の学校なのでみんな電車で通学しているのだが、光輝とは電車が逆方面なので駅で別れる。
電車を待っていると声を掛けられる。
「川口君ですか?奇遇ですね!」
なんと隣には綾瀬がいた。
「あ、綾瀬さん!?どうしてここに?もうみんな帰ったはずだけど…」
「先生に呼ばれて色々お話や手続きをしていたらこんな時間になってしまっていて…そういう川口君は?」
「え、俺?あーなんかぼーっとしちゃっててさ、ははは、あ、あと敬語じゃなくていいよ?俺もタメで話してるしさ」
「分かりました。タメで話すね。」
敬語だった為、タメになった瞬間ドキッとする。
「綾瀬さんは何処駅なの?」
聞いてみるとなんと最寄駅が同じだという。
「へぇ、なら朝一緒に行かない?」
「いいの?やった!まだこっちの電車に慣れていなくて困ってたところなの。ありがとう!」
いや、こっちがありがとうと言いたいくらいだ。
電車の中で聞いた話だが、彼女は中1から高1まで父親の仕事の関連でアメリカに行っていたらしい。大学生の姉が居るらしく、4人暮らしだそうだ。
楽しい時間ほどすぐに過ぎるもので最寄駅につく。駅からは方面が逆なのでここでお別れだ。
「じゃあ明日の7時にここで、またね!」
「あ、ちょっと待って川口君。携帯持ってる?連絡先交換したいな。」
「え、勿論いいよ!」
驚きと喜びのあまり声が裏返る。
結局電話番号、メールアドレスとチャットアプリのLINKを交換する。
「ありがとう!転校先で初めての友達だよ!じゃあまた明日、またね!」
そう言って綾瀬は歩いていく。
綾瀬の連絡先が入って少し重くなった気がするスマホを握りながら家に戻るのであった。
一話目にしてフラグ立たせました(笑)
次は帰宅後のお話となります。
川口君の家族関係についても明らかになります。
自分の予定では主人公がかなりのモテモテコースを辿ることになります。
川口君と綾瀬さんの関係についてもご期待ください!