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ウォーターガン  作者: はる
序章
5/6

4 心配

お久しぶりです。

「どうしよう……」

 鬼原勇太は悩んでいた。

 名前にある「勇ましい」と言う字を全く感じさせないような雰囲気で悩んでいた。

 平和第一のこの世界で、いや、平和しかないこの世界で、自分ではない誰かを傷つけることはあってはならないことだ。

 そもそもこの世界に人を傷つける方法は素手、つまり自分の体を武器にするしかなかった。それなのに、自分は人を傷つける、それも離れたところから傷つけるものを作り出してしまった。

 そんなことをして、何もないはずがない。

 どんな罰則を受けるのだろうか。

 もし自分だけでなく、家族にまで被害が及んだら、自分はどう責任を取ればいいのだろうか。

 基本農業や制作業など人数の必要な産業しか収入、生きていくために必要なものを得られないため子供を多く生むのが一般的なこの星ではほとんどが大家族である。

 僕の家も例外ではなく、男3人、女3人の合計6人の子供に父、母、祖母が二人と祖父が一人いる。もう一人の祖父は亡くなったわけではなく、腕を買われてどこかの工場または家で、住み込みで働いている。ただ、よほどの機密のところらしくめったに会うことはできない。また、会えてもほんの少しの時間で、その時間も監視の人がいる状態でだ。まるで何かしら罪を犯した人のような対応だが、決して僕の祖父は罪を犯していない。

 それなのに、僕は罪を犯してしまった。

 これから僕は何をすればいいのかわからない。

 まず、このことを家族に報告すべきなのかどうかと言うこと。

 本来なら、普通なら、絶対報告すべきなのだと思う。

 でも、入学してはじめに言われた。何かあっても、それを周りに漏らさないこと、と。

 もちろんこれは絶対ではないし、全部が全部と言うことではない。僕の推測だと、そのことのせいで評判や信頼性が落ちたり敵対するところにその情報が回って弱みを見せることになったりすることを防ぐためなのだと思う。だから、家族なら問題ないとは思う。

 でも……でも、だ。

 確かに今回、僕は罪を犯した。

 でも、あの様子だと特に咎められることはなさそうだ。

 だからこそ、言うかどうか悩むのである。

 今は帰り道。

 心配をかけるわけにいかないから、家ではこんな顔をしてなんかいられない。

 今、言うかどうか決めないといけないのである。

 さっきも言った通り、僕の家族は多い。だから、僕はできるだけ親を心配にさせるわけにはいかないのだ。それで、家で考えていて心配されないように今きめようとしているのだ。

 が、そもそも心配をかけない、と言う時点でいわないのはもう決まっていた。

 隠し通すのだ。

 それが悪いことだというのは十分承知している。

 嘘をつくのがいけないことだって、しっかりわかっている。

 でも、人思っての嘘もあるのだ。

 優しさのこもった嘘。それが相手のためだと、自分の心に真実はとどめて人には虚実を言う。

 今の僕のがこれに当てはまるかどうかはわからないけど、でも親を心配させないためと言うのは確かだ。問題はない……はずだ。

「ただいまー」

 だから、今日あった出来事を悟られないように、いつも通り帰宅した。

「おかえりー!」

 とっとっと……と、僕の声を聴いた今年学問教教習所に入ったとは思えないほど幼い弟が、廊下を駆けて僕のいる玄関へとやってきた。

「ね、ね、あそぼ!」

 これでも八歳児だ。それも、勉強させたら天才と周りから言われるほどの頭脳の持ち主。

僕からは、弟にとっての学問とは遊びの延長線上であり、本人としては学問も遊び感覚で楽しんでいるようにしか見えない。まあ、そもそも弟の使っている教科書を見たらめまいがしたくらいだ。僕の通っている学校で使われている、図やイラストが多くパッと見ただけでもいいほど分かりやすく書かれた教科書なんかとは比べ物にならないほど難しく、ほとんどすべて文字だけの教科書。僕が貸してもらって、まったくわからずじまいで返した後弟が読んでいるときは、ただやみくもに読んでいるだけだと思ったものの、あとで聞くとしっかり理解していて、それこそ僕の学校で何かをつくる前にそのものの原理なんかを説明されるのだが、それ以上に詳しく教えてくれた。僕の読んだ場所にはそのことが書いてあったらしい。ただ、学校で聞いた説明ですらわからなかった僕にそんな説明が理解できるはずもないのだが。ただ、学校では原理が分からなくても図やイラストが細かく書かれているから何の支障もなく作ることができる。それがつくることができれば後はどうでもいいつくらせる方にとっては、わざわざそれを説明するために手間をかける必要はないのだ。

 話を戻そう。

そんな弟だが、それよりももっとすごいことができる。

 それは、水紙を使うことができるのだ。

 もちろん、それは読むということではなく、書いたり水紙そのものを作ったりすることができるということだ。

 この星の文字認識率は決して高くはない。と言うより低い。

 普段文字などを必要としなかった暮らしをしてきたこの星の人間にとって、文字と言うのはまだ新しい物なのだ。

 国によっては普段の生活にもそれを必要とするところもあるらしいがこの国は違う。簡単な単語程度なら大体の人が読むことができる。

 文字を書くもの、と言う概念の無いこの世界では読み書きの書きの部分はない。

 そもそも文字自体が、水から物を生成するこの世界の魔法が見つかり、それが誰でも使えることが分かり、独占されてきたその方法が公開されて、人から人へ伝えるためにより楽に伝えられるために作られたもので、この世界の文字は魔法ありきのものとなっている。

 この世界で文字を描くためには魔法が必要だ。

 『描く』と言うのは、その方法からだ。

 まず水紙を作るか、またはほかの誰かがつくった水紙を用意する。

 次に、その中の水の一部の色を変化させる。

 そして、その色を変えた水で絵を描くように文字を書いていくのだ。

 ちなみに、教科書はこの方法でできた水紙に、木を薄く切ったものを浸けてその色を木にしみこませて乾かしたものを束にして作っている。高級なものだと、服に使っている布を浸けて使うこともあるそうだ。これは服の種類が増え始めた要因の一つだ。

 水に絵、ないし文字を描くことは、ものづくりの魔法が使えるものならだれにでもできる。でもそれは、ある場所の水の厚さや密度を変えることにより、その部分だけ光の屈折角を変えることで色をつくり、何かを描いていくもので、それに木を浸けても魔法が壊れ絵ないし文字が消えてしまうか、状態硬化、維持、強化、固定などが得意な人なら消えないかもしれないが、とにかくそれが木に写ることはない。

 でも、それをこの弟はできるのだ。

 それも、このまだ8歳と言う幼さで。

 魔法の得意不得意、性質などは遺伝やら発育時の環境やらであり努力では変えられないものがほとんどであるから(すべて上手にすることで、苦手なものをそれが得意な人と同じくらいのレベルまで上げることはできるが、その場合得意なものも上達するから、自分の得意なものより苦手なものを上手にすることはできない)年齢に関してはあまり関係がないというのがこの世界の魔法の常識だが、それでも普通は魔法が使えるようになるのは10歳くらいで、それを使いこなせるようになるのがこの世界では成人に当たる15歳である。

 13歳の僕がうまく魔法が使えない理由はこれであってほしい(性質かもしれない)。

 それなのに弟はすでに使えるのだ。

 だからこそ、天才なのかもしれないが。

 そんな弟が「遊ぼう」と言ってきた。

 とてもじゃないが、今僕はそう言った気分ではない。

 だから、「ごめんね。今そんな気分じゃないんだ」と、素直に断った。

「えーー」

 そう言われても、僕の気持ちが変わることはない。

 いや、そんなことで変わるのだったらもっと早く変わっていたはずだ。

「あそぼうよー」

「ほら、勇太(ゆうた)お兄ちゃん困っているじゃない。陸ちゃんも遊んでいないで、勉強しなさい」

 『勇太』、とは僕の名前だ。

「はーい」

 普通こう言われたら、残念がって声が暗くなるだろう。

 だが、弟――陸兎の声が暗くなることはない。なぜなら陸兎にとって勉強も遊びだからだ。

 だから、まだ楽しそうな声で、否、さっきよりも楽しそうな声で返事をした。

 てくてくと、自分の部屋へ歩いていく。

 弟の陸兎の名前の由来だが、生まれたときにいろいろ人手が足りていなくて、そんなとき生まれてきた男の子だったから、陸の上を素早く走る兎のように、いろいろなことを手早く片づけてもらえればと名付けたようだ。ちなみに「陸」の読み、「りく」には(りく)人目の子供と言う意味もあるらしい

「何かあったの?」

 横からとんと指で肩をつつきながら、僕の姉である優美(ゆみ)はそう言った。

 振り向くと、姉は優しげな顔、でも真剣な目でまっすぐ僕を見つめていて、僕と目が合うと、その目に僕は心まで見透かされているように感じた。

僕に何かあったことを確信しているように。

 僕がそれに気づいたことを察したからだろうか、姉は少し首を傾けてほほ笑んできた。

 それを見た僕は緩んでいた唇を引き締めて、こくりと頷いた。

「話聞いてあげるから、ついてきて」

 そう言って姉は玄関に背を向けると、廊下を歩きだした。

 僕は言われた通り、姉についていくのだった。


すいません。

途中で終わってしまいました。

次回は一週間以内に投稿しますが、

テストがあるのでその次の投稿は約一か月後になります。

ご了承ください。

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