第2話 本気
9/22加筆しました
「こほん…失礼。それでは内容を説明しよう。ルールは簡単。君たちにはあるものを探してもらう。それを時間内に一番多く集めたクラスが優勝だ。ああ、言い忘れていたがこれはクラス対抗だ。詳しいルールは追って教室のパソコンに送信する。見事優勝したクラスは…そうだな。いいことがある、とだけ言っておこうか。ゲーム開始は一時間後だ。まあ、健闘を祈っているよ。」
だからなんなんだよこいつ。何がしたい?学校を占拠したと思ったらゲームだと? 何を企んでる…全く…意味不明だな。まぁいい。中学二年生の頃の妄想が形になったんだ。思う存分やらせてもらう! とにかくルールを確認しようと、零次はパソコンに向かった。
パソコンに表示されたゲーム説明をまとめるとこんな感じだ。
①このゲームの目的は校内に散らばった、トークンを探すことだ。トークンにはわかりやすいように目印がついている。
②目的を達成するためには人を殺さない限り、何をしても構わない。
③生徒諸君には特殊なアーマーを着てもらう。このアーマーは内蔵センサーにより身体が受けたダメージを計測する。受けたダメージが規定値を超えると電流が流れ一時的に行動不能になる。そのまま放っておくとダメージが蓄積され完全に行動不能となる。また、規定値を超えない限りダメージは時間とともに回復する。ただし、どれだけのダメージを受けたかはわからない。アーマーは追って部下が届けに行く。
④行動不能になるとその生徒は死亡扱いになり、その後のゲームには参加できない。
⑤死亡扱いとなったものは校内の一室でゲーム終了まで待機してもらう。
⑥ゲーム時間は今日から一週間。その時点で一番多く持っていたクラスが優勝だ。
⑦学校からは出ても構わない。もちろん何かを買ってもいいし、警察に行ってもいい。しかし、24時間以上校外にいた場合はその場で失格とし、死亡扱いとなる。
⑧何かを買う際に使う資金について我々は関与しない。
⑨このパソコンは我々との唯一の連絡手段だ。気軽に質問を送ってもらって構わない。
⑩優勝したクラスの生徒以外はゲーム終了と同時に本当の死亡となり、この世から姿を消す。
ルールを読み終わった零次はゲームを楽しもうとしていた先程の自分を恥じた。
…こいつは予想外だ…いくらなんでも…冗談じゃないぞ。優勝したクラス以外は死亡だと? 生き残る確率は五分の一? ふざけるな。これはゲームなんかじゃない、命懸けの戦争だ。だが、そんなこと…
「急にそんなこと言われても信じられないだろうから見せてあげよう。見たまえ。」
なにっ!まさか…
ザザッ
東雲がそう言うと画面が切り替わり、学校の一室が映った。零次は嫌な予感を抱きながら画面を見る。…職員室か。
職員室の中央に手を後ろ手に縛られ、猿轡をされた一人の男が写っている。
「先生!」
その映像を見ていた女子が声を上げた。
「先生?教師なのか?あいつ?」
「何言ってんの。教師だよ。現国の。」
「…そ、そうか…」
呆れながら答えた女子生徒、篠田真里に返事をしながら零次は映像を見つめた。
その教師に向かって一人の男が歩いてきた。手には黒光りする拳銃。男は教師に近づくと拳銃のセーフティを外した。教師は必死に身をよじり逃げようとするが、しっかりと縛られた縄がそれを許さない。
やめろっ! 零次は唇を噛み、怒りを抑えた。
男は冷静に拳銃を両手で構え、おもむろに引き金を引いた。
ダン!
轟音とともに教師の胸に鮮血が飛び散り、衝撃で机を巻き込み後ろに吹っ飛んだ。男は銃口から煙の立ち上る拳銃をしまうと画面から姿を消した。
クソッ!
零次は怒りで頭が真っ白になりそうなのを必死で堪えた。落ち着け、いかなる時もポーカーフェースを忘れるな、だ。黒羽◯一の教えを思い出し、落ち着かせると聞こえてくる放送に耳を傾けた。
「わかって頂けたかな? 我々は本気だ。君たちには是非とも頑張ってほしい…こうならないようにね。では、また会おう。一週間後を楽しみにしているよ。」
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