アレウスの聖騎士
弟よ。
これを聞いているということは、アイヴィス様にこの石の存在に気が付いて頂けたということなのであろう。
まず、おまえより先に旅立ってしまった兄を許して欲しい。
私はイズガルドの民を代表し、グレン先遣隊の護衛隊長の任を受けたことを誇りに思っている。
ゴブリニアとの戦争は避けなくてはならない。
それは国王の御意志でもあると同時に、戦争になれば関係の無い民を巻き込むことになり、私とおまえのような兄弟を国中に増やすことになるであろう。
私は恵まれていた。
教会に預けられてからは何不自由なく、おまえとの生活を営むことが出来た。
だけど、それはほんの一握りの者にしか許されない過分な幸せなのであろう。
多くの民は流浪の身となり、街を追われ、宛ての無い生活を余儀なくされるであろう。
私はそんな未来が許せない。
だから、この度のグレン先遣隊の任はこの身に何があっても果たさなければならない。
しかし、結果はこの有様だ。
信じていた友に裏切られた。
彼に何があったのかは知る由も無い。
彼には彼なりの理念があってのことだろうと、私は信じている。
彼の正義と私の正義が擦れ違っただけのこと。
彼を恨む気持ちなど微塵もない。
だからおまえも彼を恨む必要など何処にも無い。
私が非力だった故に彼に負けたのだ。
己の正義を最後まで全うしろ。
そうすれば自ずと道は開ける。
弟よ。
自分の力を信じ、真っ直ぐに己の道を進むが良い。
兄はその姿を天界で愉しみに見ている。
そろそろ迎えが来たようだ。
躰が焼けるように熱い。
でも、心地良いのは不思議なものだ。
それではまた逢おう。
親愛なる弟、ギルバート。
今まで本当に有り難う。