神の時代に
遙か昔。
この世界では三人の神々の兄弟が永きに渡り覇権を争い戦っていた。
一人は戦いの神、ギルガルド。
一人は正義の神、イズガルド。
一人は怨嗟の神、ノルガルド。
三人の神々はお互い譲ることはせず、戦いに明け暮れていた。
しかし、あるとき戦いに転機が訪れた。
次男の正義の神、イズガルドは戦いの日々に疑問を感じ、自ら覇権争いを放棄し、世界で二番目に大きい島を自らの住処とし、眠りについた。
これに長男の戦いの神は大いに嗤った。
自ら戦いから背を向け世界で二番目に大きな島で満足なのか、と。
三男の怨嗟の神は失望した。
今までの戦いのなかの犠牲をなんと考える。それらが全くの無駄ではないか、と。
二人の神はイズガルドを嗤い、失望したがイズガルドは自らの考えは決して曲げようとはしなかった。
戦いの日々に身を興じた過去の私は誤りであった。
これからの私は過去の過ちをただし正義の為に尽くす、と。
そして、この精神は誰にも邪魔されなない自由であると、二人の神に宣言した。
この宣言を認めた長男のギルガルドは、次男のイズガルドが島に棲まうことを認めた。
三男のノルガルドは長男のギルガルドの決定を烈火の如く怒り反対した。
何故、戦いもしない神が二番目に大きな島に棲まうことが赦されるのか。
怒り狂った三男のノルガルドは、全軍を率いて長男のギルガルドに決戦を挑んだ。
二人の神の争いは激しく、その犠牲は夥しいものとなった。
何時終わるともしれない戦いに、一人の英雄が現れた。
英雄の名はギルヴァーナ。
ギルガルドの長男であるギルヴァーナは、とある戦いでノルガルドに深手を負わせた。
深手を負ったノルガルドは、世界で一番小さく苛烈な島へ逃げ延びた。
ノルガルドの命が長くは保たないと思ったギルガルドは追っ手を出さなかった。
深手を負った三男、ノルガルドへのせめてもの情けであった。
しかし、ノルガルドはその情けを快く思わなかった。
ノルガルドは、自らに倒し、自惚れているギルガルドにいつか復讐することを誓い、世界で一番小さく苛烈な島で眠りについた。
神々の戦いを制した長男のギルガルドは、この世界で一番大きな島を住処とした。
次男のイズガルドと三男のノルガルドを倒した自らの功績に満足し、眠りについた。
こうして三人の神は、それぞれの想いを胸に眠りについた。
三人の神には、それぞれ子供が三人いた。
ギルガルドには、長男のギルヴァーナ、次男のアスター、長女のレダ。
イズガルドには、長女のリエッタ、長男のアレスタッド、次女のフィーネ。
ノルガルドには、長女のカイラ、次女のブリジット、長男のケイン。
それぞれの子供は天使と呼ばれ、人間界の奇跡の力の行使に寄与していた。
九人の天使は、お互いに助け合い、世界の均衡は保たれていると思われていた。
しかし、忘れてはいなかった。
嘗ては三人の神が争った時代があったことを。
そして、その全てを我が手にしようと企むものがいた。
偽りの均衡が終焉を迎える。
ノルガルドの長男、ケインが人間界に降臨する。
天使の力は余りに強大で世界の均衡は破られた。
その危機にギルガルドの長男、ギルヴァーナが降臨した。
続いて、イズガルドの次女、フィーネも降臨する。
斯くして、天界と人間界を巻き込んだ争いが今当に始まろうとしているのであった。