アイヴィスの想い
私がその報せを聴いたのはトラミノからセンチュリオンへ向かう途中であった。
イズガルド王、暗殺。
『伝心』で聴いた時は何かの間違いであると思ったが、直ぐに彼等の計略に嵌まってしまった自分の不明さを呪った。
私はグレン先遣隊襲撃の真相を究明するように国王より密命を受けていた。そして間の本来に任務である王都の警護は第二聖騎士が受け持つという手筈になっていた。
王都の警護を放棄してまでグレン先遣隊襲撃の真相を究明することに抵抗を感じていたが、国王からの直々の命令は嘆願にも感じられ、平和を心から望む国王の強い意志に少しでも力になりたい、そんな気持ちから快諾したことでもあった。
そして、その国王が暗殺された。
首謀者は黒衣の集団であることは明白である。
城外を翼竜で混乱させ第二聖騎士を釘付けにして、城内に潜入。
黒衣の集団の長であれば第一聖騎士を倒すことが出来ると判断してのことであろう。
模擬戦でみせた第一聖騎士の剣技は剣聖としての誇りは失っていなかったが、明らかに衰えを感じさせていた。全盛期の剣技であれば、アンブレイカブルを以てしても全ての剣戟を弾き返すなど出来る訳がなかった。
『どうするアイヴィス? このままセンチュリオンに向かっても間に合わないわよ。王都の戦況は、国王と第一聖騎士を失い、頼れるのは第二聖騎士だけ。彼の力量を疑うわけではないけど、相当な消耗を強いられている筈。万が一、第二聖騎士まで失うことになれば、イズガルドは大変なことになる。一刻も早く向かう必要があるわ』
「それは判っているわ、フィーネ。でもどうやってセンチュリオンに戻るというの。ここからセンチュリオンは馬でも三日の距離よ。三日もあれば大方の戦況は決しているわ。私が戻ったところで……」
つい弱音を吐いてしまう。
これほどまでの絶望感を味わったことは今まで経験したことがなかった。
レイナの死であってもフィーネが一緒なら乗り切れると信じることで、前向きな気持ちになれた。
しかし、今回は違う。
フィーネの力を以てしても王国中を右往左往しているだけで、何一つ真相に近づくことが出来ていなかった。
いや、襲撃そのものの真相は最初から明らかであった。
グレン先遣隊が襲撃地に着いたのは、五日後のことであった。
亡くなった騎士の殆どはアズダルクに埋葬されていたが、その場に残されていた騎士の傷跡をみるとアイスダガーによるバックスタブが致命傷であることは明らかであった。
イズガルドの精鋭の騎士を一方的にバックスタブで葬る技量を持ち合わせているアサシンなど、西の砂漠の大国ですら、片手で数える程しかいない。
しかし、この襲撃は百二十名にも及ぶ騎士を一方的に殲滅している。アサシンとしてのの技量の高さは当然であるが、襲撃に加わったアサシンも多かったことを示している。
となると、数多くのアサシンを抱える、黒衣の集団しか襲撃は為し得ないということになるのである。
では一体何故、ノルガルドの黒衣の集団がゴブリニアとの和平に向かっているグレン先遣隊を襲ったのか、という点が疑問となる。
ノルガルドからすれば、イズガルドとノルガルドの和平など、どちらに転んでも国益にはならない。ノルガルドはイズガルドの北方の海に浮かぶ小国。彼等は絶えずアサシンによる暗殺を戦術の中心に捉えており、センチュリオンは、そのアサシンの侵入を防ぐために幾重にも亘る奇跡の力による防護が施されていた。
その防護は、絶大な効果を発揮していて、数世紀にわたってセンチュリオンにアサシンが進入したという記録はなかった。
でも、それは若干、事実と異なっていた。
黒衣の集団は、センチュリオンの市民として潜入し、何世代にもわたり一般の市民として暮らしていたのである。
そのことを突き止めた私とフィーネは、ある一つの家庭が黒衣の集団の一員ではないかと疑いを持つようになる。何世代にもわたり一般の市民として暮らしてきた家族である。
外から見ているだけでは、全く判別がつかなかったが、彼等がアレウス山脈へ向け、旅立ったとの情報が銀十字聖騎士団にもたらされる。
私たちは確信した。
彼等のうちの誰かが黒衣の集団の一員である。
その後は尾行に於いても奇妙な出来事が起きた。
湖畔でのファラードとの出会いと死。
カムロドンのゴブリンの襲撃。
そこで私はグレン宰相より聞いていたランベルトの生存についての情報を彼等に話し、様子を伺うことにした。
そこで意外であったのは、彼等のランベルトへの面会が適ったことである。
ランベルトへの面会は騎士である私ですら適わない。
その面会が私が書いた紹介状で適うととは夢にも思っていなかった。
結果はランベルトの生存、そのものが欺瞞であった。
私は酷く混乱した。
黒衣の集団がいると思われた集団に黒衣の集団はおらず、味方と思っていたグレン宰相の側に黒衣の集団の一味がいたのだった。
考えてみれば、模擬戦の一件以降、グレン宰相が味方かと問われると答えに窮する。
何かの思惑を持って行動しているのは明らかであったが、真逆、黒衣の集団と繋がりがあるとは考えられなかった。
それでもこの目で確かめるまではグレン宰相を信じたい気持ちで一杯であった。
誰が味方で誰が敵なのか。
それもで黒衣の集団が国王を暗殺したのは揺るぎない事実である。
近くで馬の嘶く音が聞こえる。
『アイヴィス。ちょっと待って。今、慥かにエルフィスの鳴き声が聞こえたわ。エルフィスが近くにいるのかも』
エルフィスの話しは以前にフィーネから聞いたことがあった。
天界に棲まう天馬で、驚くほど脚が早く、疲れることも知らないという。
そして一度走り始めればまるで絨毯の上を滑るかのように滑らかに走り、馬上で眠ることも出来るというフィーネの愛馬のことである。
そのエルフィスが天界から降りてきたのである。
『信じられないわ。エルフィスは、自らの意思では人間界には降りてこられないのよ。天界からエルフィスを遣わせることが出来るのは私の父。イズガルドただ一人。だけど、天界の主神の一人である父が、人間界に直接、干渉するなんて信じられないわ』
「あらそうかしら。私としてはとても自然な事に思えるわよ。失意の淵に墜ちた我が娘を放っておける父親なんて人間界にはいないですもの」
私は悪戯っぽく笑みを浮かべる。
天界や人間界と云っても父親と娘の関係に変わりはないのかもしれない。
いつ、どんな世界に於いても親は子の事を心配に思うのだろう。
私はそんなフィーネの事を羨ましくさえ思う。
生まれ故郷のヴァルナをそっと想う。ウィルシャー家に奉公に出されてから一度も両親に会っていなかった。
今回の件が終わったら、一度、ヴァルナに戻ろう。一人の娘、アイヴィスとして。
エルフィスが駆け寄ってくる。
白銀の様に光輝く美しい馬であった。
初めて会う私にフィーネの存在を感じ取ったのか、とても懐いた様子で近寄ってくる。
「エルフィス、初めまして。私がアイヴィスよ。これからは私もあなたの相方になるのよ。どうぞ宜しくね」
エルフィスに言葉を掛ける。私の言葉を理解したのか、短くエルフィスが嘶く。
「では早速、一仕事よ。センチュリオンへ大急ぎで向かって頂戴。白銀の天馬の実力をみせて頂くわよ」
今まで乗っていた軍馬から降り、声を掛ける。
「あなたも今まで有り難う。ここからはあなたの自由よ。またセンチュリオンの厩舎に戻っても良いし、このまま野に戻るのだって構わない。あなたの好きにするのよ」
第三聖騎士となってから、今までずっと一緒だった軍馬に別れを告げる。
軍馬は一度こちらを振り返ると、足早に駆けていった。
向かった方角はセンチュリオンの方であった。また、センチュリオンで出会えるのかも知れない。
『さてと、私たちも出発するわよ。エルフィスならセンチュリオンまで一日もで十分よ』
フィーネの言葉に反応するように前脚を大きく上げるセルフィー。
「行きましょう、フィーネ。そしてエルフィス。こうしている間にもセンチュリオンは大変なことになっているわ。私たちも急行して出来ることをやらないと」
エルフィスに跨がり出発の意思を伝える。最初は静かに駆けだしたエルフィスであったが次第に速度を速めると周りの景色が飛ぶように流れ始めた。
行く手を阻む木々など存在していないかの如く、速度を緩めることなく森の中を進む。
途中の小川や崖などもエルフィスが飛ぶと何も無かったかのように飛び越していた。
「凄い! これがエルフィス。白銀の天馬の実力なのね!」
私は驚きフィーネに声を掛ける。
『このくらいで驚いていてはエルフィスに失礼よ。まだ彼女はあなたに遠慮して本気を出していないわ。エルフィス、構うことないのよ。もっと速度を上げて、センチュリオンに急いで向かうのよ!』
フィーネの指示に呼応し、加速するエルフィス。
空を飛んでいるかのような速度になる。
これならセンチュリオンまで一日あれば到着できる。
そう思い安心した私はエルフィスの背中で眠りに落ちた。
目を覚ますと驚いたことにセンチュリオンの城門の前であった。
時刻は夕刻。
まだ日が落ちてから、それほど経っていないと思われた。
フィーネは私が目を覚ますと同時に話し掛けてきた。
『あら、良いところでお目覚めね。第二聖騎士があなたの到着を首を長くして待っているわ。この様子だと王都は大変な被害に見舞われているわ。きっと、翼竜に散々やられたみたい』
フィーネの言葉を聞いて周囲を見渡してみる。
まず、目に入ってきたのは王都の変わり果てた姿であった。
センチュリオンの誇る城壁は無傷であったが、至るところで建物が複数の岩石によって押しつぶされていた。恐らく翼竜が岩石を落下させたのであろう。建物の中には逃げ遅れた住民の姿も見られる。その建物を取り囲むように騎士や住民が集まり、瓦礫を取り除き中にいる住民の救助が行われていた。
王都を守る第三騎士団の被害も甚大であった。
第三騎士団、団長のレイバックが私を見つけると駆け寄ってくる。
「アイヴィス様、ご無事でしたか。見ての通り王都は酷い有様です。翼竜の襲撃に遭い、第二騎士団と第三騎士団が合同で迎え撃ちましたが、大空を駆る相手に『神罰』は無力。唯一の対抗手段は『裁きの鉄槌』だけでしたが、私を含め数名しか扱える騎士がいないので、翼竜に対して有効な手段を殆ど講じる事が出来ませんでした。それでこの有様という状況なのです」
騎士団長のレイバックが涙を浮かべ、私に対して詫びてきたが、当然、彼を責めるわけにはいかない。
「いえ、詫びなければならないのは私のほうです。王都がこのような状況に陥っているにも関わらず、王都を不在にしていた私は全面的に非難される冪です。あなたに非など微塵もありません」
私は己の非力さを悔やんでいた。黒衣の集団の罠に嵌まり、迂闊にも遠方の地まで引き摺り出されていたのである。黒衣の集団の目的は明らかである。私を遠方まで引き摺り出し、警護が手薄になった王都を翼竜で襲撃し、混乱に乗じて国王の暗殺する計画だったのである。
しかし、それは一方では大胆な作戦とも謂えた。
私が不在にしていても王都内には二人の聖騎士が常駐していた。第一聖騎士と第二聖騎士である。第二聖騎士は王城の守護が主な役割であったが、私が不在であることから王都の警護も一時的ではあったが国王より命じられていた。よって翼竜への応戦は第二聖騎士が行うこととなり、王城から離れることは容易に推測できる。
しかし、王都が直接襲撃されるという非常事態である。
王国最強の聖騎士ヴァンクリフが国王の傍を離れる訳が無いのである。そんななかで暗殺を行うということは、ヴァンクリフとの勝負に勝利できる自信が無ければ成立しない作戦である。
では、どうやってヴァンクリフの実力を見定めることが出来たのか。
答えは明白。
模擬戦を観ていたのである。
私との模擬戦に於いてヴァンクリフの実力を見切り、今回の作戦を決行したのである。
ヴァンクリフの実力は黒衣の集団にとって最も得たい情報の一つであった。
その情報を模擬戦が行われたことで、何の代償も払わずに得ることができたのである。
模擬戦の開催は単なる偶然の一致か、それともグレン宰相の陰謀だったのか。
思案に耽っていると突然、目の前に第二聖騎士のガーネットが立っていた。
「アイヴィス殿、こちらでしたか。あなたの帰りを待ち侘びていましたよ。翼竜は明け方にはノルガルドの方に飛び去っていったのですが、見てのとおり王都の被害は甚大です。現在は第二騎士団、第三騎士団が合同で王都の復旧の作業を行っているところなのです」
私の到着を待ち侘びていたガーネットは直ぐに話し掛けてきた。
レイバックはいつのまにか、復旧活動に戻っていた。
ガーネットは私の方に顔を寄せ、小声で話しを続けた。
「ここから先は余り大きな声では話せないのですが、国王と第一聖騎士の暗殺の件ですが、この件については騎士団には連絡しておらず、銀十字聖騎士団のみが知っているという状況です。しかし、当然、王国政庁はこの事をいち早く耳に入れた様で、既に次期、国王の人選に取り掛かっているようです。なにせ急なことではあるのですが、国王に皇子がいない、ということが最大の問題となっています。その場合の皇位継承権は一応定められているのですが、派閥争いが今も王国政庁内で繰り広げられているのです。王都がこの様な惨状の最中に、全く嘆かわしいことです。しかし、その派閥争いに終止符をうてる唯一の人物、グレン宰相の姿が見えないようです。今朝から姿を見た人がいないので、王都で被害にあったか、それとも王都を離れていて無事であるのかも判らない状況に王国政庁も困り果てています。なんといっても王国政庁の長はグレン宰相ですからね。次期国王が決まる迄の当面に期間はグレン宰相に国王代理を務めてもらわねばならないのですから」
王都の惨状を目の当たりにしながらも、次期国王選びに奔走する王国政庁の内紛に辟易した様子を見せるガーネットであったが、王国政庁としては国王の不在期間が長ければそれだけ政情が不安定になりかねず、更にはグレン宰相の姿も見えないとなれば慌てるのも仕方がない話しではあった。
「その件については、了解しました。しかし、グレン宰相の姿が見えないのは気に掛かりますね。このような事態に於いては真っ先に活躍していただきたい人物であるのですが…… 真逆、翼竜の襲撃の被害に遭っているとか、そうゆうことは無いですよね?」
「その恐れは非常に低いかと。王城には第二騎士団を配置し『神罰』で牽制してましたから、翼竜は近づくことも困難な状況でした。まあ、翼竜に『神罰』が当たるようなことも殆どなく、本当に牽制程度にしか為らなかったのはお恥ずかしい話しではあるのですが」
となるとグレン宰相は何時から不在であったのだろうか。新たな疑問が湧く。
しかし、今はその事について追求している時ではなかった。足早にガーネットとともに王城を目指す。
黒衣の集団の犠牲となった国王と第一聖騎士をこの目で確かめたかった。
そして国王と第一聖騎士に自身の不明さにより招いてしまった事態を詫び、赦しを乞いたかったのである。
それからは王城まで私とガーネットは口を開かずにいた。それは、お互いに思うことがあっての事だったと思う。
王城に辿り着くと先ず、最上階の謁見の間に向かう。
そこに国王の遺体が安置されているからであった。
謁見の間の前に着くと、意外と人の姿は無く静まりかえっていた。
普段と同じように謁見の間の前には衛兵が二人立っていた。二人の衛兵は憔悴しきっていた。声を掛けると弱々しく扉を開け、謁見の間に通してくれた。
玉座には当然のように誰もいなかった。
そしてその代わりに玉座の前に棺が鎮座している。
国王の表情は意外にも非常に穏やかであった。致命傷となったであろう傷が額に認められる。隣にいたガーネットは人目も憚らず号泣していた。
ガーネットは第二聖騎士の立場で王城を守護する役目の聖騎士であったが、どちらかというと剣技や奇跡の力を行使して先陣をきる、と云うよりも適切に戦況を把握し、その戦況に対応した布陣を敷くことで戦闘に勝利ことを得意としていた聖騎士である。そんなガーネットだからこそ、翼竜の襲撃に遭っても冷静に戦況に応じた人員を配意することで、王都と王城の被害を最小限に食い止めることが出来たのであろう。
それでも彼は一番に守らねばならないものを守れなかった。
その事については現場に一番近い位置にいたからこそ、その想いは強いものがあったのかもしれない。
国王を守れなかった。
その事については銀十字聖騎士団が全ての責を負う事になるであろう。
国王直属の近衛騎士団として役割を果たせなかったのである。
せめて王都の復旧に全力を尽くしたい。その気持ちに偽りはなかった。
謁見の間を辞し、第一聖騎士の棺が安置されている第一聖騎士の執務室を訪れた。
第一聖騎士の執務室は王城内にあり、第一聖騎士となってから国王に随伴し外を出る意外の殆どは執務室から殆ど離れることは無かったらしい。しかしそれは、それだけ第一聖騎士の任務が厳しいことを物語っていた。絶えず自身に自由など無く、国王の身を守り案ずる立場。その立場を長い間、勤めてきたのである。その心労は想像を絶するものがあったが、国王と第一聖騎士の信頼関係はとても堅固であったと聞いていた。恐らく二人の間では言葉も要らなかったのであろう。そのような主従の関係は羨ましく思えた。
棺のなかの第一聖騎士は、とても寂しげな表情をしているように見えた。自身が倒れたことで国王に危害が及ぶのは想像に難くない。きっとその事を案じたまま、倒れたのであろう。
ガーネットは涙を堪え、棺の前で真っ直ぐに起立していた。
その姿から尊敬する第一聖騎士に最後の報告をしているようであった。聞けばガーネットは聖騎士になってからも、たびたび第一聖騎士に剣技の手解きを受けていたのようである。剣技に於いて自信のないガーネットの実直な性格を思い浮かばせる。
きっとガーネットがヴァンクリフの後を引き継ぎ第一聖騎士となるのであろう。
実直な性格の彼であれば、きっとその任務を全うするに相応しい人物だと思った。
ふと、棺の中に納められていたイズガルディアが光った様に感じられた。
イズガルディアはヴァンクリフの胸の前に抱かれていた。イズガルディアに手を伸ばし触れた。
パシッという音が聞こえたような気がする。
『アイヴィス。今の声は聞こえた? これが生前に最後に残したあなたへの伝言よ。こうはしていられないわ。直ぐさまアレウス山脈へ向かいましょう。まだ、戦いは終わっていない。彼等の目的が明らかになった以上、最後の希望は私たちの手で守らないと』
イズガルディアに触れた瞬間、ヴァンクリフの最後の意思が伝わってきた。フィーネもその意思を受け取ったのであろう。ヴァンクリフはアレウス山脈へ向かいギルバートの身を守るように懇願していた。彼が我々の最後の希望であると――
ガーネットとレイバックには、王都に戻った暁には復旧に全力を尽くすことを約束し、王城を足早に去った。
気がつくとエルフィスが傍にいる。
私はエルフィスに跨がりアレウス山脈を目指す。
アレウス山脈に待ち受けているのは、黒衣の集団であることは間違い無い。今度こそ彼等の陰謀を阻止しなければならない。
そして、最後の希望を守り抜いてみせると、ヴァンクリフに誓ったのであった。