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アリス超人気!でも人気過ぎても困るよな。




 ある日の昼。今日は街の中心の方の広場の露店に新しい装備を買いにきている。


「しかしまぁ……すげぇなこりゃ」

「……」


 アリスの後ろにだけ、わあっと人が湧いて来ている。当然、真横に俺がいるので、近付く奴はまだいないが、それも時間の問題だろう。非常に、非常にウザい。アリスがモテるのはこの上なく嬉しいが、それで俺達の暮らしが阻害されるのはな。


「カズマ様」

「ん?」

「あの……この方々……」

「良い加減どうにかしないとな」


 最近。アリスの言葉がよくわかるようになってきた。プレイしてから一週間が経ち、サリアさんが俺達のナビゲーターを外れる時に一つ助言をしてくれたのだが、妖精との信頼度というのは、どれだけ自分の妖精と一緒にいるか。で決まるらしい。妖精は常に一緒にいる。なんてことはなく。アイテム化して主人のアイテムボックスなどに入ったり、勝手に散歩して他の妖精と遊んだりもするらしい。なのでほぼ毎日ずっと、一緒にいる妖精なんて滅多にいない。

 結果として、朝起きてから寝るまでずっっっっと一緒の俺とアリスは、他の奴らより大分信頼度はあるわけだ。更に主人の俺と話が通じるようになれば同じように、他のプレイヤーとも話せるようになるため、自然とアリスは超強い金髪美人プレイヤーみたいな感じの立場になってきており、この街ではついに二つ名まで付いてしまった。


「金色姫!こっち向いてくれ!」

「ちょ、てめーなんかが言ったらこっち向いてくんねーだろ!?金色姫!ちょっとだけでいいから、こっち向いて笑ってくれ!俺らそれだけで頑張れるから!」

「そーそー!」


 「金色姫」これが、アリスに付いた二つ名だ。フィールドで死にそうになっていたプレイヤーや、二人や三人くらいじゃ絶対に倒せないレベルの魔物の群れを殲滅し、その場にいたプレイヤー全員にヒールを掛け、救った。それからポツポツとその名前を聞くようになり、今では街を歩くたびに、どこぞのアイドルみたいに呼ばれる。


「やっぱお前じゃダメじゃねぇか!」

「よーっし。もう俺が行ったる。俺が行って金色姫連れてきてやる!」

「「「おおおおおお!」」」

「よし、行け!そして砕けろ!」

「勇者だ!勇者がいる!」


 うるせぇなぁ。うん。一言言ってやろう。俺が一言言ってダメなら帰ろう。


「おいお前ら!!」

「「「あぁん?」」」

「あ……」


 すっげえええこええええ。殺気すら感じた今!だが負けん!俺は負けんぞ!


「うるせぇっ!!ってんだよ!!アリスはお前達のもんにはならねぇよ!」

「てめぇこそうるせぇんだよ。金色姫に付いてるだけの金魚の糞がよ!」

「そもそもあんた何様だよ!そんなイケメンにアバター作って、そんな可愛い女の子連れているなんてさ!ムカつくんだよ!どうせお前なんて姿形にポイント使いまくって、女の子騙して金とか経験値稼ぐタイプだろ!?」

「うーわっサイッテーだわコイツ!」

「さっ金色姫。こんなやつほっといて俺達とダンジョンとか行こうぜ」


 こいつら言わせておけば……そもそも俺は容姿には全然ポイント使ってねぇし!


「アリス、今日は装備は良いから、帰ろう……か?」

「……」


 鬼がいた。いつも俺に向けてくれる可愛らしい笑顔は消え、冷たい程の無表情になっていた。手は力強く握られ、さっきのやつらの殺気とは比べ物にならない程の怒気を感じる。アリスはその表情のまま後ろに振り返り、叫んだ。


「カズマ様はそんな人じゃありませんッ!」

「へ?」

「なんて?」

「あれっ?怒ってる?」


 後ろのやつらはどうしてアリスに怒られているのかすら、気付いていないようだ。


「貴方方は何を知っていてそんなにカズマ様を傷付けようとするのですか!?そもそも何故私に付きまとうのですか!?何故なのですか!?」

「あ、いや、それは……」

「そりゃあ金色ひ……」

「そもそも!私にはちゃんとアリスって名前があるんです!そんな変な名前で呼ばないで下さい!」

「す、すんません」

「反省します……」


 おお……すげぇ。もうアリス超可愛い。プレゼントでも買おうかな。とか考えていると、アリスが説教タイム終えたようで、俺の方に戻ってきた。


「カズマ様、あの、すいません。勝手にあんな風に怒ったりして……」

「いや、いいよ。嬉しかったし。なんか食いに行こっか」

「はい!」


 いやぁ、やっぱアリスは笑顔が一番だな。




 あれから少ししてまったりと昼飯を食べている中、ビービービー!と唐突に警報がなり出した。


「なんだなんだ?!」

「イベントか!?」

「デスゲームなのにイベントとかあんのかよ!!」

「とにかくわけわからんから皆黙って警報の続きを聞こうぜ!」


『ワイバーンが五体襲来。レベルは推定15~20。脅威なのは空中から放たれる炎弾です。これらのワイバーンの攻撃は破壊不可能イモータル建物オブジェクトをも破壊します。よって街も破壊される可能性があります。すぐに迎え撃ってさい。報酬の説明に移ります。報酬は20万G。倒せなくとも一撃与えた方には2万G。参加者は5000Gです』


「おおおおおおおお報酬やべええええええ!今までギルドの依頼どんなにやっても20万Gなんて中々稼げねぇぞ!つか辛い!」

「いや、そんなことより街がやられるんだぞ!正直どうでもいいが、この街に閉じこもってる、雑魚プレイヤー共もやべぇんじゃねぇか?!」


 とまぁなんかそこの奴らが騒いでいるので、そそくさと俺とアリスはその場を抜け出し、宿に戻った。


「とりあえず一回ヘレナに連絡とろう。そんで、どうするか決めようぜ」


 アリスは首を横に振り、言った。


「その必要はないようです。カズマ様」

「なんで?」


 と、聞いた時、バアンッと扉が開かれ、ヘレナが入ってきた。


「お、ヘレナ。丁度今連絡しようと」

「なに呑気なことしてるんですか!早く最強装備と必要な物だけ持って、逃げますよ!」

「逃げるの!?」

「むしろなんで逃げないんですか!?ワイバーンと言えば竜種の中では低いランクかもしれませんが、竜種ではあるんですよ!?こんな、こんなところで生活している私達なんかじゃ倒せるわけがないじゃないですか!」

「おお、まぁ落ち着け。逃げるとして、どこに行くつもりだ?四階層くらいまでか?」


 いきなり突飛な数字を持ち出されて吃るヘレナ。なんも知らない奴にしては突飛な数字でないかもしれないが、現在攻略組もまだ、四階層までしか行けていないらしいのだ。俺は金をより安全に貯めて、楽に暮らすために、ここの街に留まっているのだが……。


「上に行けばより強い魔物も現れるし、いくまでにワイバーンに襲われない保証もない!そんな中、お前は行く気か!?」

「うっ。だって、それでも––––」


 逃げないと。そうヘレナが言う前にアリスがヘレナの手を握った。


「逃げなくても大丈夫ですよ。ヘレナは、私が守ります。カズマ様だって一緒にいるんです。大丈夫ですよ」

「うぅ……それでも、死んじゃったら!!」

「よしよし。私は負けません。貴女とカズマ様、そしてこの街を守るためにも!」

「ほんとに?」

「ほんとです」

「絶対?」

「絶対です!」


 ヘレナがアリスの言葉で安心したのか、コクンと一回頷き、立ち上がった。


「私、アリスさんを信じます!」

「ええ。信じてください。私が絶対に倒します」

「さぁ!話がまとまったところで。一丁やりますか!」

「「はい!」」


 街の中心の宿の一部屋にて、俺達はワイバーン狩りを決意した。


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