一人の時間(雪弥の場合)
一人の時間がこんなにも長く感じるなんて忘れてた。
「無駄に広いな」
姫の持ち物の一つ、無駄に広い別荘。
-昨日‐
「ここへ行け」
姫が紙と鍵を俺に差し出した。
「今から?」
「当然だ、お前、自分の気持ちに答え出たんだろ」
俺は気づいた、自分の気持ちに、この気持ちがなんなのか、会いたい、声が聞きたい、そばに居たい、単純で難しい、俺はアキラを好きなんだと気づいた。
でも、この気持ちをアキラに伝える事は出来ない。
拒絶されるのが怖い。
「姫」
「お前たちを見てるのは楽しいけど飽きた」
姫は不機嫌な顔で言うと真っ直ぐ俺を見た。
「お前、ちゃんとアキと向き合え、逃げてもいつかは限界が来る、永遠に気持ちを隠し続ける事は出来ない」
永遠に、俺は、書置きを残して姫の別荘へとやって来た。
噂には聞いてた以上に大きな別荘はちゃんと管理され、ほこり一つ落ちていない。
「姫、本当にお嬢様なんだな」
小さな喫茶店の女店主から想像が出来ない、姫は名門財閥、山王寺家の令嬢、家からは出たらしいがたまに家の仕事を手伝ってるらしい。
「姫、何考えてるのかな」
姫の考えは俺にはよくわからない、ただ、今は一人のこの時間が嬉しく感じる。
小学生の頃から子役として芸能界に生きてきた。
それは楽しかったし、辞めたいと思ったことは一度も無かった。
アキラと出会ったのは俺には新鮮な事だった。
俺はアキラと出会い、アキラが初めてだった、俺を一人の友人として見てとれたのは。
いつから、アキラに友人以上の感情を感じて居たのは、離れたくない、そばに居たい、こんなにアキラを好きになったのは。
どんな女の子と付き合っても俺はいつもアキラの事を考えてた、満たされない気持ち、満たされたくて俺は何人もの女の子と付き合ってた。
「馬鹿だよな・・・・絶対に満たされる事は無いのに」
俺はアキラだけで良い他に何も必要としない、この気持ちは大きい、伝える事は出来ない。




