行方不明
「千堂!」
それは突然だった。
「おはようございます」
「挨拶は後だ、会議室まで来い」
騒がしい事務所内、何かあった事は間違い無いだろう。
「沖田さん、何があったんですか?」
会議室には社長までもが居た。
「雪弥が行方不明なんだ」
「雪弥が・・・・何か事件に」
俺は頭の中が真っ白になった。
俺は出来るだけ、普通に振る舞うようにと考えたが、上手く言葉が出ない。
「いや、マンションにこれが」
社長が取り出したのは一枚の紙。
[一人で考えたい事があります、探さないで下さい]
雪弥の字、俺は雪弥の悩みに気付いてやれなかった。
俺は悩んで居る雪弥から逃げ出し、連絡もしなかった。
「姫」
「騒がしいな」
事務所に姫が来ることは年に数度、姫は不機嫌そうにあたりを見回した。
「雪弥は入院、椿総合病院特別室にて、病院の方は極秘にと伝えてる」
姫は大きく溜め息を吐いた。
「ありがとうございます」
「大木社長、兄から伝言、事を早急に解決し事の報告をするようにだそうだ」
「はい」
姫の実家は有名な財閥、姫は基本実家の仕事には興味は無いらしいが、たまに現総帥の兄の代行でたまに顔を見せる。
「姫」
「本当、お前たちは面白いな」
姫はこの大変な時に何故か楽しそうに見えた。
「雪弥の居場所、姫は知ってるのか」
「さぁな」
姫は意味ありげな笑みを浮かべて俺を見た。
「姫、こんなに大変な時に」
「雪弥を見つけてやれ、あいつは今お前が必要なんだ、他の誰でもないお前がな、今度は逃げるなちゃんと向き合ってやれ」
姫はそう言って一枚の紙を俺に渡した。
「姫」
「お前たちをからかうのにも飽きた」
「ありがとう」
俺は紙を握り締め姫にお礼を言うと姫は手を振り帰って行った。
紙には住所と地図が書かれて居た。
「逃げない・・・・もう終わらす」
俺は今まで逃げてた。
この気持ちは隠し続けると決めてた、雪弥のそばに居るために友人で居るために。
でも、限界だと感じて俺は逃げ出した。
雪弥のために、それは言い訳、本当は俺が傷つくのが怖かった。
雪弥に拒否され避けられるのが怖かった。
でも、もう逃げない、拒絶されても、もう、友人で居られ無くなっても、俺はもう逃げない。




