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気持ち(雪弥の場合)

「雪弥くん」

退屈な日々、今の俺は最低最悪な奴だ。

「ここで降して」

「は、はい」

小さな喫茶店、ここへ来るのは久しぶりだ。

「珍しいな、雪弥」

姫は不機嫌な顔で俺の顔を見た。

「久しぶり姫」

「アキは今夜は来ないぞ」

姫は何でもお見通し、俺が今、アキラに会わす顔が無い事も。

「姫は何でもお見通しだな」

「残念ながらそうでも無い」

姫は俺の前に紅茶を差し出しながら俺に言った。

「アキラに会わせる顔なんて今の俺には無い」

会いたくない訳じゃない、会いたいと何度も考えた。

声が聞きたいと何度も思った。

でも、今の俺はアキラに会う事何って出来ない。

「情けないな」

「姫」

情けない、姫の言う通り、今の俺は最低で情けない。

今までの俺は来るモノ拒まず、去るもの追わず、だった。

それで良いと思ってた。

でも、アキラは違った。

そばに居て欲しい、俺を見て欲しい、こんな気持ちは今まで一度も無かった。

「どうしたい?」

姫は真っ直ぐ俺の顔を見た。

たくさんの女優やアイドルに会って来たが姫はどの女性より綺麗で強い眼差しをして居る。

「わからない・・・・こんなの初めてで、どうしたら良いのかわからない」

情けない、本当に情けない。

俺は今の俺が自分では無いように感じる。

「似てるな」

姫は口元に笑みを浮かべて呟いた。

「姫?」

「お前とアキは似たもの同士だ」

この気持ちは言葉に出来ない、伝える方法を俺は知らない。

「姫、俺はどうしたら良いのかな」

俺は姫に尋ねると姫は少し驚いた顔をした。

「アキに会いたいだけ?会ってどうする?」

会いたい、でも、会って俺は、アキラに何を言う。

今、この気持ちは自分でもわからないのに。

「自分の気持ちがわからない、会いたいのに会うのが怖い、今のこの気持ちがなんなのか」

姫は俺の頭を撫でた。

「考えろ、アキに会いたいと思う理由を、答えは簡単で難しい」

姫は答えを教えてはくれない、姫は俺の気持ちの答えを知って居るのだろうか、簡単で難しいこの気持ちの答えを。

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