時間
「お疲れ様でした」
Leiのマネージャーになって一ヶ月、前よりは時間は出来た。
人気俳優の雪弥と比べてLeiはまだまだ新人、仕事の量も少ない。
「千堂さん」
「お疲れ、次、行こうか」
「はい」
今まで休みが欲しいと考えた事はあったが、今は一人にならないように仕事ばかりして居る。
「千堂くん」
「沖田さん、お疲れ様です」
「お疲れ」
三年先輩の沖田さんは俺に仕事を教えてくれた人だ。
「雪弥、最近荒れてるな」
雪弥、もう一ヶ月以上連絡さえしていない。
「・・・・最近、連絡とってないので」
「そうか、今月入って、マネージャー三回変わったらしいぞ」
「三回も」
沖田さんはタバコを口に咥えて俺を見た。
「お前が担当する前に戻った見たいだな」
俺が雪弥のマネージャーになる前の雪弥は問題児だった。
事務所も雪弥には手を焼いてたらしい。
雪弥は人気ある稼ぎ頭、事務所も雪弥のワガママに付き合って居た。
それは今も変わらない。
「そうですか」
「気になるか」
「・・・・友人として、心配です」
友人、今の俺に雪弥のために何が出来る。
今の俺は雪弥の友人と呼べるだろうか。
雪弥に何もしてやれず、俺は雪弥から逃げ出した。
「情けないな」
姫は相変わらず俺に冷たく言う。
「わかってます」
姫の前では怒られる子供の様になる。
「自分でわかってるなら、自分で考えろ」
姫に答えを求めてもダメな事ぐらい自分が一番知って居る。
なのに毎回、俺は姫に相談する。
「姫、雪弥は何を考えてるのかな」
「知らん、人の気持ち何て他人が知る事は出来ない、だから人間は面白い」
姫は何処か楽しそうに見えた。
「長く感じるんだ、今までより、ずっと、時間が長い」
俺は長く感じる時間、雪弥の事を考える。
どんなに考えても雪弥のそばに行く事も、俺には出来ない。
「会いたい、会えないと知りながら、考えてしまう」
俺は姫の言葉に驚いた。
姫は壁に飾られた写真を見つめて居た。
「姫、会いたいのか?」
「さぁな、会いたいと願っても叶わん事もある」
叶わない気持ち、願う間の長い時間、俺はこんなにの悲しく、辛いのだとは知らなかった。




